ポルシェ ケイマン ▲こちらは東京都目黒区の「PLANEX CARS」が販売していた2006年式ポルシェ ケイマン(※現在は売約済み)。「前期型のベースグレードで6MT」という、ある意味「素うどん的」とも言えるグレードですが、スポーツカーというのは「おいしい素うどん」的なモノが一番なのではないか? というのが今回の主題であります

今のうちから注目しておきたい「近未来の名車」を探せ

こちらは2月27日発売の雑誌カーセンサーEDGE 4月号に掲載された、自動車評論家・永福ランプ(清水草一)さんの人気連載「NEXT EDGE CAR」の、担当編集者から見た「別側面」である。アナログレコードで言うB面のようなものと思っていただきたい。

なお「NEXT EDGE CAR」というのは、「今現在はまだ名車扱いされていないが、近い将来、中古車マーケットで名車または名品と呼ばれることになるだろうモデルを探そうじゃないか」というのが、そのおおむねの企画趣旨である。

で、カーセンサーEDGE 4月号の同連載で取り上げた中古車は、2006年式の初代ポルシェ ケイマン。走行6.3万kmの6MTで、スポーツクロノパッケージが付いて車両価格279万円という1台だった。

これはなかなかの要注目物件だと思うわけだが、その理由を説明する前に、初代ポルシェ ケイマンという車自体のプロフィールも少しだけご説明しておこう。
 

ポルシェ ケイマン▲ちなみにケイマンという車名は「英国領ケイマン諸島」ではなく、中南米に生息するワニの一種に由来している。鋭敏さと俊敏性を表した車名であるという

2代目ボクスターをベースとするミッドシップクーペ

ポルシェ ケイマンとは、要するに「ボクスターのクーペ版」である。

リアエンジン・リアドライブの2+2クーペである歴代ポルシェ 911に対し、ボクスターはミッドシップレイアウトを採用した2シーターオープン。そのボクスターの2代目モデルをベースに作られた、固定式ルーフとテールゲートをもつ2シータークーペが、日本へは2005年後半に上陸した初代ケイマンだ。

前期型の搭載エンジンは、2.7Lおよび3.4Lの水冷水平対向6気筒で、トランスミッションは5速AT(ティプトロニックS)と5MTまたは6MT。ちなみに「5MTまたは6MT」と書いたのは、基本装備としては「2.7Lのベースグレード=5MT/3.4LのケイマンS=6MT」なのだが、ベースグレードであってもオプションとして6MTを選ぶことができたという、ちょっとややこしい事情に基づいている。

アンダーステアやオーバーステアが発生した際に、適切な車輪にブレーキをかけて方向修正をしてくれる、ポルシェ・スタビリティ・マネージメントシステムは全車標準装備で、スイッチひとつで快適性重視のモードと超スポーティなモードを切り替えられるポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメント(PASM)やセラミックブレーキもオプションとして用意された。

2008年12月にはマイナーチェンジを行い、エンジンを刷新するとともにトランスミッションも、伝統的な5速ステップATであったティプトロニックSから、ダブルクラッチ式の「7速PDK」へと変更された。
 

ポルシェ ケイマン▲取材車両の運転席まわり。6.3万kmというまあまあの距離を走った個体ではあったが、内装のコンディションは上々だった。人気のオプション「スポーツクロノパッケージ」装着車であるため、ダッシュボード中央上部にはアナログ式のストップウオッチが備わっている
ポルシェ ケイマン▲この時期の多くのポルシェ車に共通するデザインのシートも、スレやキズなどはほぼ見当たらない状態であった

使い切れるエンジン+ミッドシップ=最高!

今回ご紹介する物件は、そんな初代ポルシェ ケイマンの前期型ベースグレードだ。

「前期型」の「ベースグレード」というと、自動的に「なんとなくショボそう」とイメージする人も多いかもしれない。

その気持ちはわからないでもないが、事実は少々異なる。

初代ケイマンの前期型ベースグレードは、そして特にその「6MT」の個体は、スポーツカーがお好きな人にとっては「かなり素晴らしい選択肢」とすら言えそうなものなのだ。

全長4340mm×全幅1800mm×全高1305mmで車重は1360kgという、スポーツカーとしてはきわめて妥当な寸法の車体中央に、最高出力245psという「使い切れるパワー」の低重心な水平対向6気筒エンジンが載っているというのは、いわば「奇跡的なレイアウト」と言える。

初代ケイマンがもっているのは、一般的な市販スポーツカーとしてはそれ以上を望みようがないぐらい物理的には素晴らしいシャシーバランスであり、そしてさらに、そのシャシーやらエンジンやらを作っている(いた)のは、あのポルシェ社なのだ。

そしてさらに、それを5速AT(ティプトロニックS)で味わうのも決して悪くはないが、そんなにも素晴らしいバランスのモノであるならば、自動車好きとしてはマニュアルトランスミッションで楽しみたい――というのが正直なところ。

その点においてもこの個体はばっちりというか、ばっちり以上と言える。なぜならば、標準装備だった5速タイプのMTではなく、よりきめ細かな変速を行うというか楽しむことができる「6MT」が備わっているからだ。
 

ポルシェ ケイマン▲ボディの後端付近にエンジンが搭載されている911と違い、ケイマンは運転席真後ろ付近に、水平対向6気筒エンジンがマウントされている
ポルシェ ケイマン▲3.4LのケイマンSのMT車は標準で6速だったが、2.7Lである前期型ベースグレードのMTは5速が標準。しかしこちらの個体は、オプション装備としての「6MT」を選んでいる
 

通常、こういった「自動車好きにはたまらない車種」の中古車相場というのはどんどん上昇してしまうのがここ最近の常識なのだが、初代ケイマン ベースグレードMT車の場合はなぜかそうでもなく、車両価格で290万円前後、支払総額で見て「300万円ちょい」ぐらいの線で、けっこうな好条件車が探せるのだ

今後、自動車マニア各位がこの「市場の歪み」に気づくことで初代ケイマン前期型ベースグレードのMT車が値上がりしてしまうのか、それとも今ぐらいの価格水準が続くのかは、筆者にはわからない。

だが少なくとも言えるのは、「今(2021年3月下旬)現在は、総額300万円ちょいぐらいでイケる」ということだ。

残念ながら筆者が取材したこちらの2006年式は売約済みとなってしまったようだが、これに類似する条件の個体は、やや少ないが、まだ普通に流通している。

「使い切れるパワーのエンジンを、物理的には文句のない位置に搭載した、マニュアルトランスミッションのスポーツカー」をお探しの方は、ぜひ初代ポルシェ ケイマンの5MT車または6MT車をチェックしていただければと思う。
 

文/伊達軍曹、写真/大子香山

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伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。