Gクラス ▲高い人気を誇る現行型メルセデス・ベンツ Gクラスですが、直近の中古車平均価格はなんと1800万円以上。さすがにちょっと……ということで、その半値である「総額900万円ぐらい」で買えてしまう、現行型Gクラスに勝るとも劣らぬ魅力を備えているSUVをピックアップしました!

新車価格は1200万円なのに中古車は1800万円以上?

新車が品薄ゆえか、現行型メルセデス・ベンツ Gクラスの中古車価格がちょっと大変なことになっている。

売れ筋グレードである「G400d」の新車価格は1289万円なのだが、現行型Gクラス全体の中古車平均価格は2023年6月末現在、なんと1800.2万円なのである。

まぁ、これでも今年3月から直近にかけて1919万円→1881万円→1854万円と、微妙に下がってきてはいる。だがこんなペースでは、現行型Gクラスの中古車価格が程よい水準になる日がやってくるのは、ニュアンス的には「今から50億年後に太陽は寿命を迎えます」という話と同じぐらい、はるか遠い未来のことになるだろう。
 

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メルセデス・ベンツ Gクラス(2代目)

こうなったらもう現行型Gクラスのことはサクッとあきらめて、何か代わりのSUVを探した方がいいのかもしれない。そしてその際は予算1800万円ではなく、約半値である「総額900万円ぐらい」でGクラスに勝るとも劣らぬ1台が買えたら、留飲も下がろうというものだ。

しかし実際、現行型Gクラスの半値で買える「メルセデス・ベンツ Gクラスに勝るとも劣らぬ1台」などというものは存在しているのだろうか?

次章以降、検討してみることにしよう。
 

Gクラス▲こちらが現行型メルセデス・ベンツ Gクラス。これに匹敵する個性と実力があり、なおかつ「おおむね半値で買えるSUV」などというものは存在しているのだろうか?
 

候補1|SUV界の西横綱(?)、現行型ポルシェ カイエン
→予算目安:総額860万~1100万円

仮に現行型メルセデス・ベンツ GクラスをラグジュアリーSUV界の東横綱だとするならば、キャラクターはまったく異なるものの、“格”から考えれば現行型ポルシェ カイエンこそが「西横綱」といえるはず。

それゆえ相手にとって不足はないというか、Gクラスの代わりとして不足なし――である。
 

カイエン▲こちらが3代目となる現行型ポルシェ カイエンの初期モデル
カイエン▲インテリアはおおむねこのような世界観。タッチスクリーンでの操作を基本としたスッキリ系デザインで、インパネの中央に備わる12.3インチのスクリーンも操作はタッチ式

今さら詳しくご説明するまでもないとは思うが、ポルシェ カイエンは、マカンのさらに上に位置するポルシェのフラッグシップSUV。そして「世界で最も売れてるポルシェ」でもある。

カイエンとしては3代目にあたる現行型が上陸したのは2017年12月。まずは3L V6ターボの「カイエン」と2.9L V6ツインターボの「カイエンS」、そして4L V8ツインターボを搭載する「カイエン ターボ」の3グレードで発売され、2019年途中にはプラグインハイブリッドモデルを追加。

そして2020年6月には「カイエンGTS」を追加し、2023年4月には大幅な仕様変更が実施されている。

それらの中から総額900万円ぐらいで狙えるのは、主には2018~2021年式の走行距離2万km台までの「カイエン」。最高出力340ps/最大トルク450N・mの3L V6ガソリンターボエンジンに8速ATを組み合わせたベースグレードである。
 

カイエン▲ベースグレードである「カイエン」の初期モデル

ベースグレードとはいえポルシェのフラッグシップSUVゆえ、装備レベルやたたずまいの良さは十分以上であり、身のこなしは「ほとんどスポーツカー」と言いたいレベル。

重厚なGクラスと比べるとキャラはずいぶん違うが、「世界最高峰レベルのSUVである」という部分においては同一。その低走行物件を現行型Gクラスの約半値で買えると思えば、納得感はかなり強いはずだ。

とはいえ、600Nmや700N・mの超絶トルクが発生Gクラスの「G350d」または「G400d」と比べ、カイエンの最大トルクは450N・mでしかない(「450N・mでしかない」というのも、考えてみればすごい言い草だが)。

そのため、そこが気になるのであれば770N・mのカイエン ターボ……は総額1400万円以上なので、2.9L V6ツインターボから440psの最高出力と550N・mの最大トルクを発生させる「カイエンS」を狙いたいところだ。

