Photo:稲葉 真

【連載:どんなクルマと、どんな時間を。】
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?

車がキャンバスに! 世界に1台の“重戦車ベンツ”

沖縄の道路で、道行く人々の視線を集める車がある。カメラマン 垂見健吾さんの愛車、通称“重戦車ベンツ”だ。

ご覧の通り、ボディにはデカデカとイラストが描かれているが、特別仕様車や限定車というわけではない。自らカスタムしたオリジナル。世界に1台の恐竜仕様車だ。

「2年前、下田昌克というアーティストに沖縄で個展を開いてもらったんです。彼は後輩でね。恐竜をモチーフにしたおもしろい作品を作るんですが、その期間中にふと思いついて“俺の車にも描いてくれ!”ってお願いしたんですよ」

驚いた。下田昌克さんといえば、2018年のパリコレで、コム・デ・ギャルソン・オムプリュスのモデルたちがまとった“恐竜のスカル”を手がけ、一躍有名になったアーティストである。

メルセデス・ベンツ Eクラスワゴン ▲ペイントした際の写真もいただいた。写っているのが下田氏

完全なる“思い付き”だった。しかし、かの有名なアーティスト下田氏はその話に乗り、個展会場には垂見さんのメルセデス・ベンツ Eクラスが運び込まれた。

画材は、垂見さんが買ってきた「車用塗料」。一般的にこすり傷などを隠すための品である。

下田氏は、ライブビューイングなどと銘打つわけでもなく、会の合間を見て作画を進めた。そして、3~4日ほどで「ヴェロキラプトル」「ティラノサウルス」「ステゴサウルス」が産み落とされた。

……繰り返すが、かねてから構想があったわけではない。一般的な塗料で、下絵などなく、氏の一発描きで完成したアートだ。

メルセデス・ベンツ Eクラスワゴン▲黒いボディに白い塗料で描かれた恐竜
メルセデス・ベンツ Eクラスワゴン▲近くで見ると、その表情や表皮に釘付けになる
メルセデス・ベンツ Eクラスワゴン▲恐竜以外のモチーフもちりばめてあった
メルセデス・ベンツ Eクラスワゴン▲車の劣化ヵ所すらアートに。ここはもともとエンブレムが付いていて折れてしまった部分なのだ
メルセデス・ベンツ Eクラスワゴン▲下田氏のサインが

これまでも、これからもこのEクラスと共に

垂見さんが、ここ沖縄に移り住んだのは30年以上前のこと。

その明るく大らかな人柄が、うちなんちゅ(沖縄県民)と相性抜群だったのだろうか。今では多くの仲間に囲まれ“タルケンおじぃ”の愛称でみんなから愛されている。

カメラマンの仕事は全国から依頼がくるため、東京にも事務所を構えているが、住居を沖縄から移すつもりはないそうだ。仕事の際は、沖縄から全国へ飛び回る。

メルセデス・ベンツ Eクラスワゴン

このEクラスベンツは、沖縄での愛車3台目にあたり、もう20年近く愛用しているという。

愛車遍歴は割愛するが、移住する前はサーキットに通っていた時期もあり、「レーサーになりたい!」とも考えた、俗にいう“車好き”だ。

「もともと、おじぃ(自分)よりも丈夫に長持ちするように、と選んだ車なんです。実際によく走ってくれてますから“重戦車ベンツ”って呼んでます。それにこの恐竜ペインティングでしょ。最強やっさぁ~」

重戦車ベンツは、これからもタルケンおじぃのうちなーライフを楽しく頼もしく支えていくのだろう。

文/井上恵利、写真/稲葉 真

メルセデス・ベンツ Eクラスワゴン

垂見健吾さんのマイカーレビュー

メルセデス・ベンツ Eクラスワゴン(初代)

●購入金額/約370万円
●年間走行距離/約5000㎞
●購入する際に比較した車/特になし
●マイカーの好きなところ/すごく頑丈なところ
●マイカーの愛すべきダメなところ/修理にお金がかかるところ
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/(ボディをオリジナルでペイントすることは)個性的なものが欲しい人にオススメしたい

井上恵利

インタビュアー

井上恵利

カーセンサー編集部員。メカ的なことにはめっぽう弱いザ・文系女子。「自動車メディアには珍しい20代女子!」とちやほやされ調子に乗っていたら、いつの間にかアラサー独女となってしまいキャラ設定に迷走している。人生初のマイカーは8万円で買ったホンダ モビリオスパイク