ランドローバー レンジローバースポーツ▲2022年5月に発表された3代目のレンジローバースポーツ。ディーゼルエンジンを搭載するカタログモデル(車両本体価格は1068万~1604万円)に加え、ガソリンエンジンのローンチエディション(1708万6000円)が160台限定で販売された

走りのテイストはほぼレンジローバー、若々しいスタイルの“弟”は効いたのか?

背の高い車が嫌いな理由は、ばかでかくて無愛想なスタイルもさることながら、身体と路面との間に(背の低い車に比べて明らかに)“柔らかい層”があって、左右に動くたびそれがぐらぐらと動く感じがどうしても好きになれないからだ。

昔に比べるとシャシー制御が進化したから、ぐらぐら感はかなり薄まってはきているけれど、それでも物理的なハイトの高さは一定の揺れを引き起こす。オフロードを走るためのそれは必要条件だったとはいえ、もはやオフロードを走るSUV乗りなんて世間にほとんどいない昨今、ただ単に見晴らしの良さと威圧感だけで好まれているのが現状だろう。まぁ、そんなことを前提として、背の低い車とはまた別種の“格好よさ”がそれぞれのモデルにはあるのだろうけれど。
 

ランドローバー レンジローバースポーツ▲エクステリアのデザインには継ぎ目や段差の少ないフラッシュサーフェスが用いられている
ランドローバー レンジローバースポーツ▲フロントオーバーハングを短く、前後ライトを薄くすることでスポーティなスタイルを強調している

それはさておき、SUV嫌いな筆者でもクロカン四駆の権化ともいうべきレンジローバーには最大限の敬意を払っている。自分で買うことはないだろうけれど、それでも欲しいと思わせるだけの魅力がある。つまり、ホンマもんだ。ランドローバー、ゲレンデヴァーゲン(メルセデス・ベンツ Gクラス)にトヨタ ランドクルーザー、そしてジープ ラングラーあたりは世間がSUVブームになる前から世界の第一線で活躍していた本物。何ならSUVなどと言って“なんちゃってな連中”(そんな格好なのにFFとか)と一緒くたにカテゴライズすること自体、おこがましい。

中でもレンジローバーは本格派の頂点でありながら、今や“真の高級車”としてSUV好きに限らず誰もが崇めたてる存在となっている。かくいう筆者も世界一の背高ラグジュアリーカーとして、特に新旧2世代を大いに高く評価した。SUV嫌いをして乗用車として最高と思わせるあたり、さすがは英国王室御用達ワランティというほかない。

レンジローバースポーツ、勝手に通称“レンスポ”はそんな本家レンジローバーの弟分で、初代こそランドローバーベース(ディスカバリー3と同じインテグレイテッドボディフレームを採用)だったけれど、先代からはレンジローバーのよくできたプラットフォームを共有することになった。つまりレンジローバーのおいっ子からホントの弟になったのだ。それでいて価格は兄貴から3割以上安い、となれば、自分でもし買うなら迷わずレンスポだと先代の登場時から思っていた。それに威風堂々すぎるレンジローバーのスタイルより、ルーフがリアに向かって下がっているレンスポの方が断然見た目に若々しい。
 

ランドローバー レンジローバースポーツ▲室内はレンジローバーよりスポーティな仕立て。13.1インチのタッチスクリーン式ディスプイに機能を集中させることでインパネまわりのスイッチ類を減らしている

最新モデルとなって兄と弟の差がさらに縮まったようだ。街乗りでちょっとハードかな、と思った以外、テイストはほとんどまるでレンジローバー。レンスポにはもう少し軽快な乗り味があってもいいように思うのだけれど、価格も上がった(ついに1000万円の大台超え)ことだし、そもそもこの手の高級車はモデルチェンジごとにより高級を目指すものだから、兄貴に近づくことがその第一歩だったとしてもおかしくない。

極論すれば、その走りはほぼ同等だと考えて、スタイルと価格だけで選ぶことになる。そうなればやはり自分で買うならレンスポだ。おそらく、筆者がSUVを買うことになったとき、超本格派を選ぶと思う。レンジローバースポーツは最大の候補になるという意味では、よいクスリだといえそうだ。
 

ランドローバー レンジローバースポーツ▲シート地はサステナブル素材のウルトラファブリックだけでなく、レザーもセミアリニン/グレイン/ウィンザーからもセレクトできる
ランドローバー レンジローバースポーツ▲後席は先代モデルよりレッグルームが31mm、ニークリアランスが20mm広くなった
ランドローバー レンジローバースポーツ▲床下にスペアタイヤが収納されるラゲージルーム。その容量は647L
ランドローバー レンジローバースポーツ▲トルクを予測配分するiAWDやアクティブロールコントロールシステム、四輪操舵システムなど走行性能を高める装備を採用。アクティブノイズキャンセレーションもさらに進化している

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文/西川淳 写真/ジャガー・ランドローバー・ジャパン

自動車評論家

西川淳

大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。