こちらはベースグレードよりも少々高めだが、それでも総額930万~1100万円付近で、走行距離2万km台までの2018~2021年式を見つけることができる。
 

カイエン▲最高出力440psの2.9L V6ツインターボを搭載する「カイエンS」

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ポルシェ カイエン(3代目)
 

候補2|Gクラスのそっくりさん(?)、現行型ランドローバー ディフェンダー
→予算目安:総額850万~1100万円

現行型メルセデス・ベンツ Gクラスの代わりとして、その半値で現行型ポルシェ カイエンを買う――というのは悪くない話だと思うものの、Gクラスのスクエアで重厚なフォルムと雰囲気がお好きな人にしてみれば「論外!」ということになるのかもしれない。

また、カイエンは2023年4月に大幅な仕様変更がされているというのも、前期型を買ううえでは若干気になるポイントだ。

ならば、現行型のランドローバー ディフェンダーでどうか?
 

Gクラス▲こちらが現行型ランドローバー ディフェンダー。写真はロングボディ+5ドアの「110」
 

ご承知のとおりランドローバー ディフェンダーは、1948年に登場して軍用車や警察車両などとしても使われた「ランドローバー」を源流とする屈強なクロカンモデルだったが、2019年11月に登場した現行型からは、ラダーフレーム構造からモノコック構造に大変身。

それまでのディフェンダーと比べると2億倍ぐらい(?)乗り心地が良好になり、同時にフォルムやデザイン、装備内容なども高級SUV的に洗練されたものに変わった。

このあたりは、ある意味Gクラスとそっくりである。

Gクラスもご存じのとおり軍用車が源流であり、そこから民生版が生まれ、2018年の現行型へのモデルチェンジでぐっと乗り心地がよくなった。そしてフォルムやディテールも、往年のGクラスの雰囲気は十分に残しながらも、高級SUV的なものに変わった。

その流れはディフェンダーとまったく同じ……とは言わないが、おおむね同じである。カタチも遠目には似てるし。

そんな現行型ランドローバー ディフェンダーには3ドアの「90」と5ドアの「110」があり(※2022年6月からは8人乗りの130も追加)、どちらもステキなのだが、「Gクラスの代わり」と考えるなら、ロングボディで5ドアな110系の方がハマるだろう。
 

ディフェンダー▲ディフェンダー110。細部のデザインはもちろんずいぶん違うが、全体としてのたたずまいは現行型メルセデス・ベンツ Gクラスに近いものがある

パワーユニットは最高出力300ps/最大トルク400N・mの2L 直4ガソリンターボと、同300ps/同650N・mをマークする3L 直6ディーゼルターボの2種類。トルクで考えれば650N・mのディーゼルターボを「G350d」や「G400d」にぶつけたいところだが、その中古車価格は1100万円以上と少々お高い。そのためここはガソリンターボで行くことにしたい。

ベースグレードであれば、走行距離2万km台までの物件でも総額730万円ぐらいからイケる。しかし、ベースグレードはファブリックシートが標準であり、安めの中古車はオプションのレザーシートを装着していない場合が多いため、「Gクラスの代わり」としてはラグジュアリー感に欠けるきらいがある。そのため、ここで狙うべきはガソリンターボの「110 S」または「110 SE」だろう。

で、「110 S」の中古車流通量はかなり少ないため、必然的に狙い目は「110 SE」ということになる。こちらのグレードであればシート表皮はハーフレザーが標準で、12WAYパワーシートはメモリー機能付き。そしてMERIDIANサウンドシステムや20インチホイールも標準装備だ。その他、オプションのマトリクスLEDヘッドライトを装着している中古車も流通している。

その走行距離1万kmぐらいの物件を、現行型メルセデス・ベンツ Gクラスの約半値といえる総額850万~1100万円で入手できるのであれば――かなり悪くない話であるはずだ。
 

ディフェンダー▲現行型ディフェンダーの運転席まわり。「S」以上のグレードにはセンターコンソールが備わり、シート表皮はハーフレザーになる

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ランドローバー ディフェンダー(3代目)
 

候補3|やっぱりコレか? 先代メルセデス・ベンツ G350d
→予算目安:860万~1200万円

「Gクラスの約半値で、現行型ディフェンダー 110 SE(P300)の走行距離1万kmぐらいのやつを買う」というのは相当悪くない話だと思うわけだが、「いや、Gクラスの代わりはGクラスにしか務まらない」と考える人もいるだろう。

