ルノー アヴァンタイム▲キャプ 超個性的なルノー アヴァンタイムこそ自動車業界の「BIG BOSS」!


~ カーセンサーEDGE.net連載「功労車のボヤき」 ~
――君には“車の声”が聞こえるか? 中古車販売店で次のオーナーをじっと待ち続けている車の声が。

誕生秘話、武勇伝、自慢、愚痴、妬み……。

耳をすませば聞こえてくる中古車たちのボヤきをお届けするカーセンサーEDGE.netのオリジナル企画。今回は、個性が光る的な見た目が特徴的な、ルノー アヴァンタイムが物申す!!

楽しくなければ、車は面白くないだろう?

「かつては人気があったのに、今じゃすっかり忘れ去られてしまった……」

とフォード家のトーラスワゴン君がボヤいていると、となりで「アタシだって、デビューしたての頃はスタイリッシュコンパクトなんてもてはやされたものよ……」とメルセデス家のAクラスちゃんが嘆いている。
 

フォード トーラスワゴン
メルセデス・ベンツ Aクラス▲フォード トーラスワゴン(写真上)とメルセデス・ベンツ Aクラス(写真下)

おいおい、過ぎ去った昔のことなんか忘れて、もっと前向きに明るく楽しくやろうぜ!

楽しくなければ、車は面白くない。そうだろう?

やたらとハイテンションなお前は、いったい誰だって?

誰もがこのルックスを見たら忘れられない、快適さを味わったら離れられない、楽しさを知ったらとりこになる…… オレの名は、知る人ぞ知る(知らない人は、まったく知らない)ルノー アヴァンタイム。

気軽にミニバンなんて呼ばないでくれよ。超絶個性的なオレ様のことは、こう呼んでくれ。

自動車業界の「BIG BOSS」とね。
 

ルノー アヴァンタイム

何から何までぶっ飛んだ、比類なき個性

ミニバンと呼ばないでくれ、と言ったのにはちゃんとした理由があるんだぜ。

たしかにシルエットはミニバンっぽいかもしれないけど、じつは2ドア(ドアの長さは1.4mもある!)のクーペであり、しかもセンターピラーのないハードトップであり、さらにはボタンひとつで頭上の広大なガラスルーフと窓ガラスが同時に開くというカブリオでもあるんだ。
 

ルノー アヴァンタイム▲このようにスライド機構をもつグラスルーフ。後席部分ももちろん光が差し込む設計

そんな車、見たことないだろう?

何から何までぶっ飛んだ、比類なき個性。それがBIG BOSSたるゆえんなのさ。

オレがデビューしたのは2001年。まさに21世紀の始まりとともに、つまり未来とともにオレはこの世に舞い降りてきたってわけ。

ちなみに2001年といえば、今、話題の野球界のBIG BOSS(本家?)が日本のプロ野球を飛び出して大リーグに挑戦した年でもある。

唯一無二の個性は、20年の時を経ても輝きを失わないってことさ。いや、むしろ輝きを増すのが本物の証しかもね。

トーラスワゴン君もAクラスちゃんも斬新ではあったけど、個性のインパクトではオレには敵わない。ま、どんな車であろうとオレ様のとなりに並んだらかすんじゃうわけだけど。

誰だ? そりゃ、ただの珍車だろう、なんて失礼な。
 

スペックでは語れない、規格外の魅力

ルックスだけが個性的な車なら、たしかに珍車かもしれない。

だけど野球界のBIG BOSSが見た目や口先だけではなく、じつはアスリートとしてフィジカル的にも卓越した能力を持ち合わせているのと同じように、オレにも快適なドライビングカーたるきちんとした裏付けがある。

例えば、ドア。そんなに長大なドアだと乗り降りが大変だろうと思われるかもしれないが、ちゃんとコンパクトに開くようにダブルヒンジが採用されているんだ。

飛行機の扉みたいに、最初にドアがボディと並行に少し前にせり出してから開く。その独特の動きだけで、車好きのみならず乗り物好きなら誰もが萌えるにちがいない。ダサいスライドドアなんて、オレの美意識が許さないのさ。
 

ルノー アヴァンタイム▲通常のドアと違い独特な動きをする

シートベルト一体型(センターピラーレスだからね)のフロントシートだって凝ってるんだぜ。座り心地バツグンなのは言うまでもなく、さらにはシートの位置を動かしてもシートベルトの掛かり方が変わらないように工夫してあるんだ。

ちなみに、この凝ったレザーシートは1脚50万。見えるところだけでなく、目立たないところにもお金をかけるのがBIG BOSSなのさ。

今じゃオレも100万以下で売られているようだけど、快適な50万のレザーシートが2脚も手に入ると思えば元はとれるじゃないか?
 

ルノー アヴァンタイム▲まるで高級家具ばりに高価なフロントシート

機能的ながらシンプルにまとめられたコックピット、広大なガラスルーフのおかげで明るく開放的な車室空間……ドライブを楽しくする工夫は、いろんなところに施されている。

一度、シートに座ってみればわかるってもんよ。スペックでは語れない、つまりは規格外の魅力。天才ってのは、そういうもんだろう?
 

ルノー アヴァンタイム▲ガラスルーフのおかげでコックピットは明るく開放的

そもそも輸入台数の少ないオレ様! ほら、迷ってる場合じゃないぜ

スーパースターのオレだけど、走りがスーパーカー並みかと言われれば、ちと苦しい。3LのV6エンジン(207ps)は街中を走るぶんには十分にパワフルだけど、なにせ車重が1800kg近くもあるからな。

スタイルはぶっ飛んでるけど、高速道路をかっ飛ぶのは他の車に任せるよ。しっとり、どっしり、優雅なクルージングをお洒落に楽しんでもらいたいね。

そんなオレ様もデビューから、もう20年……

輝きを失ってはいないとはいえ、さすがに内装部品の欠品やらイグニッション系の故障やら細かな不具合は生じ始めてるみたいだな。酷使されるような車じゃないから、致命的な故障は少ないと思うけど。

登場する時代が早すぎたのか、もともと輸入された台数が少ない(200台ほど)こともあって、今じゃカーセンサーnetでヒットするのは、全国でわずかに3台(2022年1月現在)! ほら、迷ってる場合じゃないぜ。

ま、実際にシートに座ってみたら、迷いなんて吹っ飛んじゃうはずだけどね。

なんたってオレ様に匹敵する個性的な車は、他に存在しないのだから。
 

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ルノー アヴァンタイム(初代)×全国
文/夢野忠則 写真/ルノー、フォード、メルセデス・ベンツ
夢野忠則

ライター

夢野忠則

自他ともに認める車馬鹿であり、「座右の銘は、夢のタダ乗り」と語る謎のエッセイスト兼自動車ロマン文筆家。 現在の愛車は2008年式トヨタ プロボックスのGT仕様と、数台の国産ヴィンテージバイク(自転車)。