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【連載:どんな車と、どんな時間を。】
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんな車と、どんな時間を?
 

“推し”がつないでくれたハコスカとの縁

カワサキ Z1やKAE初期型のマッハ、スズキ GS750といった名作オートバイを所有するバイク乗りで、360cc時代のスバル R2や三菱 ミラージュターボ、ダイハツ デ・トマソパンテーラといったスポーティなコンパクトカーを乗り継いできたカーガイでもある元井太一さんのハコスカは、大分55を冠するいわゆる2桁ナンバーだ。前オーナー、その前のオーナーから引き継いだ、昭和から続くナンバーだ。

5歳年上の前オーナーは、オートバイと矢沢永吉のファンという共通の熱い思いでつながった20年来の友人で、誘われてこのハコスカに乗せてもらってツーリングに出かけたこともある。見るたび、乗せてもらうたびに「かっこいいなぁ!」「これは絶対売りゃせんぞ」という会話も交わしてきたという。
 

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そんな友人が1年ほど前突然、「買わんか?」と声をかけてきた。「俺はこれを死ぬまで手放さんぞっちゅうて大事にしてたし、いっぱいお金をかけたことも知ってるし」と、なぜ手放すのか不思議に思いながらも、その理由はわからないままのみ込んだ。

他の人たちにも声をかけたようだが、最終的に「引き継いでください」と言われ、「わかりました」とありがたく買い取った。

ちょうど定年退職を機に、光岡 ロックスターを買うのもいいなと考えていた頃だったから買うこともできた、タイミングがよかったと元井さんは振り返る。

「お金払うときはドキドキしました。ホント売る気あるんやろか、買っちゃっていいのかな? って。ただもうもう今これ買わないと後がないっちゅう感じ。次これ探そうと思ってもないんじゃないかなと思って決めました」
 

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およそ1年、天気のいい日を選んで月2~3回、大分市内の自宅から阿蘇や熊本、時には宮崎までのドライブに連れ出しながら付き合ってきた。ますますハコスカのもつ昭和の雰囲気がかっこよく思え、サーフィンラインと呼ばれるリアフェンダーのプレスラインが大好きだという。

「今の車にない乗り心地の悪さが素敵やな(笑)。ハンドルも重いんですよね、今の車のように片手で回らない。でも自分で走ってるっていう感覚が素敵やな。それからやっぱり音ですよ」
 

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朝のエンジンのお目覚めは気分次第だというが、前オーナーにご機嫌斜めのときのとりなし方を聞きながら、最近ようやくわかってきたような気がするという。この日は翌月に矢沢永吉の東京・武道館コンサートを控えていて、武道館に行ったことがない前オーナーに頼まれて、一緒に武道館に行くのだと話してくれた。

「去年武道館に行ってみて、なぜ永ちゃんが武道館にこだわるのかっちゅうのがわかりました。そろそろね、生の永ちゃん聴いて泣いてみたいんですよ。次の武道館で泣けるかな」

思いを同じくする友人に愛車を引き継げて、前オーナーも幸せですねと言うと、元井さんは「自分もゆくゆくはこれを引き継いでくれる大分の方を探そうと思います。やっぱね、お金じゃないものもあるし」と答えた。大分の2桁ナンバーよ、永遠なれ。
 

スカイライン▲大好きな永ちゃんグッズは車内の至る所に。ドライブのBGMももちろん永ちゃんだ
文/竹井あきら、写真/山辺学
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元井太一さんのマイカーレビュー

日産 スカイライン(3代目)

●購入額/内緒
●マイカーの好きなところ/顔
●マイカーの愛すべきダメなところ/エンジンがかかるかご機嫌によるところ
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/しっかり愛してくれる、商売っ気のない人
 

竹井あきら

ライター

竹井あきら

自動車専門誌『NAVI』編集記者を経て独立。雑誌や広告などの編集・執筆・企画を手がける。プジョー 306カブリオレを手放してからしばらく車を所有していなかったが、2021年春にプジョー 208 スタイルのMTを購入。近年は1馬力(乗馬)にも夢中。