メルセデス・ベンツ Gクラスという車の強烈な個性を考慮すれば、その考え方もわからないではない。

ならば「先代のGクラス」を狙ってみるしかないだろう。
 

Gクラス▲先代メルセデス・ベンツ Gクラスのモデル末期に近い年式

舗装路での乗り心地や操縦性に関しては現行型の方が圧倒的に良好なわけだが、こと「デザイン」については先代も負けてないというか、個人的にはむしろ勝っているとすら思う。

各部が中途半端な丸みを帯びることになった現行型より、スパッと直線的な先代の方がスタイリッシュであるようにも思うのである。
 

Gクラス▲「すべてがほぼ直線!」といったニュアンスとなる先代Gクラスのエクステリア。そこがまたカッコいいのだ

年式や走行距離を問わないなら総額400万円ぐらいから狙える先代Gクラスだが、あくまで「現行型Gクラスの代わり」として買うのであれば、やはりモデル末期に登場したディーゼルターボエンジン搭載グレード「G350ブルーテック(2013~2015年)」または「G350d(2016~2018年)」の低走行物件に限定したいところである。

その場合の予算目安は、いずれも走行距離3万km台までの場合で「G350ブルーテック」が総額750万~800万円で、「G350d」が総額850万~1000万円といったところ。

いずれの中古車にも「ラグジュアリーパッケージ(スライディングルーフ+後席シートヒーター)」が装着されている場合が多い。

そして「総額900万円前後で比較的低走行なG350dを狙う」というのも十分アリだとは思うが、もしももうひと声予算をプラスできるのであれば、ぜひとも「エディション ゼブラ」や「ヘリテージ エディション」といった、超ステキなバイカラーの限定車を選びたいところだ。

その場合の中古車価格は総額1000万~1300万円ほどになってしまうが、下世話な話として、これら限定車は将来的なリセール価格もけっこう高いのではないかと推測する。
 

Gクラス▲2018年4月に発売された先代Gクラスの「G350dヘリテージエディション」。写真のボディ色「インペリアルレッド」は100台のみが販売された

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メルセデス・ベンツ Gクラス(初代)
 

候補4|日本が世界に誇るオフローダー、現行型トヨタ ランドクルーザー
→予算目安:総額960万~1200万円

ここまでなぜか輸入SUVに限定して「現行型Gクラスの代わり」を検討してきたが、よく考えてみれば輸入車に限定する必要は特になく、そして国産車にはGクラスに勝るとも劣らぬ存在感と性能を備えた1台があることを忘れていた。

ランクル300こと現行型トヨタ ランドクルーザーである。
 

ランクル300▲2021年8月に発売され、現在、新車はオーダーストップとなっている現行型トヨタ ランドクルーザー
ランクル300▲ランクル300の運転席まわり。盗難防止のため、スタートスイッチには指紋認証機能が採用されている

詳しいご説明は不要かと思うが、トヨタ ランドクルーザーは、派生車種を含めると170の国と地域で累計1060万台以上が販売されてきたトヨタのフラッグシップSUV。2021年8月に登場した現行型は、本格オフローダーとしての性能は当然ながらブラッシュアップさせつつ、ラグジュアリーSUVとしての乗り心地のよさや操縦安定性などもかなり向上させている。

刷新されたパワーユニットは最高出力415ps/最大トルク650N・mの3.5L V6ガソリンツインターボと、同309ps/同700N・mとなる 3.3L V6ディーゼルツインターボの2種類。トランスミッションはいずれも10速ATで、駆動方式は副変速機付きのフルタイム4WDだ。

で、そんな現行型ランドクルーザーの新車はバカ売れしすぎて数年待ちの状態となってしまい、現在は新車を注文することすらままならない。そして、それに関連して中古車価格も爆上がりしてしまったわけだが、いちおう総額960万~1200万円ぐらいのレンジでも、走行距離数百kmから数千kmレベルのガソリン車またはディーゼル車を探すことはできる。

また、スポーティなビジュアルと装備で大人気な「GR SPORT」も、この価格レンジに入っている。

「GR SPORT」であれば特に、存在感の面でもデザインの面でも現行型Gクラスにまったく引けを取らないと思うわけだが、いかがだろうか?
 

