アルファロメオ スパイダー|どうして人は昔のクルマに惹かれるのか【EDGE TIME TRAVELER】
カテゴリー: クルマ
タグ: アルファ ロメオ / スパイダー / アヴェンタドール / EDGEが効いている / EDGE TIME TRAVELER
2019/03/11
酸いも甘いも噛み分けたオッサンこそ似合うスパイダー
日本では誤解されていることが多いけれどアルファロメオの柱になる商品はセダンである。
当たり前だ。第二次大戦を控えた頃に国の管理下に入って以降、アルファは巨大ながら私企業だったフィアットと争う自動車メーカーだった。
ゆえに陣構えはフルラインナップ。その中で数が出るのはセダンに決まってる。国営みたいなもんだから、そのセダンはパトカーに正式採用されていた。
なのに日本では、地味なセダンは経験を積んだ歴戦のマニアのものだった。156が大ヒットするまでは。
代わりにクーペやスパイダーが日本でアルファのイメージを牽引していた。有名カロッツェリアに委託してデザインされたそれらは華であり稼ぎ頭ではなかった。
そう。華なのだ。
別の言葉でいえば看板娘。
性別でいえば女である。
レースの印象も強いクーペはまだしも、スパイダーは確実にそうだった。
戦後の第1世代ジュリエッタ・スパイダーも、続くデュエットも、その外板を何度も化粧直しされて90年代まで生き残った115系も、94年にFF化された916系も、みなイギリス式のバンカラ系とは全く違って、瀟洒な佇まいの可憐な2座オープンだった。
だからだろう。欧州ではアルファのスパイダーは若い女が乗る小洒落た都会のアシという見立てで扱われることが多かった。
車の見立てに長けたコッポラ監督は『ゴッドファーザー3』でマイケル・コルレオーネの娘をスパイダー・デュエットに乗せている。
そういう位置づけだから男が乗る場合は立派な一人前の社会人にゃあならない。
『地下室のメロディー』で登場するジュリエッタ・スパイダーは、老悪党ジャン・ギャバンに使われるジゴロ風の若者を演じるアラン・ドロンの愛車だった。
『卒業』でダスティン・ホフマンが結婚式場からキャサリン・ロスを攫うときの車が黄色いデュエットだったのは、彼がまだ稼ぎもない半人前で未来の展望なんか一切ないことを暗示していたのだ。
ちなみに現在のカーセンサーEDGEの編集デスクもFFスパイダーに昔乗っていた。実はおれも20代のころ鍍金バンパーのFR世代に乗っていた。「未来の展望なんかないぜ、チンピラで結構」って粋がってた気がする。
その意味では今のところ最後のスパイダーとなるブレラのオープン版は体躯が立派すぎて風情が違ってた。
現行のマツダ ロードスターを着せ替える計画が結ばれたとき、やっと小粋な看板娘が復活するかと思ったら、故マルキオンネ総帥の鶴の一声でフィアット 124になってしまった。
貰い物のマジなスポーツカーじゃあアルファのスパイダーに相応しくないと判断したんだそうだ。正しいなあ。
それはともかくアルファのスパイダーは娘さんか、野郎なら若者がジゴロ気分で拗ねて乗る車である。いや考えてみたら酸いも甘いも噛み分けた渋いオッサンなら似合うかもしれない。
おれもデスクもまだまだ無理。これを読んでる貴男なら大丈夫かもしれません。
※カーセンサーEDGE 2019年3月号(2019年1月26日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています
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