鋭いハンドリングとパワーで、セダンの実力を世界に見せつけるBMW M3【Back to Sedan】
2021/04/12
▲車好きにとっての終着点。それがセダン。最もオーソドックスなスタイルにして、最もバリエーションが豊富なセダンの中から名車たちを紹介。今回はモータースポーツ直結の技術をふんだんに取り入れ、落ち着いたルックスながらも恐ろしいほどの速さを秘めるマシン。BMWを代表するスポーツセダンのM3を取り上げるサーキットを走るために作られた本気のパフォーマンスカー
2021年1月、6世代目となる新型M3(G80型)が国内でも発表された。この代では、ついに最高出力は500psを超え、駆動方式はFRだけでなく、M3初となる四輪駆動モデルの導入が予定されている。ここであらためてM3の歴史を振り返ってみる。
そもそもBMW のMモデルにある「M」の文字は、1972年に設立されたレース部門である「BMW モータースポーツ」社をルーツとし、“モータースポーツ”を意味するものだ。現在は「BMW M」社と社名を変更して、モータースポーツ用車両と高性能量産車の開発を並行して行っている。
そしてBMW M社が開発を手がける最新のMモデルには、2つのカテゴリーがある。ひとつはサーキット走行を前提とした最速仕様の「Mハイ・パフォーマンス・モデル」、もうひとつはサーキットで培われた技術を取り入れた高性能版の「Mパフォーマンス・モデル」。新型M3は前者のMハイ・パフォーマンス・モデルに位置付けられるものだ。
Mモデルのすごさを証明した初代M3
▲80年代らしい角張った「セダン型」のクーペボディは、ブリスターフェンダーを装備する専用設計1986年、初代M3(E30型)が登場。ブリスターフェンダーや大型のリアスポイラーを特徴とし、ドイツツーリングカー選手権(DTM)をはじめとする欧州のツーリングカー選手権や、日本国内のGT選手権でも活躍し人気を博した。現在、中古車は超希少で、程度のいいものはプレミア価格で取引されており、カーセンサーでもめったに見かけることはない。
▲搭載される2.3L直列4気筒エンジンは、M1に搭載された直列6気筒エンジンをカスタムしたもの。195ps/229N・mの出力を誇る。見た目は控えめも直6エンジンで武装した激速モデル
▲バンパーやスカートなどのエアロパーツは控えめとなった。ベースの3シリーズにM専用エアロパーツを装備し販売された時期もあった1992年、2代目M3(E36型)がデビュー。初代が4気筒エンジンだったのに対して、この代より直列6気筒エンジンが搭載されるようになった。ボディタイプは2ドアクーペだけでなく、4ドアセダンがラインナップされた。また、本国にはカブリオレもあった。
前期型が3Lの5速MT、1995年以降の後期型は3.2Lまで排気量を拡大した6速MT、または6速セミオートマチックのSMG(シーケンシャルMギアボックス)を組み合わせていた。中古車は前期後期ともに少ないながらも流通しており、程度によって車両本体価格はばらつきがあるが前期であれば200万円台から見つかることも。
▲F1由来のトランスミッションや可変バルブ機構のVANOSシステムなど、当時の最新技術を挑戦的に採用している。最高出力は321ps、トルクは320N・mを発生させる▼検索条件
BMW M3「E36型」 × 全国制御システムの一新や軽量化を図るもセダンはなし
▲E36で用意されていた4ドアセダンはこの世代では採用されず、2ドアモデルのみのラインナップとなった。本国ドイツではカブリオレも用意されていた2000年、3代目M3(E46型)がデビュー。3.2L直6エンジンを搭載し、トランスミッションは6速MT、または6速セミオートマチックのSMGⅡを組み合わせていた。2003年には70年代に活躍した3.0CSLの名を継いだM3 CSLが登場。CSLは「Coupe Sport Leichtbau(クーペ、スポーツ、軽量構造)」を表し、ルーフなどにCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を採用し、110kgの軽量化に成功。ニュルブルクリンク北コースで、当時としては驚異的な7分50秒を記録。世界で1383台が販売された。
