「きっと、あなたのココロが走り出す。」“Your Heart Will Race.”そんなテーマをもつ東京モーターショー2015の見どころとして各メーカーのコンセプトカーたちは外せない。コンセプトカーは今すぐには手に入らないけれど、今買える車たちだって、その時代時代の人々が考えた素敵な未来を具現化するために生まれてきたのだ。今回は最新のコンセプトカーがもつテーマに通ずる「今、手に入る車たち」をセレクトした。

▲近未来感のあるフォルムが特徴的な「F 015 Luxury in Motion」 ▲近未来感のあるフォルムが特徴的な「F 015 Luxury in Motion」

将来の自動運転を具現化するためのリサーチカー

ラスベガスで開催される世界最大のIT&家電ショーであるCES2015とデトロイトモーターショーで発表されたメルセデス・ベンツの自律走行車「Mercedes-Benz F 015 Luxury in Motion(F 015 ラグジュアリー・イン・モーション)」がいよいよ日本でも、東京モーターショー2015にて公開される。

これはメルセデス・ベンツが将来の自動運転を具現化するための新しいリサーチカーで、今後自動運転車の開発を進めていくうえでのベースになる。サイズは全長5220mm×全幅2018mm×全高1524mmで、一体成型の継ぎ目のないエクステリアとフロントとリアに配置した大きな LED パネルが特徴。この LED には様々な照明機能を適用することができる同時に、LED を通じて車外と相互にコミュニケーションをとるという。

SF映画における「未来の会議室」のような車内には、乗員が向かい合って座れるよう設計された可動式シートシステムが置かれ、回転する 4 つのラウンジチェアを用意。車の乗り降りを容易にするため、ドアを開けるとパワーシートが外に 30 度スイングするとのこと。

一部のジャーナリストを対象に試乗会(ワークショップ)も開催されたそうだが、F 015 ラグジュアリー・イン・モーションは自立走行車であるゆえ、「参加者がハンドルを握る機会がない不思議な試乗会」であったという。

▲向かい合って座れる広々とした車内。「Luxury」という車名にふさわしく、優雅な時を過ごせそうだ ▲向かい合って座れる広々とした車内。「Luxury」という車名にふさわしく、優雅な時を過ごせそうだ

ヴェルファイア/アルファードで「ある意味自動」な運転を目指す?

さて、こういった自律走行車(自動運転車)は実験段階であり、特にここ日本では法整備などの問題で実用化まではまだかなりの時間がかかると思われる。それゆえ「F 015 ラグジュアリー・イン・モーションと似た車(要するに自動運転の車)の中古車を手に入れる」というのは基本的に無理な相談だ。

……が、発想のコペルニクス的転換を図れば、実はやってやれないこともない。

「自動運転」とは何かといえば、要するに人が自分の手や足、あるいは注意力などを一切使わずとも、街中などを安全に事故なく走ってくれる車のことだ。

それをテクノロジーによって実現させようとしているのが今の自動車界なわけだが、実は超高度な技術を駆使しなくても、自動運転すなわち「自分の手や足、あるいは注意力などを一切使わずに、街中などを安全に事故なく走る」ことは可能なのである。

他人に運転してもらえばいいのだ。

自分は後部座席に乗って眠るなりPCや電話で仕事をするなりして、運転は誰かに任せる。それも(ある意味)立派な自動運転である。まあF 015 ラグジュアリー・イン・モーションのような「自律運転」ではないのだけれど。

で、そういった(ある種の)自動運転をするならば、自分が座りなり眠るなりするのはタイトなスポーツカーではなく、フルサイズのミニバンが最適だ。それも現行アルファード/ヴェルファイアのエグゼクティブラウンジだったら言うことはない。

▲言わずと知れた現行トヨタ ヴェルファイア。兄弟車である現行アルファードとともにフルサイズミニバンの世界では圧倒的な人気を誇っている ▲言わずと知れた現行トヨタ ヴェルファイア。兄弟車である現行アルファードとともにフルサイズミニバンの世界では圧倒的な人気を誇っている
▲最上級グレードである「エグゼクティブラウンジ」に備わるエグゼクティブパワーシート。表皮は上質な肌触りのセミアニリン。……旅客機のビジネスクラス以上に快適? ▲最上級グレードである「エグゼクティブラウンジ」に備わるエグゼクティブパワーシート。表皮は上質な肌触りのセミアニリン。……旅客機のビジネスクラス以上に快適?

「エグゼクティブラウンジ」なら言うことなし!

今さら説明するまでもないだろうが、アルファード/ヴェルファイアのエグゼクティブラウンジとは、両モデルの最高級グレード。旅客機ファーストクラスの座席もかくやという超豪華なセカンドシートを採用し、足元には伸縮式のオットマンが。とにかく「2列目の快適性」を最大限追求しているのが、この売れ筋ミニバンの「エグゼクティブラウンジ」である。……その2列目に座り、そして運転は誰か信頼できる人間にやってもらうという「自動運転」は、もしかしたらメルセデス・ベンツのF 015 ラグジュアリー・イン・モーション以上に快適なのかもしれない。

もちろんそういった快適性を確保するためには、そもそも「運転は常に自分以外の誰かにしてもらえる」という環境を作り出さねばならず、それがそもそも難しい。よく知らないが、たぶんかなりの出世が必要だろう。

しかし幸運にもそんな出世ができたあかつきには、もはや自動運転の境地はすぐそこだ。アルファード/ヴェルファイアのエグゼクティブラウンジは新車価格がそもそも700万円オーバーで、それにプラスして各種オプション装備代がかかるなかなかの高級車だが、幸いにして最近は比較的手頃な中古車も出回ってきている。そしてご存じのとおり、そのリセール価格は鬼のように高い。

……ぜひ出世を果たし、F 015 ラグジュアリー・イン・モーションが実用化されるよりも早く「個人的な自動運転」を実現させたいものだ。

text/伊達軍曹
photo/トヨタ、ゆさお、ゆきだるま