あの名車は今? その後継モデルたちは……20年という時の流れは車をどう変えたのか。SL、ムルシエラゴ、911…
カテゴリー: 特選車
タグ: メルセデス・ベンツ / AMG / BMW / ポルシェ / フェラーリ / ランボルギーニ / セダン / クーペ / オープンカー / F430 / SLクラス / 911 / M5 / ムルシエラゴ / 296GTB / レヴエルト / EDGEが効いている
2025/12/05
▲2025年12月号で創刊20周年を迎えた「カーセンサー EDGE」。20年前の創刊当時に最新だったモデルを現行モデルと対比、それぞれがどのような未来を歩んできたかをひもときます20年という時の流れが、車をどう変えたのか
20年前に“最新モデル”として登場した車たち。あの頃最先端だったデザインも技術も、いま振り返れば時代を映す鏡であり、進化の足跡でもある。カーセンサー EDGE 12月号の特集「Then → Now」では、2000年代半ばにデビューした5台の名車に注目し、それぞれがどのような未来を歩んできたかを、現行モデルとの対比でひもといていきました。
メルセデス・ベンツ SL、ランボルギーニ ムルシエラゴ、ポルシェ 911、BMW M5、そしてフェラーリ F430。ラグジュアリーのあり方、内燃機関の限界と電動化の可能性、スポーツカーの快楽とは何か。今なお第一線で語られるその名に、時代を超えて共通する価値があるのか。それとも、すべては変わってしまったのか。
20年という歳月がもたらした“変化”と“継承”を、1台1台のストーリーから読み解いてみたい。
メルセデス・ベンツ SLクラス(R230型)→ メルセデス・ベンツ SLクラス(R232型)
メルセデス・ベンツ SLのR230型が体現していたのは、贅を尽くした優雅なロードスター像。
時を経て、R232型ではメルセデスAMGの完全主導のもと、ピュアスポーツとしてのDNAが強く打ち出されている。SLの本質は、時代とともに変わっていく。
▲2001年に登場、電動格納式ハードトップ(バリオルーフ)をモデル初採用した。2008年にはマイナーチェンジが行われ、フロントマスクが変更されている
▲2022年にメルセデスAMGが開発を担当したR232型にフルモデルチェンジ。ソフトトップを採用、SLらしいスタイルにAMGらしいスポーティな技術が融合しているかつてSLは、エレガントなGTオープンとして確固たる地位を築いていた。特に2000年代初頭のR230型、SL55 AMGは圧倒的な人気を誇ったモデルだった。500psを超える出力とハードトップの快適さ、その両立が大きな魅力だった。
だがこの大ヒットが、SL本来の方向性を少しずつ狂わせた。いつしか“GTの顔をしたモンスター”が標準になり、ラグジュアリーオープンの存在感が後退していく。
そして現在、SLはAMG専用モデルとして再定義されている。R232は911と真っ向から競合するパフォーマンスを備えるが、それがかつてのSLファンの求めた姿かは定かではない。モデルとしての芯がぶれた今、SLは再び“自分らしさ”を取り戻せるだろうか。
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メルセデスAMG SLクラス(R232型)ランボルギーニ ムルシエラゴ → レヴエルト
ムルシエラゴは“純内燃機最後のランボルギーニ”として今も神格化されている。
そして、レヴエルトはそれを引き継ぎながら電動化という新章へ突入した“最初のV12”。20年の時を超え、猛牛の咆哮は何を変え、何を残したのか。
▲2001年に発表されたV12エンジンをミッドシップに搭載するフラッグシップがムルシエラゴ。ディアブロから引き継いだ特徴も多く、ランボルギーニ最後のアナログV12といえる1台
▲2023年に大成功を収めたアヴェンタドールの後継として登場したレヴエルト。V12エンジン+3モーターのPHEVスーパースポーツだムルシエラゴがデビューしたのは2001年。古典的なV12自然吸気とアナログな味わいを残す最後のランボルギーニだった。12年に及ぶロングライフを経て、アヴェンタドール、そして2024年に登場したレヴエルトへと進化する。
この20年でランボルギーニは激変した。カーボンモノコックの導入、V12の刷新、PHEV化、全輪ステアなど、すべてを現代的にアップデート。レヴエルトはまさに“現代にふさわしいフラッグシップ”だ。だがそれでも、跳ね上げ式のドアをもち、V12を吠えさせるその姿には、ムルシエラゴ譲りの魂が宿る。
20年で車は激変したが、“猛牛の矜持”は決して変わっていない。
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ランボルギーニ レヴエルトポルシェ 911 カレラ(997型)→ 911 カレラ(992.2型)
