▲なんとも独特な形をしているルノー アヴァンタイム。ミニバンのようにも見えるが、左右のドアは1枚ずつしかない ▲なんとも独特な形をしているルノー アヴァンタイム。ミニバンのようにも見えるが、左右のドアは1枚ずつしかない

後にも先にもこんなに奇抜な車はない

ルノー アヴァンタイムはミニバンのようなボディ形状をしながら実は2ドアクーペで、Bピラーを持たないハードトップでもあった。

そして、ボタン操作ひとつで巨大なガラスサンルーフと窓ガラスが一斉開閉できるので“カブリオレ”とも呼べる、とルノーは主張していた。

この車はとにかく奇抜だ。国産フルサイズミニバンの横に並んでも、ドライバーのシートポジション(目線)はアヴァンタイムの方が高いだろう。

ドアは1.4mもの長さがある。ゆえに飛行機のようにボディと並行にちょっと動いたあと、コンパクトに開くようにダブルヒンジが採用されていた。

個人的にはドアの動きだけでもいまだに萌えてしまう。

車名のAvantimeは、フランス語で「先進」を意味する言葉Avantと、英語のTimeとが組み合わせられたという。

つまりは時代を先取りしたということだろう。

ただ、あとにも先にも、これほどブッ飛んだ車を見かける機会はそうそうない。

少なくとも今、「アヴァンタイムに匹敵する車はない」と言えるだろう。

▲巨大なサンルーフが装備されるため、開放感あふれる車内空間となっている ▲巨大なサンルーフが装備されるため、開放感あふれる車内空間となっている
▲ダブルヒンジが採用され、独特な動きをするドアも大きな特徴だ ▲ダブルヒンジが採用され、独特な動きをするドアも大きな特徴だ

日本に導入されたアヴァンタイムが搭載していたエンジンは、最高出力は207psの3L V6。必要十分なパワーではあるが、何の変哲もないものだった。

車両重量が1800kg近くあるために、のっそりとトルクフルに加速し、どっしりとした乗り味は高級感すら漂っていたのだが……。どことなく緩いボディは気になった人もいただろう。

でも、そんなことはどうでもいいのだ。しつこいようだが、こんな変な車は奇跡の産物としか言いようがない。

フロントシートはBピラーがないから、シートベルトはシート一体型。ここにはコストがかかっているらしく、ルノーの広報担当者が「一脚あたり50万円はくだらない」と語っていたことを記憶している。

どんなユーザーがターゲットだったのか、実際にどんなユーザーが購入したのか。本当に気になってしょうがない車だ。

ファミリーカーにしては荷室が乏しく使い勝手が悪い。想像に過ぎないが、「クロスオーバー」が流行っていた時代ゆえに、あえてミニバンをパーソナルカーに仕上げてみたのかもしれない。

▲なんと“一脚50万円”ともいわれた、シートベルト一体型のシート ▲なんと“一脚50万円”ともいわれた、シートベルト一体型のシート

驚くなかれ、新車時価格は500万円で、あともうひと息で当時のトヨタ セルシオに手が届く……という値付けがされていた。

2001年からたった2年しか生産されず、総生産台数は9000台弱、日本に正規輸入されたのはわずか200台強。

いずれアヴァンタイムの価値が見直されるような気がしてならない……。

100万円前後で探せる今、少しでも気になる人は深く考えずに手を出すべき物件と言える。

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▲日本に正規輸入されたのはたった200台ほど。2018年3月9日現在、掲載台数は10台以下。何となく気になるという理由だけでも、狙ってみる価値があるモデルあろう ▲日本に正規輸入されたのはたった200台ほど。2018年3月9日現在、掲載台数は10台以下。何となく気になるという理由だけでも、狙ってみる価値があるモデルあろう

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ルノー アヴァンタイム(初代)
text/古賀貴司(自動車王国)
photo/ルノー