メルセデス・ベンツ W124

【連載:どんなクルマと、どんな時間を。】
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
 

幼い頃の記憶が、今の愛車を引き寄せた

「日本に来たのは偶然なんだ!」

在住6年目となるスタンさんは、大学を卒業し就職を機にフランスから来日した。

なぜ日本を選んだのか? そのワケは、英語圏ではなかったから。在学中、将来は地元のフランスで就職しようと考えず、第一言語が英語ではない、まだ知らない場所へ行きたいと思っていた。

そこで考えついた先がアジア圏。そして、たまたま就職先が日本だった。

「日本にはピカチュウがいることしか知らなかったよ(笑)」

日本に関する知識はそれくらいだったというスタンさんだが、来日早々、日本の自動車文化、とりわけ国産スポーツカーに衝撃を受けた。

そして今日に至るまでの6年間で、国産スポーツカーを中心に計12台もの車に乗り継ぎ、今も走行会に出向きガッツリ走り込んでいるそうだ。

そんなスタンさんが13台目の愛車として選んだのが、今目の前に止まっているメルセデス・ベンツ W124型ミディアムクラス。大好きだという国産スポーツカーとは、ある意味真逆な車だ。
 

メルセデス・ベンツ W124
メルセデス・ベンツ W124

「年を重ねたせいか、大人な落ち着いた車に乗りたくなったんだ」 はにかみながら、スタンさんはそう答えた。 物心ついた頃から、父親はメルセデス・ベンツ A124型EクラスカブリオレやW126型Sクラス、R170型SLKに乗っているのを見てきた。

スタンさんにとって父親は、おしゃれで余裕のある人に映っていたそう。そんなこともあってか「自分がゆったり走れる車を探そう」と思ったとき、目を追ってしまうのはおのずとメルセデス・ベンツ、しかも幼い頃によく目にしていた古めのモデルだったという。

自分が乗るのならセダンタイプが良いとW124が気になり、今年になり探し始めた。

そしてついに、たまたまカーセンサーで“最高に心打たれる1台”を見つけ、お店に行き即決。今年9月の出来事だった。

4ドア、サンルーフ、AMGキットのフル装備。そして前期モデルならではの威圧感あるデザイン。

手に入れた車は探し求めていたものがすべて詰まった、スタンさんにとって特別な1台である。
 

メルセデス・ベンツ W124
メルセデス・ベンツ W124

まだ納車して3ヵ月ほどしかたっていないが、すでに1万km以上は走っているというのだから驚きだ。

W124のトランクは容量が多いことで有名。せっかくだからと実際に開けさせてもらうと、三角板に出迎えられ、のぞき込んでみると畳まれたリクライニングチェアが入っていた。

「これに座ってチルする時間が最高だよ」

趣味はロングドライブ一択。ジブリに出てくるような風景が大好きで、「日本独特の四季を感じられる景色が最高だ!」とスタンさん。
 

メルセデス・ベンツ W124 ▲トランクにいつも積んでいるというチェア

現在はセキュリティエンジニアとして働くのだが、仕事の進め方はある程度自分でスケジューリングできるので、空いた時間を確保できるたびにドライブに出かけている。

音楽はこれまた大好きな1980~90年代のシティポップをチョイスし、ゆったりと左車線を走行しながらW124を堪能する。

目的地に到着したら積んでいたリクライニングチェアを広げ、愛車と景色を眺めながら癒されるのがたまらないそうだ。

「背もたれを深く倒せるから、夜空に瞬く星を眺めることもよくするね」

最高すぎる趣味である。
 

メルセデス・ベンツ W124

最近は長野県松本市まで紅葉を見にロングドライブに出かけたようで、紅葉や銀杏並木を堪能したとのこと。現在住んでいる場所も“THE 都会”ではなく、群馬県にあるとある田舎町。

なぜそんなに日本の情緒あふれる景色が好きなのか伺ったところ、「育ったパリではレンガなどが多く、色が少ない。自国にはない日本独特な四季折々感じられるカラフルさに心を奪われたんだ」と教えてくれた。

今度は冬の景色を堪能したいといろいろ探しているところだそうだ。気になる場所があれば、ふらっと愛車と旅に出る。

スタンさん、実は令和版の“寅さん”なのかもしれない。
 

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メルセデス・ベンツ ミディアムクラス(W124型)×全国
文/瀬イオナ、写真/阿部昌也
メルセデス・ベンツ ミディアムクラス

スタンさんのマイカーレビュー

メルセデス・ベンツ ミディアムクラス(W124型)

●購入価格/約260万円
●マイカーの好きなところ/AMGのボディキットを装着した見た目がカッコイイ!!
●マイカーの愛すべきダメなところ/電装系のトラブルが多い……(古い車だからしょうがない!)
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/雰囲気ある大人なドライブを楽しみたい人

瀬イオナ

自動車ジャーナリスト

瀬イオナ

車メディアの雑誌編集部員を経て、2024年にフリーランスとして独立。「走って書ける」自動車ジャーナリストを目指して修行しながら、若手ジャーナリストとして活動中している。車業界に入ったきっかけは、某動画で中谷明彦師匠を見つけたこと。現在に至るまで「ドライビング」はもちろん「ジャーナリスト」の心得など業界におけるすべてを教わりながら日々鍛錬中である。趣味はドライブ、レーシングカート、サウナ。