往年のフレンチコンパクトが大好きな人にこそ勧めたい現行モデル、ルノー トゥインゴ!
カテゴリー: 特選車
タグ: ルノー / トゥインゴ / EDGEが効いている / 伊達軍曹
2020/04/26
▲日本では2016年9月に発売されたルノー トゥインゴの第3世代。写真はカーセブンインポート三郷店が販売する走行0.7万kmの2017年式インテンス キャンバストップで、車両価格は129万8000円「RRレイアウト」に大変身して登場
こちらは、雑誌「カーセンサーEDGE」で8年以上続いている自動車評論家MJブロンディさんの長寿連載「EDGEセカンドライン」のB面。すなわち、なぜかその取材現場に同席している自動車ライター伊達から見た「同じ車の別側面」だ。
第12回目となる今回は、2020年4月27日発売のカーセンサーEDGE 6月号で取材した2017年式ルノー トゥインゴ インテンス キャンバストップのB面をお届けする。
結論から申し上げると、現行型ルノー トゥインゴの中古車は、往年のルノー 5(サンク)やプジョー 205といったフレンチコンパクトの「幻影」を追い求めている人に最適な1台なのではないかと、筆者には感じられた。
結論に関するご説明へと進む前に、現行型ルノー トゥインゴという車についてのごく簡単な解説だけはしておこう。
トゥインゴは、その初代は1995年に発売となったルノーのコンパクトカー。2008年から2014年まで販売された2代目はやや影が薄かったが、2016年9月発売のこちら3代目は、久々に「インパクトのあるトゥインゴ」としてデビューを果たした。
3代目はドイツのスマート フォーフォーとエンジンや駆動系、ボディ骨格などを共用し、駆動レイアウトはそれまでの一般的なFFからRR(エンジンをリアに搭載し、リアホールを駆動させる方式)に変更。
搭載エンジンは最高出力90psの0.9L直3DOHCターボが基本で、トランスミッションは、これまた基本的にはEDC(エフィシェントデュアルクラッチ)というデュアルクラッチ式の6速ATが採用されている。
2019年8月にはマイナーチェンジが行われ、外装デザインをややツルンとしたニュアンスに変更。そして新しいインフォテインメントシステムを装備し、車線逸脱警報とタイヤ空気圧警報なども新たに採用されている。
取材車両はマイナーチェンジ前の「インテンス キャンバストップ」で、インテンスという前期型のベースグレードに電動キャンバストップを加えたグレード。新車時価格は199万円で、取材車両である2017年式/走行0.7万kmのワンオーナー禁煙車には「129.8万円」とのプライスが付けられている。
▲前期型は特にシンプルな構成となる現行型ルノー トゥインゴの運転席まわり。オーディオ操作スイッチの中央付近にある専用クレードルはスマホを固定するためのもの。このあたりの割り切りも、いかにもフレンチコンパクトといった感じだが、後期型では「EASY LINK」という7インチのタッチスクリーンが装備されたなんとも懐かしいステアフィールとサイズ感
で、先ほど冒頭付近で申し上げた「現行型ルノー トゥインゴの中古車は、往年のルノー 5やプジョー 205といったフレンチコンパクトの幻影を追い求めている人に最適な1台なのではないか?」ということについて。
なぜそう思うかといえば、ひとつには「それら往年の名作を思い求める気持ちはわかるが、今さら買うのははなかなか難しいから」ということだ。
筆者も1987年式のルノー 5バカラという車に乗っていたためよくわかるつもりだが、あの手の「シンプルかつ軽量小型でよく走り、同時にデザイン的にも素敵なフランス車」をもう一度手に入れたいとは思うものの、もはやブツがほとんどないのだ。あったとしても、状態的にかなりアレか、もしくはコレクターズアイテムとして結構な高額になっていて、そう簡単には手が出せないというのが昨今の状況だ。
それゆえ、「あの手の車にはもう二度と乗れないんだろうな、とほほ……」みたいに思っていたところに颯爽と(?)登場したのが、この3代目ルノー トゥインゴだった。
