フェラーリ スペチアーレ ▲スペチアーレ(イタリア語でスペシャルという意味)と呼ばれるフェラーリの希少な限定生産車ですが、それらの相場は今、世の中の様々な影響を受けてけっこう下がっていたりするのでしょうか? それとも相変わらず鬼のように高い? いろいろと調べてみました!

超希少スペチアーレは相変わらず2億円オーバー

9月27日発売の雑誌「カーセンサーEDGE 11月号」では、「今、乗るべきフェラーリ。」と題したフェラーリ大特集を展開している。

ここでは、同特集内に掲載された「スペチアーレ・フェラーリのマーケット事情」をweb用に再構成した特別バージョンをお届けしながら、いわゆるスペチアーレ・フェラーリ(限定生産車)の中古車相場について考えてみたい。
 

フェラーリ F40▲写真はフェラーリの創業40周年を記念して1987年に作られた「F40」。公称最高速度は、当時世界最速の324km/h

コロナ禍が世界経済に大混乱引き起こしたとしても、あるところにはあるのがお金というもの。

COVID-19は中古フェラーリの相場に大きな影響は与えておらず、幸いにしてコロナ禍の影響を受けなかった販売店や愛好家によって活発に、高値で取り引きされ続けている。

であるからして当然、「スペチアーレ」と呼ばれている希少なフェラーリ各モデルの相場も、ほとんど下がっていないのが現状のようだ。

具体的には、今年5月下旬に終了した海外の有名オンラインオークションでは、1985年に登場したスペチアーレの原点である「288GTO」が、日本円にして約2億5000万円で落札された。

前年の同オークションに出品された超低走行物件の落札価格(約3億7000万円)と比べればさすがに安いが、別のオークションでの2016年の落札価格が約2億1000万円だったことから考えると、リアル・スペチアーレの相場は上昇トレンドにあると見ていいはず。

ちなみに前述した今年5月の海外オンラインオークションでは、これまたリアル・スペチアーレのひとつである「エンツォ」が、コロナ禍の真っ只中であったにもかかわらず約2億8500万円で落札されている。
 

フェラーリ エンツォ フェラーリ▲こちらがその「エンツォ フェラーリ」の広報画像。創業55年の節目である2002年に399台製造されたスペチアーレで、車名はフェラーリ創業者の名前をそのまま使用。搭載エンジンは6LのV12自然吸気

その相場は核戦争でも起きない限り下がらない?

エンツォや288GTO、あるいはF40やF50などの超絶スペチアーレはさすがに雲上世界の話だとしても、もう少し一般的なスペチアーレ、すなわちV8ミッドシップモデルの超高性能バージョンである「488ピスタ」や「458スペチアーレ」等々の中古車相場も、今のところはほぼ下がっていないようだ。

複数のフェラーリ専門店にヒアリングしたところによれば、世の中の先行き不透明感が強烈だった今年3月頃はさすがに商流がピタリと止まり、やや焦ったという。

だが4月7日に緊急事態宣言が発出された頃には、実は早くも各種の動きはほぼ戻っており、以降はむしろ活発に売買されていたとのこと。

これは、いわゆる自粛をせざるを得なかった(自動車好きの)富裕層各位が「せめて車ぐらいは楽しみたい……」というマインドでもって、V8スペチアーレの購入と、それを深夜などに走らせる行為に傾倒したゆえの動きではないかと専門店筋は見ている。

そして現在。相変わらずCOVID-19は予断を許さない動きを見せているものの、一部界隈のセンチメントは「もはや終わりつつある話。過度な自粛やロックダウンはむしろ良くない」という方向に変化している気配も感じられなくはない。

それがそのとおりなのかどうかを判断できる科学的な知見を、筆者は有していない。だがそういった“気配”が実際にある限り、スペチアーレ系フェラーリの相場は――第三次世界大戦でも起きない限り――下がることはないのだろう。
 

フェラーリ 488ピスタ▲458スペチアーレの後継として2018年3月のジュネーブショーで発表された「488ピスタ」。3.9L V8ターボエンジンの最高出力は実に720psで、中古車のボリュームゾーンは6000万円前後

とりえあず注目したいのはこの4モデル!

