マツダ ロードスター

【連載:どんなクルマと、どんな時間を。】
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
 

ロードスターから広がった、カーライフの彩り

マツダが誰でも気軽にモータースポーツを楽しめるようにと全国で定期開催されている『MAZDA SPIRIT RACING GYMKHANA EXPERIENCE』。筑波サーキットのジムカーナコースに我々が取材でお邪魔した際に目にとまったのが、今回紹介する小林美江さんだ。
 

マツダ ロードスター

小林さんの愛車はマツダ ロードスター。「モータースポーツに参戦するなら競技用のベース車両であるNR-Aがベストなんですが、買ったときはまだジムカーナを始めるなんて思ってもいなかったからRSにしちゃったんですよ」と笑う。

ロードスターを手に入れたのは2017年。2015年式のRSで走行距離1万4000kmほどの中古車を見つけ、店頭で一目惚れしたという。
 

マツダ ロードスター

もともとバイクが好きでホンダのCBR400Rに乗っていた。車は通勤などで使うもので、親から譲り受けたものを足代わりにしていたという。だが環境の変化でバイクを降りることになった際、だったら車で走りを楽しもうとAT限定を解除、MTのスポーツカーを探すことにした。

最初はトヨタ 86やスバル BRZなどのクーペを見ていたが、なんとなくロードスターにも試乗してみた。元バイク乗りの小林さんにとってオープンカーに興味を持ったのは自然なことだったはずだ。

「バイクから車に乗り替えるから、いざとなったら4人でも乗れるクーペにしようと思ったんですけれどね。生まれて初めてオープンカーを運転して、『ああ、やっぱり風が気持ちいいなあ』と思って、試乗から戻って、気づいたら契約書にハンコを押していました(笑)。ロードスターは排気量が1.5Lで自動車税が(86やBRZより)安いのも選んだ理由のひとつです」
 

マツダ ロードスター

ロードスターが手元にやってきてから、小林さんは通勤やドライブ旅行などで毎日運転を楽しんでいる。購入時に約1万4000kmだった走行距離は、8年間で26万8000kmを超えた。単純計算で年間3万km以上走っていることになる。

「通勤で往復80kmくらい乗るから、それだけで月に2000kmくらいいっちゃうんです。で、仕事帰りにちょっと寄り道して走りにいったりしているから。あとはこの車で北海道一周したり、広島まで走ったりしていたら、気づいたらこんなに距離が延びちゃいました」
 

マツダ ロードスター▲北海道一周旅の際に購入したというメロン熊。それ以降、ロードスターの乗員になったとか

そんな小林さんがモータースポーツと出会ったのは、知人との会話がきっかけだった。

「筑波山の方にドライブにいった際に『運転が上手い人がうらやましい』と話したら、知人が『こういうイベントがあるからいってみたら? 運転の練習にもなる』と教えてくれました。それが初心者向けのジムカーナだったんです」

イベントを紹介されたのが2019年。言われるがままに参加してみたら思いの外面白かったので、何度かイベントに足を運んでみた。その後小林さんは結婚し、ご主人の仕事の都合で山形県に引っ越すことに。

「山形でもたまにジムカーナをやっていました。ある日、参加していた人から定常円旋回(スピン手前の状態を維持しながら後輪を滑らせ、同じ場所でぐるぐる回転するテクニック)を教わったら、意外とできたんです。そのときに『自分の車でこんなことができちゃった。車って面白い!』と思ったんです」

これを機に小林さんはジムカーナの世界にどっぷりハマっていくが、イベントなどには1人で参加している。ご主人も一緒にやらないの? と聞くと、ご主人はジムカーナではなくサーキット走行会などに足を運んでいるという。カテゴリーは違うが2人ともモータースポーツ好き。共通の趣味があるから普段の生活も楽しいはずだ。

「モータースポーツの面白いところは、練習して実力がついてくるとそれがタイムに表れること。いいタイムが出たらうれしくて、次はもう少し勝負してみようって思えるんですよね。それを繰り返すのが本当に楽しいです」
 

マツダ ロードスター

小林さんにとってロードスターが特別な存在であるもう一つの理由。それはご主人との出会いを演出してくれた車だからだ。

「当時、主人はNA(初代ロードスター)に乗っていて、私がドライブ先で休憩していたら『ND、どうですか?』って話しかけてくれたんです。そこでいろいろ話しているうちに仲良くなって、気づけば結婚していました(笑)」

ご主人は当時乗っていたNAロードスターを実家に預け、現在はなんとNDロードスターに乗っているという。自宅駐車場に同じ車が2台並んでいる光景を近所の人はどう見ているのだろう。

「引っ越した当初は『同じ車を色違いで持つなんて、車が好きなんですねえ』と言われたりしました。どっちか1台にすればいいじゃんって言われることもありますが、主人はグリップ走行で私はジムカーナでお尻をすべらせながら走るので目的が違うから、どちらか1台にするのも違うんですよね」

2人とも走るのが好きでだから、ドライブも2台のロードスターで出かけることも珍しくない。ただ、ご主人は長く運転すると眠くなってしまうので、長距離ドライブは小林さんの車で出かけるそうだ。

これまで多くの距離をともに過ごし、モータースポーツを楽しんでいることもあって、小林さんもこの車にいつ何が起きてもおかしくはないだろうと腹をくくっている。でも今のところは絶好調! もしトラブルが発生したらその部分をきちんと直してこれからも乗り続けるつもりだ。自分らしさを存分に引き出してくれるオーナーと出会えて、このロードスターも幸せな思いでいるに違いない。
 

マツダ ロードスター

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マツダ ロードスター(現行型)×全国
文/高橋満、写真/篠原晃一
ホンダ NSX(初代)

小林美江さんのマイカーレビュー

マツダ ロードスター(現行型)

●購入金額/275万円
●マイカーの好きなところ/運転が楽しいところ
●マイカーの愛すべきダメなところ/荷物が載らない
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/ドライブ好きや長距離旅に行きたい人

高橋満(たかはしみつる)

自動車ライター

高橋満(BRIDGE MAN)

求人誌編集部、カーセンサー編集部を経てエディター/ライターとして1999年に独立。独立後は自動車の他、音楽、アウトドアなどをテーマに執筆。得意としているのは人物インタビュー。著名人から一般の方まで、心の中に深く潜り込んでその人自身も気づいていなかった本音を引き出すことを心がけている。愛車はフィアット500C by DIESELとスズキ ジムニー