ホンダ シビックタイプR ▲「絶対欲しい!」と思えるスペックで登場したと思ったら、あっという間に受注一時停止となり、受注再開のめどは立っていない新型ホンダ シビックタイプR。受注再開と納車を数年間(?)待つのもいいですが、「そんなに待てないよ!」という場合に、新型タイプRの“代わり”として買うべきモデルはどれなのでしょうか? もろもろ検討してみましょう!

新型シビックタイプRの新車は、単純計算で「4年待ち」になってしまう可能性も?

最高出力330psの2L直4直噴ターボエンジンにレブマッチングシステム付き6速MTを組み合わせた「究極のFFスポーツ」である現行型・6代目ホンダ シビックタイプRが、2022年9月1日に発売された……わけだが、あっという間に「受注一時停止」となってしまった!(※2023年5月10日時点、公式サイトの情報です)

受注再開のタイミングと今後の納期がどうなるか、今のところまったくわからない。

今年1月に受注一時停止となった段階で抱えていたオーダー数が2万台以上で、6代目シビックタイプRの月間生産量はわずか400台なので、単純に考えると「4年待ち以上」という恐ろしい計算になってしまう。

ホンダ シビックタイプR▲こちらが新型ホンダ シビックタイプR

この単純計算が正しいかどうかは別として、「さすがに何年間も待つのはちょっと無理!」というのが大方の心理であるはず。

つまり今、我々は6代目ホンダ シビックタイプRの新車をオーダーするのはそれこそ「一時停止」し、何か別の、6代目シビックタイプRと性能的にも価格の面でも、そして存在感においても近しいモデルを探さねばならないのだ。

だが……究極にして最新のFFスポーツである6代目ホンダ シビックタイプRとほぼ同等に満足できる車など、果たしてあるのだろうか?

難しい問いではあるが、考えてみることにしよう。

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ホンダ シビックタイプR(現行型)/ルノー メガーヌR.S.(現行型)後期型/トヨタ GRヤリス(現行型)RZ系グレード/スバル WRX STI(初代)/ホンダ シビックタイプR(3代目)× 全国
 

代替案①:現行型シビック イプRの中古車を買う
→想定予算|総額600万~680万円

新車で買うことはほぼ不可能になった(というか正確には、長期にわたって待つ必要が生まれてしまった)6代目シビックタイプRではある。だが世の中、命と健康と愛以外のたいていの問題は「カネ」で解決することができる。

つまり「プレミアム価格が乗っかっているのを承知でカネを払う」という覚悟と意気込みさえあれば、6代目ホンダ シビックタイプRの“ほぼ新車同様の中古車”を、今すぐ購入することは普通に可能なのだ。
 

ホンダ シビックタイプR▲若干割高なれど、割と普通に中古車が流通している新型シビックタイプR。写真のボディカラーは「レーシングブルー・パール」

具体的には2023年5月上旬現在、6代目シビックタイプRの“ほぼ新車同様の中古車”は全国で約50台流通している。本来の新車本体価格は499万7300円だが、出回っている中古車の車両価格は550万~800万円といったところで、支払総額は560万~820万円というイメージだ。

普通に新車が買えるのであれば総額500万円台半ばぐらいでイケるものに700万円も800万円も払うのは業腹ではあるが、背に腹は代えられないというか「それでも構わない!」という考え方も、世の中には存在するだろう。価値観と美意識、そしておサイフ事情は人それぞれである。

ちなみに、シビックタイプRの王道ボディカラーである「チャンピオンシップホワイト」の物件は比較的高値となる傾向があるが、「レーシングブルー・パール」であれば総額600万円台でイケる場合も多い。まぁそれでも割高は割高なのだが……。
 

ホンダ シビックタイプR▲新型シビック タイプRのパワーユニットは、ターボチャージャーの刷新などにより先代比10ps増の最高出力330psをマークする2L直4直噴ターボエンジン。スポーティなエンジンサウンドを演出する「アクティブサウンドコントロールシステム」も搭載されている
ホンダ シビックタイプR▲トランスミッションは「究極のシフトフィール」を目指したというレブマッチングシステム付きの6速MT

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ホンダ シビックタイプR(現行型)× 全国
 

代替案②:現行型ルノー メガーヌR.S.後期型の中古車を買う
→想定予算|総額450万~520万円

ありがちな代替案ではあるが、「世界最強FF車」の座をホンダ シビックタイプRと激しく競っているフランスの雄、ルノー メガーヌR.S.の現行型中古車を買うというのは、最も現実的なプランだろう。
 

ルノー メガーヌ▲「ニュル最速FF車」の座をシビックタイプRと競い続けているルノー メガーヌR.S.の現行型後期モデル

四輪操舵の「4コントロール」や、ダンパー内にセカンダリーダンパーを組み込んだ「HCC」などが大いに魅力的な現行型メガーヌR.S.ではある。だが前期型の1.8L直4ターボエンジンの最高出力は279psと、6代目シビック タイプRの同330psと比べてしまうと若干見劣りする。

