※徳大寺有恒氏は2014年11月7日に他界されました。日本の自動車業界へ多大な貢献をされた氏の功績を記録し、その知見を後世に伝えるべく、この記事は、約5年にわたり氏に監修いただいた連載「VINTAGE EDGE」をWEB用に再構成し掲載したものです。

▲1969年から1984年まで製造されたベータに1973年から追加されたクーペモデル。ランチアがフィアット傘下に入って最初のモデルであり、様々なフィアット社の技術が使用されている。前身のフルヴィアから受け継いだ前輪駆動に組み合わせるエンジンはフィアット124も積んでいた直列4気筒ユニット。サスペンションも128と同じ4独立サスペンションが採用されている。設計チームは旧ランチア時代のスタッフで揃えられていた、非常に珍しいポジションの車。 1969年から1984年まで製造されたベータに1973年から追加されたクーペモデル。ランチアがフィアット傘下に入って最初のモデルであり、様々なフィアット社の技術が使用されている。前身のフルヴィアから受け継いだ前輪駆動に組み合わせるエンジンはフィアット124も積んでいた直列4気筒ユニット。サスペンションも128と同じ4独立サスペンションが採用されている。設計チームは旧ランチア時代のスタッフで揃えられていた、非常に珍しいポジションの車。

フィアット傘下に収まって初めて作られたランチア車

徳大寺 ドライブしやすい季節になってきたな。ビンテージカーには優しい季節だよ。
松本 古い車には過ごしやすい季節ですね。さて今回の特集は「絶滅危惧車」です。
徳大寺 なんとか世に残したい車は多いからな。見に行く車はなんだい?
松本 巨匠も大好きなメーカーです。僕も巨匠も乗っていましたよ。
徳大寺 そのメーカーはクラッチが重い?
松本 一部の特殊な車以外は重かった印象はないですね。
徳大寺 分かった! メーカーはランチアだろ! そりゃどのモデルでも最高だよ。クラッチ重いのはテーマの8.32だろ(笑)。あれは本当に乗りたい1台だよ。内装は上品で質も高い。ああいったモデルはランチア以外はサマにならないだろう。ランチアはとにかく上品なんだ。戦前から戦後、そして最近でもないけどランチア デルタ インテグラーレはスポーティで上品で古さも感じない。あれも好きな1台だな。で、どんなモデルを見に行くの?
松本 今日見に行くのはフィアット傘下に入ってランチアが初めて開発したモデルです。
徳大寺 ランチアの経営が困窮してついにフィアットの傘下に入ったのは1969年だと思ったな。ランチアは良いモノを作りすぎて採算が合わなかったんだろうな。開発したモデルは当然売らなくてはならない。でも、ランチアのイメージも崩すことができない。その折衷案として、コストを抑えて開発したのがランチアベータ・ベルリーナだったわけだ。デザインは個性的だったけど、今までのランチアを知る人からすると、もの足りなかったに違いない。
松本 確かにフィアットのコンポーネントを存分に使ってデビューしたモデルはベータ・ベルリーナなんですけど、それはそれで激レアですよね。巨匠が以前に乗られていた「ランチア ガンマ・ベルリーナ」はカッコイイです。さて、今回はランチア ベータ・ベルリーナがデビューしてから1年後に発表されたクーペです。

ランチアらしいデザインと作りの良さ

徳大寺 ほー。それも珍しいな。フィアット傘下になってからはほとんどがフィアット製のパーツで作り上げたモデルだが、開発や味付けは昔からランチアに勤めていたエンジニアやテストドライバーが行っていたんだよ。フィアットの上層部も一目置いていたわけだ。だってランチア社を作ったヴィンツェンツォ・ランチアはもともとはフィアットのテストドライバー兼ワークスレーシングドライバーだったんだから、結びつきは古くからあったんだ。
松本 僕も聞いたことがありますよ。フィアット傘下になってからも、ランチアのエンブレムが取り付けられるモデルにはランチアのテストドライバーが加わっていると。現在ははっきりはわかりませんが、必ずランチア伝統の味付けを行うご意見番がいることを信じています。ところで今回見に行くランチア ベータ・クーペですが、デザインはランチア社のチェントロスティーレなんだそうですね。
徳大寺 ランチアはピニンファリーナやザガートといったカロッツェリアに委ねることもあったし、ストラトスのようにベルトーネ社に頼むこともあったけど、量産モデルは昔から自社のデザインスタジオで作られたんだよ。だからアッピアとかフルビア・クーペやベルリーナといった独自性を持ったスタイリングができたといわれているんだ。
松本 今回も馴染みのお店です。着きました。
徳大寺 おー成瀬さんのところか。ここは落ち着くよな(笑)。
松本 この車両ですね。ちょっとイタリアの国旗をもじったデカールがカフェレーサー風でいいじゃないですか。ドアを開けると分かりますが、フィアットと同じパーツを使っていても精度が違うっていうか、作りが全然違うんですよね。ランチアって凄いなと思います。
徳大寺 エンジンもわざと寝かせてエンジンフードを低くしてるんだよ。それもキャビンの方向に寝かせてるだろう。これは操縦性を意識したことだと思うよ。ランチアというのはエンジニアリングにも細かくこだわるメーカーなんだ。内装は革だけど年季が入っているな。現在の革のシートよりも素材としたらうんといいんだ。傘下に入ったモデルとはいえランチアの精神は強く表れているね。だからこそランチアストラトス、ラリー037、デルタインテグラーレとラリー界では前人未到の強さを見せつけることができたんだと思うよ。

’78 LANCIA BETA COUPE 運転席回り
’78 LANCIA BETA COUPE シート
’78 LANCIA BETA COUPE エンジン
’78 LANCIA BETA COUPE ステアリング
’78 LANCIA BETA COUPE リア

【SPECIFICATIONS】
■全長×全幅×全高:3865×1420×1422(mm)
■車両重量:820kg
■ホイールベース:2180mm
■エンジン:直列4気筒OHV
■総排気量:1750cc
■最高出力:83ps

【コレツィオーネ】
■所在地::東京都世田谷区等々力7-2-32
■営業時間:10時~20時
■定休日:火曜日
■tel:03-5758-7007

text/松本英雄
photo/岡村昌宏


※カーセンサーEDGE 2014年12月号(2014年10月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています