フィアット パンダ(初代)の電気自動車“でんきパンダ”で東京・新潟を往復してみた
2018/06/28
電欠の恐怖に怯えながら、普段の2倍近い時間で新潟へ
ぴえいる:ちょっとは空力を考えろよ! ジウジアーロ!!
52歳のおっさんがカーデザインの巨匠に悪態をついていたのは、GW直前のよく晴れた、土曜日の関越自動車道の下り車線だ。当たり前だ。こっちは電欠の不安いっぱいなのに、80km/h以上出すとメーター内の電力残量メモリが目に見えて減っていくのだから。
「じゃ、新潟まで走ってきてくださいよ。(意訳:でんきパンダが出来たんだから、実家の新潟までちょっと行ってこいよ)」20歳近くも年下の編集部の大平くん(てんちょ~)はそう言った。
確かに巨万の富を得たビル・ゲイツが世界最大の慈善基金団体を作ったように、天賦の才能に恵まれた大谷翔平くんが将棋でもSEでもなく野球に励むように、世界でおそらく数台しかない急速充電可能な改造電気自動車はロングドライブを実証すべきだろう。
なにしろ数多の改造電気自動車が充電に時間のかかる普通充電ゆえ、泣く泣くロングドライブを諦めているのだから。
とはいえ、実は不安がいっぱいだ。そもそも納車されたばかりだ。
古川さん(でんきパンダの製作者):新潟まで? ……ロードサービス付きの保険だけじゃきっと足りないからさ、50kmまでけん引無料サービス付きのクレジットカードも入っておいた方がいいよ。
作った人からこう言われると、さらに不安だ。
ぴえいる:航続可能距離はまだ41kmあるから嵐山PAまで行けそうだけど…… 手前の高坂SAにしとくか。
すべてはこの調子である。充電スポット間の距離がある高速道路で「電欠寸前で着いたら充電できなかった」では済まされない。そこで「中身はi-MiEVのMだから1回の充電で80kmは走れるだろう」とアタリをつけ、事前にスマホのアプリ「GoGoEV」で立ち寄れるSA/PAの目星を付けておいた。
実はでんきパンダ、日産製の急速充電器でエラーがでる、つまり充電できないという事情を抱えていた(原因は不明)。それゆえ、アプリで日産製かどうかを必死に下調べしておく必要があったのだ。
それでも高速道路上に止まる悪夢が目に浮かぶ。メーター内の「航続可能距離」がどんなに「もう1つ先まで行けますよ」とささやいても、私は石橋をたたき壊すかのようにジリジリと新潟に向かった。
おかげでドライブ中はずっとすべての筋肉が緊張して、終始頻尿だ。いつもは2回のタバコ&トイレ休憩を挟んで約4時間で東京から新潟の実家までたどり着くのだが、この日は5回充電&放尿だ。結局約320kmを7時間30分もかけて走破した。
高速道路だけじゃ記事がつまんないんで、帰りは下道で!(byてんちょ~)
東京を出発する前に、てんちょ~から下道で帰ってこいと言われていた。そのときは「ちょっとした老人いじめじゃないか!」と文句を言ったが、いざ新潟の実家を出発する前は、むしろ喜んでいた。
実は高速道路と違って下道なら、万が一目的地で充電ができなくても数km走ればたいてい別の充電スポットを選べるので、気が楽だったからだ。
しかも充電中はヒマだし、その間に安全距離圏内である80km以内で次の充電スポットをアプリで探して、Yahoo!ナビにセットすればよかった。楽勝だ。これなら頻尿に悩まされないだろう。
それでも途中の山越えで、充電してまだ間もないのに航続可能距離が実走以上に減りが進む。三国トンネルを抜けたところで残59kmになった時は股間がキュッと縮み上がり、またしてもトイレに…… が、下り坂でがぜん回生機能が働き、結局最大86kmまで延びた。
こうして日曜日の渋滞を避けながら、朝9時に新潟の実家を出て、21時頃に東京都港区の三菱自動車本社の急速充電器にたどり着いた。約375km、充電は7回。所要時間12時間。
それにしても急速充電の所要時間は、最大30分。土曜日のSAや日曜日の道の駅のレストランで食事するには心もとない。かといってトイレとタバコだけでは持てあます。
充電中の時間の使い方や、電欠への恐怖感も含め、でんきパンダを飼い慣らすには、もう少し時間がかかりそうだ。むしろでんきパンダに、私の方が慣らされるんだろうけれど。
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