メルセデス・ベンツ Vクラス(現行型)▲3代目Vクラスはトランスポーターとしての優秀さを保ちながら、メルセデス・ベンツらしい仕立てのミニバンへと進化した。走りの良さも自慢だ

ベンツの高級ミニバンも中古ならオトクに買える

かつてはビジネスバンのイメージが強かったメルセデス・ベンツ Vクラス。

しかし、3代目で大きくイメージチェンジし、使い勝手の良さを拡張しながら、オシャレに乗れる高級ミニバンへと進化した。

欧州製の輸入ミニバンは走行性能やデザイン重視で、使い勝手がいまひとつ、高級感もちょっと足りない……と感じていた人たちにとって、救いの神的な存在となっている。

ただ、新車価格は約850万円~とさすがに高い……。しかし、中古車でなら総額300万円から物件があり、走行距離5万km程度の物件でも総額400万円から狙える。

国産高級ミニバンとも十分に張り合える価格帯だ。輸入車好きはもちろん、国産ミニバンの新車購入を考えていた人も、Vクラスを新たな選択肢として検討してみてははいかがだろうか?

この記事では3代目Vクラスの概要を紹介しつつ、オススメの中古車を考察していく。

“Vクラス(現行型)” ▲リアガラスを単独で開閉できるなどミニバンとしての使い勝手も優秀

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【ボディサイズ・デザイン】多彩なシートアレンジを実現

Vクラスには、標準、ロング、エクストラロングと3タイプのバリエーションがある。それぞれのボディサイズは下記のとおりだ。※()内はグレード名。

・標準(V220 d、V220 dトレンド):全長:4905mm × 全幅:1930mm × 全高:1880mm
・ロング(V220 d アバンギャルド ロング):全長:5150mm × 全幅:1930mm × 全高:1880mm
・エクストラロング(V220 d アバンギャルド エクストラロング):全長:5380mm × 全幅:1930mm × 全高:1880mm

ホイールベースは標準、ロングが共通の3200mm、エクストラロングのみ3430mmとなっている。つまり、ロングは標準のリアオーバーハングを延長した仕様ということだ。

国産ラージクラスミニバンのトヨタ アルファードとVクラスの標準ボディを比べると、全長は40~45mm短いが、全幅が80mmも広い。

そのため、狭い道での取り回しには多少苦労するかも……。ただ、最小回転半径は標準、ロングとも5.6mとアルファードと同等なので、慣れれば問題なさそうだ。

リアガラス含めてグラスエリアが大きいため、車両感覚はつかみやすい。

“Vクラス(現行型)” ▲前期型Vクラスのデザイン
“Vクラス(現行型)” ▲2019年10月以降の後期型Vクラスのデザイン

デザインでは2代目に比べてヘッドライトが切れ長になり、ボディサイドのキャラクターラインにも躍動感が生まれた。メルセデス・ベンツのセダンやSUVに通じる、スポーティで気品あるデザインだ。

なお、前期型ではフロントバンパー内のエアインテークが3ヵ所となっているが、2019年10月以降の後期型では1ヵ所に集約され、大型化されている(「スポーツ」など一部グレードを除く)。

乗車定員は全モデルとも2列目キャプテンシートした7名。2列目、3列目シートは取り外し可能で、対面配置にしたり、リアキャビンをすべて積載スペースにしたりできる。

“Vクラス(現行型)” ▲2列目シートの快適さ、シートアレンジの多彩さは特筆ものだ
 

【エンジン・グレード展開】後期型は上級グレードのみに

Vクラスに搭載されるエンジンは日本専用に開発された2.2L 直4ブルーテック・ディーゼルターボのみ。可変ターボチャージャーの採用などにより、最高出力120kW、最大トルク380N・mを実現するパワーユニットだ。

これに7速ATが組み合わされ、全く不足ない動力性能を得ている。2022年2月にはマイナーチェンジが実施され、エンジンが改良されるとともにATが9速化された。

なお、ガソリンエンジンが搭載されたのは限定車のみで、2018年10月と2019年10月の2回、2L 直4ガソリンターボモデルの「V260」が販売されている。

ちなみに、Vクラスの駆動系レイアウトは、今どきのミニバンでは珍しくなったFR。(前置きエンジン・後輪駆動)

同じボディサイズ内で居住空間を広く確保するためにはFFレイアウトの方が有利だが、ミニバンであってもハンドリングを重視してFRレイアウトを選ぶあたりはいかにもメルセデス・ベンツらしい。前後重量バランスにおいてもFRはやはり有利だ。