ランクル300▲こちらが「GR SPORT」。電子制御でスタビライザーの利きを変化させる「E-KDSS(Electronic-Kinetic Dynamic Suspension System)」などを標準装備。さらに内外装デザイン差別化されている

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トヨタ ランドクルーザー300(初代)
 

候補5|現行型ジープ ラングラー アンリミテッド+大型二輪+足グルマ
→予算目安:総額950万円

ここまで様々な「メルセデス・ベンツ Gクラスに対抗しうるラグジュアリーSUV」について、考えをめぐらせてきた。……金持ちだと思われたい。イケてるやつだと思われたい。ラグジュアリーでゴージャスな雰囲気のなかに身を置きたい――と考えるのであれば、選ぶべきは、そういったラグジュアリーSUVの数々だろう。

だが本来、メルセデス・ベンツ Gクラスおよびそれに類するSUVとは「自由と冒険」のために存在しているはずだ。舗装された道を走るのは当然として、それ以外の荒野と呼ばれる場所をも突き進み、新鮮な、新たな自分を手に入れる。それこそが、SUVならびにオフローダーの本質である。

であるならば……わざわざ900万円もするようなやつを買わなくてもいいのではないだろうか? 例えばだが、今現在総額450万円ほどで走行距離2万kmぐらいの中古車が買える現行型ジープ ラングラー アンリミテッドで、とりあえずは十分以上ではないか。

悪路走破性はライバルと同等以上であり、現行型は舗装路での乗り心地と操縦性も良好。さらにいえば、ビジュアルと存在感もかなりイケている。
 

ラングラー▲2018年11月に登場した現行型ジープ ラングラー アンリミテッド
ラングラー▲かなり無骨な作りだった先代JK型と違い、現行JL型のインテリアは「プレミアムSUV」と呼びたい世界観へと大きく変化している

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ジープ ラングラー(4代目)

とはいえ、ジープ ラングラー アンリミテッドは超本格オフローダーだけに、「スポーティというわけではない」「大柄なオフローダーなので『ちょっとそこまで』みたいな使い方には向かない(できないことはないが)」という問題点もある。

この2つの問題を完全解決するため、以下の2つを、ラングラーに加えて手に入れようじゃないか――というのが筆者の提案だ。

●「スポーティというわけではない」という問題の解決策
→大型二輪免許を取得し、何らかの大型二輪車を購入する。そしてスポーティに走り回る。

●「『ちょっとそこまで』みたいな使い方には向かない」という問題の解決策
→何らかの足グルマを購入し、日々の軽い用事にはそれを使用する。

……これらに加えて、屈強でイケてるオフローダーである現行型ジープ ラングラー アンリミテッドがあれば、あなたの自由で冒険的な、しかし堅実でもあるライフスタイルはパーフェクトな完成形に達するはずなのだ。

とはいえ、ソロバン勘定もしてみよう。

まずは中古の現行型ジープ ラングラー アンリミテッド。前述したとおり走行距離2万kmぐらいの「アンリミテッド スポーツ」が、だいたい総額450万円である。

次に大型二輪。多くの人はそもそも大型二輪の運転免許を持っていないはずであるため、まずは教習所に通って免許を取る。最短・最安では35万円ぐらいで取得できるようだが、まぁ何回か落第する可能性も考慮して、免許取得にかかるコストは50万円と見積もっておこう。

そして見事免許を取得したあかつきには、ステキな大型二輪を購入しようじゃないか。何を買ってもいいとは思うが、例えばハーレーダビッドソンのNIGHTSTERであれば、新車の総額がだいたい250万円ぐらい。BMWのS 1000 XRでも、総額はだいたい250万円ぐらいだ。

しかし「ジープと大型バイク」だけでは日々の生活がやや不便であるため、何らかの足グルマも購入しよう。50万円ぐらいで軽自動車を買うのも悪くないが、筆者であれば総額200万円ぐらいで「ちょっといい感じのやつ」を買うだろう。

何でもいいのだが、例えば小ぶりで便利で走りが良いスバル XVの、走行距離2万km台の2.0i-Sアイサイトが総額200万円ぐらいなので、ちょうどいいのではないかと思う
 

XV▲こちらがスバル XVの2.0i-Sインサイト。Cセグメントの乗りやすいSUVである

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スバル XV(初代)

で、以上の金額を合計すると、450万円+50万円+250万円+200万円=950万円ということになる。総額1800万円で中古の現行型メルセデス・ベンツ Gクラスを頑張って買う場合のおおむね半額にて、これだけの充実したラインナップを揃えることが可能になるのだ。

1台の超ラグジュアリーSUVと、数台に分けることで生まれるバラエティ豊かな生活のどちらを選ぶべきかは、人それぞれだろう。どちらが正しいとか正しくないとか、そういったことは特にない。

とはいえ車の買い方および生き方について、今回の提案が少しでもご参考になったならば幸いである。
 

文/伊達軍曹 写真/尾形和美、篠原晃一、メルセデス・ベンツ、ポルシェ、ランドローバー、トヨタ、ジープ、スバル
※記事内の情報は2023年7月5日現在のものです。
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。