空冷からの脱却を果たした997型は、911の“正統”を再構築した時代の象徴。
一方で現行型の992.2型は、PHEV化すら視野に入れる現代のハイテク911。だがそこには、“911らしさ”を守るための挑戦が確かにある。
▲2004年に発表された6代目は、丸型ヘッドライトをはじめ911の伝統ともいえるデザインを採用。カレラにはキャリーオーバーとなる3.6L フラット6エンジンが搭載されていた
▲2024年のマイナーチェンジで後期型(992.2型)へと進化した現行モデル。GTSにはTハイブリッドと呼ばれるマイルドハイブリッドが採用されている量産スポーツカーの中で、ここまで揺るぎない哲学を持ち続けたモデルが他にあるだろうか。911が60年以上にわたりリアエンジン+RR+フラット6というレイアウトを守り続けた理由。それは、時代が変わっても「911は911」であるためだ。
水冷2世代目の997型は、現行992型のデザイン的ルーツでもある。前作996型の実験的要素から一転し、ヘリテージと現代性を融合させたスタイリングは、その後の991~992型にも受け継がれた。そして今、GTSハイブリッドには再び3.6L フラット6が搭載されるという偶然も起きた。
997型の黄金比、911らしいプロポーションと質感。それらは992型でも確かに残り、進化し続けている。性能や機構を超えて、“911らしさ”という価値は、世代を超えて息づいているのだ。
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ポルシェ 911(992型)BMW M5(E60型)→ M5(G90型)
E60型 M5のV10は、量産車としての常識を突き破った象徴だった。だがその狂気は、いまやカーボンニュートラルの時代に継承される。
G90型 M5はPHEV化されながらも、Mのスピリットを新たな形で宿す。
▲5世代目5シリーズをベースとした高性能バージョンのM5。F1の技術をフィードバックして開発された5L V10エンジンを搭載する。本国ではツーリングも設定されていたが、日本ではセダンのみが販売された
▲2024年のフルモデルチェンジでPHEVモデルへと進化したM5。4.4L V8ツインターボを搭載、システム最高出力727ps/最大トルク1000N・mに達するV10自然吸気、500ps超。E60型 M5が登場した当時、それは明らかにセダンの枠を超えた1台だった。F1直系のV10を搭載し、セダンでありながら走りはスーパーカーそのもの。ステーションワゴン版も用意され、BMWの技術力を見せつけた。
あれから20年。最新のG90型 M5はV8ツインターボに加えてPHEV化され、出力は700ps超へ。しかもAWDと電動アシストを駆使して“すべての状況下で速い”を実現した。
だが、変わらないのは「サルーンの姿をしたモンスター」という本質。初代から脈々と受け継がれる“日常で乗れるスーパーカー”という哲学は、今も変わらない。変わり続けることで、M5はMの中核であり続けている。
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BMW M5(G90型)フェラーリ F430 → 296GTB
20年前のフェラーリ F430は、F1直系のV8 NAとマニュアルの官能をまとった“最終世代”だった。
対する296GTBは電動化の波を受けたV6ハイブリッド。それでもなお、フェラーリは「ドライビングプレジャー」を手放してはいない。
▲“最後のV8自然吸気×MT”として多くのエンスージアストに愛されるF430。360モデナの正常進化版として2004年に登場、F1由来の技術が多数採用されている
▲半世紀近く続いたフェラーリの2シーターV8ミッドシップモデルの後継となるハイブリッドスポーツ。2.9L V6ターボと1基のモーターを組みわせるフェラーリの2シーターミッドシップは、この20年で劇的な変化を遂げた。F430の時代は、自然吸気V8がもつ官能性と直結感が最大の魅力。それが458、488、F8と続く中で、電動化という選択肢が現実味を帯び、ついに296GTBはV6+PHEVというまったく新しい次元に突入した。
とはいえ、ここで味わえるのは“効率”ではない。“興奮”だ。663psを誇る新設計のV6ターボと165psのモーターを融合し、システム出力は880psにまで達する。しかもエンジン単体でも旧来のV8に肉薄する性能を発揮する。制御技術と空力、そしてドライバビリティを突き詰める姿勢には、F430時代から連綿と続く“マラネッロの哲学”が宿っている。
時代は変われど、フェラーリは常にドライバーの感情に火をつける存在であり続ける。