今回のテーマ

-クーペの魅力とは?-

 世界的にクーペブームが起きている。昨年はM・ベンツCLが、3月のジュネーブショーではアウディA5
BMW M3コンセプトがワールドプレミア(世界初公開)されたばかり。
 翻って日本では、現在生産されているクーペといえば、日産フェアレディZとスカイラインクーペ
その2台にマツダRX-8を加えた、たったの3台だけと、すでに瀕死の状態だ。
 そんな状況にあるクーペ。その魅力とは一体何か?をクーペ好きで知られるライターに聞いてみた

MJ ブロンディ

常識を超えたクーペだけが生き残る
ハンパなクーペに魅力はない


MJ ブロンディさん●自動車評論家
えむじぇい ぶろんでぃ
著書に『貧乏人はフェラーリを買へ!』や『浜崎橋はなぜ渋滞するのか?』
など多彩な執筆活動をしているライター

フェラーリ 599 走行 クーペの魅力って、究極としては人の目でしょ。クーペに乗ることで、自分の愛車を周囲が「オシャレだな」とか「カッコいいな」とか「速そうだな」とか思ってくれて、突き詰めれば、「あの人はああいう車に乗る余裕のある人なんだ」と思ってもらって、羨ましがられるという。
 そんなクーペがなんで日本で不人気かと言えば、そういうふうに見てもらえなくなったから。実際問題、昔はクーペって、誰もが「速い」とか「速そう」って思ったもんだけど、今誰もそんなこと思わないでしょ。セダンだって、ヘタすりゃミニバンだって十分速いし。オシャレやカッコ良さについても、一般人にとっての車は、もはや冷蔵庫と同列と化しているわけで、そんなもので自己表現すること自体、NGになっちまってるからね…。
 だからっていうわけじゃないんだけど、俺は今、ハンパなクーペなんてぜんぜん魅力ないし、欲しくないんだ。周囲が羨ましがってくれないなら、徹底的に自己満足できなきゃ、無理して不便な車乗っても意味ないじゃない。誰もカッコいいって言ってくれなくても、自分だけは見るたびにその美しいフォルムに陶酔できるとか、走れば絶頂的快楽を得られるとか、そういう麻薬的快楽がなきゃダメなんだよ。
フェラーリ 599 エンジン となると、俺が欲しいクーペは、フェラーリのベルリネッタ。最終的にはそれ一本になっちまう。つーか、それ一本しかもってないんだけどさ。それ一本もってたら、もう一台ステキなクーペを…なんて生活のゆとりがあるわけないし。
 国産クーペがほぼ消滅したのは、ハンパなクーペが大部分だったから。現在の厳しい日本市場では、常識を超越した魅力をもつクーペしか生き残れないんだ。