“Vクラス(現行型)” ▲ディーゼルエンジンはトルク重視の設定。状況に応じてエンジン出力を変更できる「アジリティセレクト」も設定される

グレード展開は以下のとおり。

・「V220 d」: 標準グレード
・「V220 d トレンド」:装備内容を厳選し低価格を実現した受注生産モデル
・「V220 d アバンギャルド」:両側電動スライドドアなどを標準装備する上位グレード。標準、ロング、エクストラロングの3種類
・「V220 d スポーツ」:「アバンギャルド」をベースに、AMGデザインのエクステリア&インテリアパーツなどを装備。標準とロングの2種類
・「V220 d マルコポーロ ホライゾン」:ポップアップルーフやフルフラット機能付きベンチシート、回転式シートなどを装備したアウトドア仕様。

前期型ではリーズナブルな価格のグレードが存在したが、後期型で廃止され、「アバンギャルド」が標準となった。

“Vクラス(現行型)” ▲天井上にポップアップテントが付いた「マルコポーロ ホライゾン」の仕様は、かつてのマツダ ボンゴフレンディを思い出させる

上記のグレードに加えて、2022年2月にナッパレザーシートを備えた最上級グレード「V220 d エクスクルーシブ ロング プラチナスイート」、2022年7月に「V220 d アバンギャルド エクストラロング ブラックスイート」が追加されている。

 

【機能・安全装備】先進安全機能はオプション

“Vクラス(現行型)” ▲インテリアも商用車の雰囲気から脱却し、未来的で美しいデザインとなっている

前席左右独立調整式エアコン(「トレンド」を除く全車に標準装備)、タッチパッド式「COMANDシステム」といった基本的な装備は揃っているが、同社製高級セダンの上位車種に比べると装備内容は簡素。

標準、ロングとエクストラロングはホイールベースが異なるだけでなく、装備内容も大きく違っており、後者は実質的な上位グレードと考えてよいだろう。

衝突被害軽減ブレーキなどの先進安全装備「レーダーセーフティパッケージ」についても3代目Vクラスデビュー当初からオプション設定されていたものの、全車に標準装備されたのは2020年7月になってからだ。

 

【オススメの中古車】前期の「V220 d(標準)」が特にオトクな価格に

Vクラス(現行型) ▲前期型のシンプルな造形も悪くない。むしろ実用性重視のVクラスらしいイメージだ

3代目Vクラスの中古車市場流通量は170台前後。デビュー当初の年式が多いのは当然だが、2019年10月以降の後期型も安定的に流通している。

Vクラスをとにかく安く手に入れたいなら、前期型の「V220 d(標準)」もしくは「V220 d アバンギャルド(標準・ロング)」が狙い目。走行距離を問わないなら総額300万円台から、走行距離5万km未満に絞ると総額400万円台前半から狙える。

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メルセデス・ベンツ Vクラス(現行・前期型) × 「V220 d」「V220 d アバンギャルド」

Vクラスは元来が商用車であり、頑丈な構造なだけに適切にメンテナンスされてきた物件なら多少走行距離が進んでいても問題ないだろう。

このグレードではファブリック表皮のシートが標準となるが、Vクラスらしい上質さは十分に感じられる。ちなみに、前期型の最廉価グレードだった「トレンド」は今のところ流通していない。

アウトドアでがんがん使いたい人なら、「マルコポーロ ホライゾン」に狙いを定めるのも面白い。

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メルセデス・ベンツ Vクラス(現行型) × 「マルコポーロ ホライゾン」

かなりユニークな仕様だが、現在の中古車市場にも20台ほど流通している。価格帯は総額820万~1220万円。

ちなみに、2020年5月以降のモデルではサイドオーニングが追加されるなど装備内容が異なっている。

選択肢は少ないが、他のモデルでは代替できないバリューをもつグレード。気になっている人は積極的に狙ってみてほしい。

現行型と同じ安全性能、外観のモデルが欲しい人は後期型のレーダーセーフティパッケージ装着車、あるいは2020年7月以降のものを探すのがオススメ。後期型であっても、マイナーチェンジからしばらくは先進安全装備が標準ではなかったからだ。

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メルセデス・ベンツ Vクラス(現行型) × 2020年7月~

総額760万円~の予算で、走行距離1万km未満の新車に限りなく近い「V220 d アバンギャルド ロング」も狙える。

新車価格が875万円であることを考えると、かなりリーズナブルだ。

同じメルセデス・ベンツのモデルでもセダンなどに比べて選択肢の少ないVクラス。新車の販売台数も多くはないため、流通台数が激増する可能性は低い。

気になる物件があれば早めに問い合わせすることをオススメしたい。

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メルセデス・ベンツ Vクラス(現行型) × 全国

※記事内の情報は2023年1月15日時点のものです。
 

文/田端邦彦 写真/メルセデス・ベンツ
田端邦彦(たばたくにひこ)

自動車ライター

田端邦彦

自動車専門誌で編集長を経験後、住宅、コミュニティ、ライフスタイル、サイエンスなど様々なジャンルでライターとして活動。車が大好きだけどメカオタクにあらず。車と生活の楽しいカンケーを日々探求している。プライベートでは公園で、オフィスで、自宅でキャンプしちゃうプロジェクトの運営にも参加。