アルファ ロメオ トナーレ プラグインハイブリッド Q4▲2023年1月にトナーレに追加設定されたプラグインハイブリッド Q4

EV走行も高い質感

比較的コンパクトなSUVのトナーレは、アルファ ロメオブランドにとって電動化時代を見据えた重要な主力モデルである。

というのも、鳴り物入りでデビューしたジョルジョプラットフォーム(FR)を使ったDセグモデルのジュリアとステルヴィオは、その高い走行性能と優れたデザイン性にも関わらずセールスは伸び悩んだ。特に日本市場においてはナビシステムが純正採用されなかった(途中から装備された)ことに加えて、SUVのステルヴィオではクイックレシオのハンドルが敬遠されたようだ。その他、ボディサイズや価格設定の問題もあって、ミトやジュリエッタといった決して少なくない最近のコンパクト・アルファのオーナーたちを吸収しきれなかったことも災いした。

トナーレは現実的なモデルだ。ボディサイズはCセグに抑え込まれ、デザインエッセンスはあくまでもアルファ ロメオらしく、そして新たなハイブリッドパワートレインを積み込んだ。当初は48Vのマイルドハイブリッドシステム搭載グレード(MHEV)のみだったが、本命というべきプラグインハイブリッドグレード(PHEV)がようやく上陸したことで、これからが復活の本番。そして本格的な電動ブランドへかじを切り始めた。
 

アルファ ロメオ トナーレ プラグインハイブリッド Q4▲上級グレードのヴェローチェにはクロームのデュアルエグゾーストパイプを装着
アルファ ロメオ トナーレ プラグインハイブリッド Q4▲最高出力180p/最大トルク270N・mの1.3L 直4ターボでフロントを駆動。後輪を駆動する128ps/250N・mのモーターと組み合わせられる

トナーレ プラグインハイブリッド Q4の基本的なメカニズムはグループでプラットフォームを共有するジープ レネゲードと同じだ。フロントに最新1.3L 4気筒ターボ“マルチエア2”エンジンと、主に回生を担う小型モーターを積み、リアアクスルには駆動を担う94kWの高性能モーターを置く。前後のパワートレイン間には当然のことながら物理的なつながりはなく、電子制御によって常に最適な駆動力配分を行っている。バッテリー容量は15.5kWhとPHEVとしては十二分(充電方法は普通充電のみ)。最大で72km(WLTCモード)のEV走行レンジを確保するという。システム総合出力は280psで、このクラスのSUVとしてまずは十分な数字だろう。
 

アルファ ロメオ トナーレ プラグインハイブリッド Q4▲ショルダーラインは往年のジュリアやGT、リアサイドガラスは8Cを想起させるデザインを取り入れるなど、エクステリアは“ヘリテージと先進性が融合した”というデザインを採用している
アルファ ロメオ トナーレ プラグインハイブリッド Q4▲ブランドを象徴するビショーネ(蛇)が電動化したデザイン、「エレクトロ・ビショーネ」が充電口側のリアドアガラスに施されている

口をプラグ形状にデザインした洒落たヘビマーク(エレクトリック・ビショーネ)にイタリア物らしい遊び心とブランドの未来を感じつつ、満を持して乗り込んだ。

見栄えも操作方法も基本的にはMHEVグレードと変わらない。ただしドライブモードのアルファDNAは当然、専用のアプリケーションにリセッティングされている。

D(ダイナミック)レンジではエンジンとモーターを組み合わせた最大のパフォーマンスを楽しむことができ、スロットル応答性は明らかにシャープで、変速もスピーディだ。

N(ノーマル)レンジは効率的なドライブモードで、静かな電動走行に始まり、状況に応じてエンジンをかける。

そしてA(アドバンスドエフィシェンシー)レンジはフル電動モードだ。e-Saveボタンを使えばバッテリー節約モードもしくはバッテリー充電モードのいずれかへつなぐこともできる。

正直にいってMHEVのトナーレには、“スモールワイド4×4”プラットフォームの高いポテンシャルこそ感じることができたものの、そこにアルファ ロメオらしさが演出されているとは思えなかった。

その点、このPHEVではDモードにおける加速フィールが力強く、いかにもアルファ ロメオらしく思わせてくれる。モーターの力がエンジンの駆動に波のように覆いかぶさって沖へ沖へと流していくような前のめりの加速を見せてくれた。最低限この元気良さがあってこそ、ヘリテージを感じさせるスタイリングや鋭いステアリングフィール(と言ってもMHEVより少しだけ穏やか)といったモダンアルファの魅力が生きてくるというものだ。

重量と電子制御のアシが利いているのだろう。街乗り、中でもEV走行の質感の高さにも感心した。なるほど、フル電動で静々と走るアルファ ロメオだって悪くない。エンジン派の筆者ではあるけれど、フル電動化を目指す大好きなブランドに、少しは明るい未来を垣間見た気分になった。
 

アルファ ロメオ トナーレ プラグインハイブリッド Q4▲インテリアのデザインはマイルドハイブリッドモデルと同様となる
アルファ ロメオ トナーレ プラグインハイブリッド Q4▲センターディスプレイには「ハイブリッド」専用ページが追加された
アルファ ロメオ トナーレ プラグインハイブリッド Q4▲ヴェローチェにはブラックのナチュラルレザーシートを標準化、TI(受注生産)はファブリックとなる
アルファ ロメオ トナーレ プラグインハイブリッド Q4▲通常(5名乗車時)のラゲージ容量はマイルドハイブリッドモデルより115L狭い、385Lとなる

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アルファ ロメオ トナーレ× 全国
文/西川淳 写真/Stellantisジャパン

自動車評論家

西川淳

大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。

ライバルとなるメルセデス・ベンツ GLA(現行型)の中古車市場は?

メルセデス・ベンツ GLA

2020年に2代目へと進化したコンパクトSUV。初代よりSUVらしいスタイルで、“街乗り仕様”ながらオフロード性能も高められている。ハイブリッドモデルの設定はなく、2Lディーゼルターボと1.3L 直4ターボをラインナップ。ハイパフォーマンスバージョンのメルセデスAMGモデルも用意した。なお、2023年9月にはマイナーチェンジを実施しエクステリアや装備が変更されている。(写真はマイナーチェンジ前モデル)

2023年10月上旬時点で、中古車市場には120台程度が流通、価格帯は348万~658万円となる。流通物件のほとんどがディーゼルエンジンを搭載したGLA 200dで、ガソリンエンジンのFFモデルであるGLA180は10台弱のみとなる。また、多くの物件にAMGラインパッケージが装着されているのもポイントだ。
 

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メルセデス・ベンツ GLA(現行型)× 全国
文/編集部、写真/メルセデス・ベンツ日本