この代の中古車は車両本体価格200万円台から流通しており、トランスミッションはMTだけでなくSMGⅡも見つかる。CSLは希少なためほとんど流通していない。
▲剛性と耐久性を大幅に向上させたためE36より約100kgの増量となった。しかし、サスペンションセッティングによって、サーキット走行での優位性は損なわれていない▼検索条件
BMW M3「E46型」 × 全国高回転型軽量V8エンジンを搭載した異端児
▲カーボンルーフ搭載のクーペと比べ、少し控えめな印象を受けるセダン。しかし、スロットルを踏み込めばレーシングマシンへと変貌するその素性は、正真正銘のMモデル2007年、4代目M3(セダンE90/クーペE92型)がデビュー。この代よりエンジンが、軽量な4L自然吸気V8になった。このV8エンジンは8400回転まで一気に吹け上がり、最高出力は一気に420psに到達した。トランスミッションは、6速MTまたは7速DCT。4代目も本国ではカブリオレが設定されていた。
中古車相場は程度によるが、車両本体価格は300万円前後から。ボディタイプはクーペがメインだが、セダンもそれなりに流通している。また、後期型に設定された特別仕様車、フローズン・シルバー・エディションやDTMチャンピオンエディションなどの希少車も見つかる。
▲V8エンジンに6速MTのセダンというパッケージングは、当時でも希少な存在だった。▼検索条件
BMW M3「E90型」 × 全国伝統の直6がターボに進化しカムバック!
▲BMWの売りでもあるハンドリング性能は、油圧式から電子式パワステに変更されたことで味わいが変わっている。コントロール性は実感できるほどに向上しているが、ダイレクト感が減ったというファンも少なくない2014年、5代目M3(F80型)がデビュー。M3のボディタイプはセダン、クーペはM4となりすみ分けがなされた。また、先代で物議を醸したV8エンジンは、ふたたび直6エンジンへと置き換えられ、M3初のターボチャージャーを搭載。最高出力は431psを誇る。
また、トラスミッションはMTが廃止となり(M4には設定あり)、7速DCTのみとなった。中古車の車両本体価格は500万円前後から流通しており、700万~800万円の予算があれば、後期型の認定中古車を探すことも可能だ。
▲フロントサイドパネルやルーフ、またサスペンションなどもカーボン素材を多用することで、軽量化を実現している
▲新たに追加のラジエターを装着し、ターボには本格的な冷却機構を設置。サーキットでの走行性能を格段に向上させている▼検索条件
BMW M3「F80型」 × 全国歴代M3は、スタイリング、ダイナミクス性能、機能性とそれぞれ時代にあった最適なバランスを具現化したモデルだ。自分好みの1台を探すのは、悩ましくもとても楽しいはずだ。
【関連リンク】
あわせて読みたい
メルセデスの名車に乗る|W201型からSLS AMGへ。“ネオクラとAMG覚醒”をいま読み解く【カーセンサーEDGE 2026年1月号】
優先すべきはヘリテージか 経済効率? マセラティのモデナ回帰にみるブランドの価値とは【スーパーカーにまつわる不思議を考える】
古い車って本当のところどうなの? 個性的な1台を狙うなら中古車に限る!【中古車購入実態調査】
3代目BMW X1が支払総額400万円台で狙える! 中古車市場に登場してから2年半、今のオススメの買い方・選び方は?
R32型 スカイラインGT-Rが50万円から? あの時買っときゃ良かった……のモデルを振り返り“後悔を楽しむ”
新型CX-5が待ちきれないあなたに贈る「納車までの期間、代わりにコレどうですか?」5選
“いまは”日本未導入のGAC(広州汽車集団)AION Y Plusに試乗してきた!
プロショップで聞いた600万円前後で狙える初代 ポルシェ マカンのリアル! 狙うは前期型の高性能グレードか? それとも後期型のベーシックグレードか?
トヨタ センチュリーがブランド化! クーペタイプも公開された今、改めて歴代モデルを振り返ってみよう!
600万円台で買えるアストンマーティンはアリか? プロフェッショナルに聞いてきた真実!