かといって同300psをマークするハイパフォーマンスバージョン「メガーヌR.S.トロフィー」の乗り心地は一般道ではいささか硬く、ノーマルモードにおいてはしなやかさすら感じる6代目シビックタイプRのように使うことは難しい。

しかし、2021年1月28日以降のマイナーチェンジ版であれば、素のR.S.のエンジンもトロフィーと同じ最高出力300psに進化しており、一般道での乗り心地もよい。

代替案としては悪くない話であり、中古車価格も総額450万~520万円と、この種の車としては“手頃”だ。
 

ルノー メガーヌ▲2021年1月28日以降のメガーヌR.S.の運転席まわり。アルカンターラとナッパレザーで仕立てられたステアリングホイールもシブい。写真は左ハンドルの本国仕様

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ルノー メガーヌ(現行型)×R.S.× 2021年1月28日以降生産×全国
 

代替案③:トヨタ GRヤリス RZの中古車を買う
→想定予算|総額410万~560万円

6代目ホンダ シビックタイプRは、バリバリの世界最強FFスポーツでありながら「ほどよいサイズの4枚ドア車」でもあるため、その気になれば実用的に使うこともできる素晴らしい1台だ。

そのあたりの特徴がちょっと異なってしまうのだが、もしも「自分は2ドア(3ドア)でも構わない!」「ボディサイズが小さめでもOK!」「FFより4WDの方がむしろ安心!」というのであれば、トヨタ GRヤリス RZまたはRZ“ハイパフォーマンス”の中古車が、6代目シビックタイプR不在の穴を上手に埋めてくれるだろう。
 

トヨタ GRヤリス▲3気筒ではあるものの、そのネガはほとんど感じさせない超絶エンジンを搭載するトヨタ GRヤリス RZ

ご承知のとおりトヨタのコンパクトカー「ヤリス」をベースに開発されたスポーツマシンであるGRヤリスは、全長3995mm×1805mm×1455mmの超絶強化されたボディに、RZ系の場合は最高出力272psの1.6L直3直噴ターボエンジンと6速MTを組み合わせた1台。

そのエンジンはアイドリング近辺ではかなりおとなしい印象だが、アクセルペダルを踏み込めば、レブリミッターにブチ当たる7200rpmまで一気呵成に、どエラいパワー感でもって吹け上がる。

アクティブトルクスプリット4WDは、ドライブモードが「ノーマル」時の前後トルク配分こそ60:40だが、「スポーツ」では30:70になり、「トラック」では50:50に。さらに「RS“ハイパフォーマンス”」にはトルセンLSDも付く。

6代目シビックタイプRとは毛色もサイズも、そしてエンジンの気筒数や駆動方式も異なるが、「気絶するほど(?)ファンな走りが堪能できる」という意味では比較的近しい存在といえるのが、トヨタ GRヤリスのRZ系だ。うっかり間違えて1.5L直3NA+CVTの「RS」を買わないように気をつけさえすれば、大いに満足できるだろう。
 

トヨタ GRヤリス▲1.6L直3ターボエンジンに組み合わされるのは6速MTのみ。「iMT」スイッチを押すと、シフトダウン時に自動的にエンジン回転数を合わせてくれる

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トヨタ GRヤリス(現行型)× RZ系グレード×全国
 

代替案④:スバル WRX STIの最終型中古車を買う
→想定予算|総額500万~600万円

代替案③としてフルタイム4WDのトヨタ GRヤリス RZを挙げた。つまり「FFじゃなくても良し!」としたからには、コレも候補に入ってくるだろう。フルタイム4WDのセダンボディに、伝統のEJ20型2L水平対向4気筒ターボエンジンを組み合わせたスバル WRX STIの最終型である。
 

スバル WRX▲2L水平対向4気筒ターボエンジン+フルタイム4WDとなるスバル WRX STI。写真はアプライドFまたはF型と呼ばれる2019年5月以降の世代

6代目シビックタイプRの購入を真剣に検討しているコアな車好き各位には今さらな話だろうが、最終型スバル WRX STIは、もともとは「スバル インプレッサWRX」としてスタートした4WDスポーツセダンの末裔として2014年8月に登場。

搭載エンジンは最高出力308psのEJ20型2L水平対向4気筒ターボで、従来モデルと同じユニットではあるが、より緻密なECU制御を採用することで加速レスポンスを大幅に向上。

トランスミッションは6速MTのみで、駆動システムはセンターデフに機械式と電子制御式の2つのLSDを組み込んだフルタイム4WD。基本的な前後軸間のトルク配分は前41:後59で、任意で3種類のLSDの制御モードを選択できる「マルチモードDCCD」システムを標準装備した。

