▲自動車・カーライフに関する調査研究機関「リクルート自動車総研」の膨大な統計データを基に、ユーザーの購買行動や世の傾向を勝手に予想したり解説したりするコラム。今回は新時代「令和」の車選びについて。シェアリングの普及で選び方が変化するか▲自動車・カーライフに関する調査研究機関「リクルート自動車総研」の膨大な統計データを基に、ユーザーの購買行動や世の傾向を勝手に予想したり解説したりするコラム。今回は新時代「令和」の車選びについて。シェアリングの普及で選び方が変化するか

車の所有や利用に関するサービスが大きく進化する

元号が令和に変わったということで、これからの車選びに関する少し大ぶりな未来予想をしてみたい。

その前に、いまいちど平成の車事情についてざっくり振り返ってみよう。

まずハード面では、機械式から電子制御化、自動化への流れが車の隅々まで急ピッチに進んだ30年だったと言えるだろう。

ハイブリッド車の台頭や量産型EVの市販化はもちろん、自動ブレーキをはじめとする先進の安全技術の著しい進化も、車の電子化抜きには実現しなかったことだ。

ダーウィンの進化論ではないが、持続可能性、安心安全などに対する意識の高まりを受けて変革を迫られた市場環境を前に、ハード面ではかつてないスピード感で熾烈な競争と淘汰が起こった。

一方、車を使う側の意識はどうだったかというと、ハード面ほど劇的な変化、進化はなかったと思う。

強いて言えば、車の所有に対する意識の変化くらいなのではないだろうか。

というと「若者の車離れ」という言葉で一くくりにされてしまいがちだが、所有かタクシー、レンタカーくらいしかなかった車利用の選択肢に、カーシェアリングという新しい形態が日本でもサービスとして認知されたことで、ニーズが顕在化したと考えていいだろう。

すでに個人間の車の貸し借りをサポートするサービスがいくつか存在し、トヨタは対象モデルを月々定額で利用できるサブスクリプションサービス「KINTO」を今年から都内限定で先行スタートした。

こうした流れは、令和の時代に起こるであろう車の所有や利用に関するサービスの進化と、ユーザーの車選びに関するパラダイムシフトの序章と考えられる。

特に個人間でのカーシェアに関しては、下のグラフ①にあるとおり、平成生まれの若い世代ほどシェア(貸し借り)に対する抵抗感が少ないようだ。

※2015年~2017年にリクルート自動車総研が行った『中古車購入実態調査』より ※2015年~2017年にリクルート自動車総研が行った『中古車購入実態調査』より

若者は車から離れたいとは思っていない

一方で、若い世代が自分専用の車を持つことに興味がないわけではない(グラフ②)。

※2015年~2017年にリクルート自動車総研が行った『中古車購入実態調査』より ※2015年~2017年にリクルート自動車総研が行った『中古車購入実態調査』より

これらを上記文脈でくみ取ると、今後の車選びの指標として、カーシェアでの稼働率が加わってくる可能性は大いにあるだろう。

なぜなら、他人が乗ってみたいと思えるような車を購入することで、コストでしかなかった愛車が利益(インカムゲイン)を生む資産になるからだ。

利用者側からすれば、安価に車を利用できるだけではなく、一度は乗ってみたかった車種を体験できる、という付加価値にもなる。

これはトヨタの「KINTO」にも通じるユーザーメリットだ。

今のところは個人間での有料カーシェアリングも、サブスクリプションサービスも小規模だ。

しかしこれから数年以内にシェアリングエコノミーや副業の浸透、ワークライフバランスやクオリティオブライフへの意識の高まりを受ける形で、市場環境が変化するだろう。

すると平成時代に起こったハード面での進化同様、サービスや仕組みが競争と淘汰を繰り返し、新しい車との付き合い方が生まれるに違いない。

そんな未来がもし実現したら、低予算で買った個性派モデルが、ひょんなことからカーシェアの稼働率が上がって相場が急騰し、売却したらびっくりするくらいの高値が付いた、なんて夢のような出来事が現実に起こるかもしれない。

そう考えると、古今東西の「一度は乗ってみたかった」車が一堂に会す中古車市場は、発掘しがいのある鉱脈に見えてこないだろうか。

予算100万円で買える稼働率が高そうな個性派モデル3選

1:日産 リーフ(初代)

▲世界初の量産型EVという記念碑的モデル。令和の時代にEVがさらなる進化を遂げれば、「EVのルーツを探る」や「初号機体験」といった形でカーシェアの稼働率が上がるかも ▲世界初の量産型EVという記念碑的モデル。令和の時代にEVがさらなる進化を遂げれば、「EVのルーツを探る」や「初号機体験」といった形でカーシェアの稼働率が上がるかも
 

2:マツダ RX-8(初代)

▲昭和から続くロータリーエンジン史の最終形となる「RENESIS」を搭載。この先、発電機としてロータリーが復活すれば、いっそう「一度は乗ってみたかった」欲に火が付くはず ▲昭和から続くロータリーエンジン史の最終形となる「RENESIS」を搭載。この先、発電機としてロータリーが復活すれば、いっそう「一度は乗ってみたかった」欲に火が付くはず
 

3:シトロエン C4ピカソ(初代)

▲フロントからサンルーフまでガラスエリアが広がる、ド迫力の開放感が魅力のミニバン。2007年5月~2014年3月に生産された初代は、激レアモデルながら予算100万円で狙える ▲フロントからサンルーフまでガラスエリアが広がる、ド迫力の開放感が魅力のミニバン。2007年5月~2014年3月に生産された初代は、激レアモデルながら予算100万円で狙える
 
text/編集部
photo/早川佳郎、日産、マツダ、シトロエン