サイズは、ほぼルノー 5みたいなもの。いや正確には、3代目トゥインゴはさすがに現代の車なので、小さいとはいえルノー 5より全長は30mm長く、全幅は60mm広い。しかし、デカい車だらけになってしまった世の中でざっくりと考えれば、「まあだいたい似たようなモノ」とは言えるサイズ感なのだ。
▲2代目と比べて全長が80mm短縮されたにも関わらず、ホイールベースは125mm延ばされ、3代目トゥインゴは3ドアから5ドアに変貌。全長に関してはルノー 5とそう大幅には変わらないそして「走り」も似ている。
もちろん、ルノー 5やプジョー 205などがFF方式であったのに対して3代目ルノー トゥインゴはいわゆるRRであるため、「そもそもぜんぜん違うじゃねーか!」という見方もある。
だがエンジンが前輪の上方に置かれていないRR車だからこそ、トゥインゴの走りはどこかルノー 5やプジョー 205あたりの味わいに似ている。つまりノーズが軽いため、鼻先の動きが非常に軽快なのだ。ハンドルを切ればスッと曲がっていくこの感触は、駆動方式は違えど「あの感触」を思い出させる。ある種の人間にとっては懐かしく感じられるはずのステアフィールだ。
そしてデザインも――もちろん細部はぜんぜん異なるわけだが――どことなくルノー 5に通じるものがあり、特にリアの造形は「サンクターボ」を実際に意識して作られたという。このあたりも、現行型ルノー トゥインゴをついつい「サンクとか205とかの代替品」として見てしまう理由のひとつかもしれない。
▲床面の下にはエンジンが鎮座しているが、ラゲージスペースは決して激狭ではない。リアまわりのデザインは、世界ラリー選手権のために開発された「サンクターボ」のそれをモチーフにしている「100万円そこそこの車」とは思えぬクオリティ
そんなこんなの現行型ルノー トゥインゴを、「よっしゃわかった! いつまでもサンクや205の幻影を追っかけてても仕方ないので、トゥインゴ買うことにするわ!」となったとき、もしも新車を買うとなると、現在のベースグレードである「EDC」を買う場合で車両本体価格が198万6000円。
いや、この車の場合は電動キャンバストップがあった方が満足度は高いはずであるため、EDCではなく「EDC キャンバストップ」を選ぶとなると、車両本体価格が210万6000円。支払総額は230万円ぐらいになるだろうか?
▲ちなみに取材車両も固定屋根ではなくキャンバストップ。開放感が素晴らしい……高い車ばかりになった最近の世の中で言えばかなり安い部類に入るが、それでも「けっこうなお値段」であるとは言える。そこまで出すならもっと別の、もうちょっと立派な感じの車を買うか、あるいは中古のルノー 5やプジョー 205などをどこかで見つけてきて、それに100万円とか200万円のレストア予算を投入し、最高の1台に仕上げてみるか――なんて夢も見てしまう。
だが中古車であれば、例えば今回の取材車両であれば――走行0.7万kmという「ほとんど新車みたいなモン」と言える状態であるにも関わらず、車両本体価格は129.8万円と非常にお手頃。総額表示がないため実際の支払総額は不明だが、まぁそう高額にはならないはずだ。
以上のとおり、「程よく手頃な予算で往年の名車の代替品が手に入る」というのが現行型ルノー トゥインゴなわけだが、筆者の予想では、最初は「代替品」だったとしても、現行型トゥインゴに乗っているうちに、元カレか元カノかはわからないが、いずれにせよ「昔のフレンチコンパクト」のことはすっかり忘れるのではないか? そして、現在の彼女だか彼氏だか知らないが、とにかく現行型のルノー トゥインゴこそが「本命の存在」に転じるのではないか――とにらんでいる。
それぐらい、手頃な予算で手に入る現行型トゥインゴのユーズドカーは素敵だ。

自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。
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