ルノー アヴァンタイム(1999年ジュネーブショー)→アヴァンタイム(2002年)

ルノーのコンセプトカー、アヴァンタイムは、1999年のジュネーブショーで出展された。センターピラーがなく、広々としたグラスルーフが付いたコンセプトカーは、ルノーにおける新たな“GTクーペ”としての使命を帯びていた。

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日本では2002年、名前も「アヴァンタイム」そのままに、市販化された。多くの人がこのまま市販されるとは思っていなかったに違いない

個性的な人がターゲット

ルノー アヴァンタイムコンセプトサイドビュー| 日刊カーセンサーアヴァンタイムの原型は1999年にジュネーブショーに同名で出展されたコンセプトカー。ルノーのミニバンモデルである「エスパス」がベースになっている。当時提携関係にあったマトラ社と共同で、開発が進められていた。ルノーと同じフランスのマトラ社は、もともとミサイルを製作していたが、後に自動車業界に参入を図り、マトラジェットや、マトラM350などを輩出した。

スペックは、全長4643×全幅1884×全高1600mm、3L 24バルブV6エンジン搭載、トランスミッションは6速MTであった。何より印象的だったのは、デザインだ。ストレートなボディラインや隆起したAピラーは、とくにサイドから見た姿に特徴がある。ユーザー想定の一例として「個性的な人」を挙げていたが、まさにそのようなデザインだ。

カテゴライズしにくい車

ルノー アヴァンタイムリア | 日刊カーセンサー2002年に同名でデビューを果たしたアヴァンタイムは、全長4660×全幅1835×全高1630mm、エンジンは3L V6DOHCエンジンを搭載。トランスミッションは5速ATとなった。新車時の販売価格は500万円。

コンセプトカーがそのまま市販されたようなアヴァンタイムを、新宿の通称「大ガード」付近で初めて走っているのを見て、「本当に販売しているんだ」と自分の目を疑ったことを記憶している。日本でいうところの「乗用車派生タイプミニバン」のように見えるのだが、ドアは2枚、そう2ドア車なのである。

しかもサッシュレスドアを採用し、センターピラーがなく、懐かしい表現を使えば「ピラーレスハードトップ」ということになる。このモデルをミニバンかハードトップ車かなど、カテゴリー分けするのは不可能に近い。良い言い方をすれば、それだけ柔軟性があるのだろうが…。「デザインから生まれた」という表現が似合いそうな車である。

フランスから連想する言葉といえば「お洒落」が多いはず。ただし、おとなしいお洒落だけをイメージしてはいけない。フランス車には、日本人から見ると少々「ぶっ飛んだ」デザイン=前衛的なお洒落が、アヴァンタイム以外にも時折登場する。

古くは戦後すぐに登場したシトロエン2CV、その後はシトロエンDS、同SMなどなど、フランス車のなかでも、「エグい」デザインの車は、シトロエンのお家芸であった。もともと公団であったルノーはフランス車のなかでもお堅い印象が強く、ソツのない作りが良くも悪くも特徴であった。アヴァンタイムの投入により、そんなルノーのカラーを払拭させたかったのかもしれない。

アヴァンタイムは、日本では2005年秋頃まで販売されていたが、間違っても日系メーカーからは市販されそうもないモデルだ。かといってフランス車らしい、おとなしめのお洒落感も少ない。フランス車が好きとか、とにかく目立ちたいというより、「デザインセンスが受け入れられる」といった、自分の価値観と見事に融合している人にとっては価値ある一台であるし、そういった人なら、自分なりに乗りこなすことができる車であろう。アヴァンタイムは、哲学的なオーラをコンセプトに帯びているので、乗り手を選ぶ車といえるかもしれない。実利主義的な感覚だけでは、なかなか乗りこなせない車なのだ。