ということで以下、代表的なスペチアーレ・フェラーリの概要と、それぞれの中古車相場を記す。

これらを実際に買える人は少数かと思われるが、「来るべきいつか」のための参考として、あるいは目の保養として(?)、ご覧いただけたならば幸いだ。

●フェラーリ エンツォ フェラーリ
注目相場:2億5000万~3億円

フェラーリ エンツォ フェラーリ▲2002年に399台のみ製造されたエンツォ フェラーリ。新車価格は8000万円弱だったが、現在の中古車相場は軽く2億円オーバー

こちらは“注目”したところで、筆者を含む99.9%の人間には関係のない車種かもしれないが、フェラーリのスペチアーレ(限定生産車)といえばコレということで、いちおう挙げておく。

エンツォ フェラーリは、フェラーリ社の創業55年を記念して2002年に作られたスペチアーレで、ミッドに搭載されるエンジンは最高出力660psのV12自然吸気。

399台生産されたその新車価格は約7850万円だったが、中古車相場はすぐさま約3億円にまで高騰。

そして現在も、おおむねそのぐらいの相場で(世界のごく一部で)売買されている。「もしもビリオネアになったら買いたい究極中の究極」といえる1台だ。

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フェラーリ エンツォ フェラーリ×全国

●フェラーリ 430スクーデリア
注目相場:1900万~3000万円

フェラーリ 430スクーデリア▲2007年のフランクフルトショーでミハエル・シューマッハーによって発表され、日本では2008年4月に発売となった430スクーデリア

上記のエンツォやF40、F50などの“超絶スペチアーレ”と比べてしまえば、当然ながらかなりの格落ち感はある。だが一般的に見て「手が届く(かもしれない)スペチアーレ」といえばコレだろう。

通常のF430を約100kg軽量化し、4.3L V8エンジンはベース比27psアップの510ps/8500rpmを発生。

2008年の新車時価格は3026万1000円だったが、12年後の今も、相場の上限は新車時価格とほとんど同じ。

最近のボリュームゾーンは2200万~2500万円付近ということで、唯一の「まあまあ現実的なスペチアーレ」だといえるだろうか。

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フェラーリ 430スクーデリア×全国

●フェラーリ 458スペチアーレ
注目相場:3900万~4700万円

フェラーリ 458スペチアーレ▲最高出力570psとなる458イタリアの4.5L V8直噴エンジンを605psまでチューンし、「サイドスリップ・アングル・コントロール(SSC)」という新システム等々も採用した458スペチアーレ

当然ながら中古車相場はまだかなり高額だが、中古車として今最もホットというか旬なスペチアーレといえば、458イタリアの走行性能をさらに高めたコレだろう。

ノーマルの458イタリアでも最高出力570psを発生する4.5L V8エンジンは605ps/9000rpmまで強化され、車両重量は90kg軽い1290kgに。

2014年の新車時価格は3390万円だったが、6年が経過した現在はむしろ相場が上がり、車両価格はおおむね4300万円付近が中心。

かなり高額ではあるが、中古車としては(お金さえあれば)ちょうどいい旬の時期にあるといえる「ほぼレーシングカー」だ。

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フェラーリ 458スペチアーレ×全国

●フェラーリ 488ピスタ
注目相場:5200万~6100万円

フェラーリ 488ピスタ▲ワンメイクレース用である「488チャレンジ」から移植した各種技術とチタン製コンロッド等々により、すべての回転域で488GTBを上回るトルクを発生する488ピスタ

458スペチアーレの後継にあたるのが、2018年登場のこちら。

488GTBをベースとするスペシャルモデルで、コンセプトは「プロでないドライバーがステアリングを握っても、様々な状況でレーシングカー並みの走りを堪能できる」というもの。ちなみにピスタ(pista)というのは、イタリア語で「サーキット」という意味。

3.9L V8ターボエンジンの最高出力は720psに達し、車重は488GTBより90kg軽量に。そして0-100km/h加速は、あのF50よりも速い2.85秒。

中古車の最安値はおおむね5200万円ほどと見受けられるが、ボリュームゾーンは6000万円前後。

庶民からすると猛烈に高額ではあるが、ほぼ値落ちしないことを考えれば安い……のかもしれない。
 

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文/伊達軍曹、写真/フェラーリ
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。