ここ1週間の車ニュースは、来週から始まるジュネーブモータショーに出展される新型車やコンセプトカーの話題一色。それはまた別の機会にお届けすることとして、まるで紅白歌合戦の裏番組のように、それ以外のニーズをつかみたい今週のニュースを斜め読み。さっそく、いってみましょう。

マーケット

■2019年、ヤマハブランドの四輪が走る(ロイター発|2月27日)

『二輪車メーカーのヤマハ発動機は2月27日、2019年にも欧州で四輪車を発売する方針だ。関係筋によると、まずは小型車需要や環境意識の高い欧州に投入。専用工場を建設して生産する』

ヤマハは野心的だ。四輪車市場、しかも強豪ひしめく欧州への投入。成功への道は険しいかもしれない。しかし「ヤマハなら、やれるのでは」という期待感もある。理由は二輪の世界でヤマハが好調だから。

成功例を挙げると、WR250R/Xというスポーツモデルがある。ライバルモデルが生産拠点を海外に移して低価格路線を狙ったのに対し、このモデルは国産として高品質路線を貫いている。結果、250ccにして税込価格は70万円を超えているが、アクセルワークに直結したかのようなエンジンレスポンス、端正なディテールなどクオリティへの評価は高く、非常に人気を集めた。2014年度上期における軽二輪車(126cc~250cc)の新車販売台数全体を見てもヤマハだけが増加。縮小しているジャンルといわれる中にあっても、2013年同期に比べて45.7%増なのだ。

話を戻そう。欧州は小型四輪車に対して要求が高いが、ヤマハなら「性能」と「品質」の両刀で斬り込んでいけるのではないか。もちろん彼の地で成功して、ゆくゆくは国内でも販売してもらいたいという期待もある。

▲2013年の東京モーターショーでお披露目されたヤマハのコンセプトカー、MOTIV(モチィフ)。スペースフレームをもち、ガソリンエンジンやEVなど、パワーユニットを選ばない設計がアピールされていた ▲2013年の東京モーターショーでお披露目されたヤマハのコンセプトカー、MOTIV(モチィフ)。スペースフレームをもち、ガソリンエンジンやEVなど、パワーユニットを選ばない設計がアピールされていた

サービス

■車趣味の英才教育始まる(オートバックスセブン発|2月26日)

『キッザニア東京(東京都江東区豊洲) に出展している、自動車整備士の仕事を体験できるパビリオン「カーライフサポートセンター」を、2015 年3月3日(火)にリニューアルオープンした』

子供のための職業・社会体験施設のキッザニア。オートバックスセブンは次世代の車好きの育成や、「大きくなったら自分で車を運転してみたい!」「自分で車を修理してみたい!」と子供たちに夢をもってもらうことを目指して出展している。

三菱 eKカスタムを利用して自動車の点検や整備を体験できるのだが、リニューアルによって設備を一新。保護者もより近くで、その様子を見られるようになる。近い将来、エンジンを自分で載せ替えるスーパー小学生が現れるかどうかはともかく、未来のエンジニアやエンスージアストを生み出す、こういった取り組みはどんどんやっていただきたい。

▲休日にパパの車の空気圧をチェックしておいてとは言えないものの、空気圧を整える大切さに興味をもつようになるだけでも、これを体験するメリットは大きいかも ▲休日にパパの車の空気圧をチェックしておいてとは言えないものの、空気圧を整える大切さに興味をもつようになるだけでも、これを体験するメリットは大きいかも

ショー・イベント

■“役者の違い”を見せたジュークのデザインコンテスト(日産自動車発|2月25日)

『ジュークのデザインコンテスト「JUKE by YOU」の最優秀作品が決定した。また、同日に六本木「umu」で実施された表彰式において、同デザインをラッピング加工したジュークを公開した』

“キャンバス”としてジュークは魅力いっぱいだったのか、その応募総数は1万3000点以上。最優秀賞に選ばれた、京都府在住・杉本さんの作品は和テイスト。歌舞伎役者に見立てた隈取りで、オリジナリティの高いモデルに仕上がっている。専用サイトでは応募作品が見られ、作風のバリエーションの多いや、クオリティの高さに思わず感心させられる。

中には、アマチュアの域を超えているというものもあった。一般にもラッピング加工の人気は高まっているので、こういう機会に触れ愛車にオリジナルラッピングをしたくなるドライバーは増えても不思議はない。ミュージアムで作品を眺めるように、車道を走る車を楽しむ日が来るのかも。

▲これが最優秀作品。フロントマスクの特徴を生かすことで、まるで歌舞伎役者のように見える。お見事! ▲これが最優秀作品。フロントマスクの特徴を生かすことで、まるで歌舞伎役者のように見える。お見事!

サービス

■東京都内でパーソナルモビリティ・シェアリングサービスを実証実験 (トヨタ自動車発|2月25日)

『パーク24とトヨタは、パーク24が展開する24時間いつでも必要な時間だけ車が利用できる「タイムズカープラス」と、トヨタが豊田市で実証運用する都市交通システム「Ha:mo(ハーモ)」のシステム及びパーソナルモビリティ「TOYOTA i-ROAD」を組み合わせたシェアリングサービス「Times Car PLUS TOYOTA i-ROAD Drive」を、東京都心部を中心に期間限定で始める。2015年4月10日から当面9月末までの約6ヵ月間にわたり、実施される』

TOYOTA i-ROADは車とバイクの良さを併せもつスタイリッシュな三輪車。コンパクトでスイスイ走れ、クローズドボディだから雨に濡れることもない。こういうマシンなら利用してみたくなるもの。しかも、東京・有楽町で借りて、スカイツリーで返すといったワンウェイでの利用もできる(ただし、貸し出し場所はタイムズステーション有楽町イトシアのみ)。

スカイツリーで絶景を楽しみながらビールを飲んで、帰りは公共機関を使うといった楽しみ方もサポートしてくれる。サービス開始はちょうど桜のシーズン。難点といえば、TOYOTA i-ROADはひとり乗り。複数台数を仲間で借りてツーリング気分を味わうのもいいかも。

▲バイクのようにコーナーで、内側に車体が傾くことで安定が増す。単なる移動手段ではなく、ドライブそのものも楽しいはず ▲バイクのようにコーナーで、内側に車体が傾くことで安定が増す。単なる移動手段ではなく、ドライブそのものも楽しいはず

まとめ

一度ポジションを築いてしまうと、そこから踏み出すのは容易なことではない。ヤマハのような企業が新たなジャンルに挑むことによって勇気づけられる方も多いのでは。筆者もそのひとりだ。もちろんトヨタ自動車との協業というバックボーンがこれまでもあったにせよ、自分の名前で打って出るには相応の決意があったはず。そういう決意は応援したいですよね。

text/ブンタ photo/ヤマハ、オートバックス、日産自動車、トヨタ自動車