そんな最終型WRX STIのうち、2018年7月に500台限定で登場するも1日で完売した「タイプRA-R」(最高出力329ps)や、最後の年次改良が加えられたアプライドF(2019年5月~)の低走行中古車であれば、6代目シビックタイプRに匹敵する感動を日々覚えることが可能になるだろう。

中古車価格は、タイプRA-Rは総額650万~750万円と少々お高いが、「EJ20ファイナルエディション」を除く最終世代であるアプライドFであれば総額500万~600万円といったニュアンスだ。
 

スバル WRX▲スバル WRX STI(F型)のコックピット。2018年6月登場のE型から、運転支援システム「アイサイト」のプリクラッシュブレーキ制御が改良されている

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スバル WRX(初代)×× STI系グレード×全国
 

代替案⑤:いっそ「3代目シビックタイプR」を探す
→想定予算|総額360万~490万円

ここまでに計4つの代替案を提示してきたものの、自分で挙げておきながらアレだが、どれもしっくりこないような気がしている。

いや、挙げさせていただいた4車種はどれも素晴らしい車だと確信はしているが、「……本当にシビックタイプRの代わりになるのか?」と真顔で問われれば、目をそらしてしまいそうな自分もいる。

やはりホンダ シビックタイプRの代わりは、シビックタイプRにしか務まらないのでは?
 

ホンダ シビックタイプR▲新型シビック タイプRのテイストと存在感は、やはり代替不能……なのか?

とはいえ、6代目の新車は今や買うことができず(というか受注停止になっており)、代替案①として挙げた「6代目の中古車」は、プレミアム価格が乗っかっている点においていささか納得しかねる部分もある。

かといって先代シビックタイプR(5代目=FK8型)の中古車は……かなり素晴らしい車ではあることは間違いないが、現行6代目と年代が近いがゆえに、それを買ってしまうと逆に現行型への未練が募ってしまいそうな気もする。

……となれば、「現行FL5型とはまったく異なるキャラと特性を備えたシビックタイプRの中古車」を買うことこそが、この場合の最適解なのかもしれない。キャラがまったく異なれば、未練を募らせることなく「これはこれで現行型以上に素晴らしいかも!」と、心の底から思えそうだからである。

では「現行FL5型のキャラ」とは何か?

それは、ざっくり言うなら「ターボエンジンであり、ノーマルモードにおいては非常に洗練された乗り味である」ということになるはずだ。かなりざっくりだが。

であるならば、それとは真逆のキャラを備えたシビックタイプRはどれになるのか?

……それはもう3代目、2007年から2010年にかけて販売された、「サーキット・ベスト」とのコンセプトで開発されたFD2型シビックタイプRしかない。
 

ホンダ シビックタイプR▲こちらが「最後の自然吸気エンジン搭載シビックタイプR」である、FD2型こと3代目のホンダ シビックタイプR
ホンダ シビックタイプR▲3代目シビックタイプRのコックピット。REVインジケーター付きのレッド照明専用メーターパネルがシブい。ちなみに6速MTのシフトレバーは、ベースモデルのそれよりも10mm低く設定されている
ホンダ シビックタイプR▲「サーキット・ベスト」というコンセプトのもと、KA20A型DOHC i-VTECエンジンはサーキットでよく使われる回転域で最適なトルクが発生するようにチューニングされている。「世界最高の2L自然吸気エンジン」と評しても、決して大げさではないだろう

4代目以降のシビックタイプRはターボエンジンを採用し、特に現行6代目のそれはパワフルであると同時に「洗練の極致」と言えるものになったが、こちら3代目はご存じKA20A型自然吸気エンジンを搭載した最後の世代。その切れ味はカミソリの如しである。

そしてきわめて快適な乗り心地となった現行型と違い、3代目FD2型のそれは鬼のように硬い。ちょっと内臓が痛くなる感じの硬さではあるが、「超絶スーパーコーナリングマシン」であることだけは間違いない。
 

ホンダ シビックタイプR▲高剛性なセダンボディと高性能なサスペンションを採用したことで、限界性能が高いハイパフォーマンスタイヤの使用が可能に。225/40R18のブリヂストン ポテンザRE070は専用開発品だ

これだけキャラクターが異なれば、現行FL5型に対しての迷いや未練など覚えようがないというか、「これはこれで最高のシビックタイプRだっっ!」と心の底から思えるはず。

比較的低走行で修復歴のない、ノーマルに近い3代目シビックタイプRの中古車価格は、総額で360万~490万円といったところ。決して安くはないが、現行型シビックタイプRという最高峰とはまた毛色が異なる“最高峰”を登頂するうえでは、決して高すぎる予算ではない。
 

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ホンダ シビックタイプR(3代目)× 全国
文/伊達軍曹 写真/ホンダ、ルノー、トヨタ、SUBARU、篠原晃一
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。