ホンダ NSX タイプS

これから価値が上がっていくだろうネオクラシックカーの魅力に迫るカーセンサーEDGEの企画【名車への道】

クラシックカー予備軍たちの登場背景や歴史的価値、製法や素材の素晴らしさを自動車テクノロジーライター・松本英雄さんと探っていく!

松本英雄(まつもとひでお)

自動車テクノロジーライター

松本英雄

自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。「クルマは50万円以下で買いなさい」など著書も多数。趣味は乗馬。

国産スポーツカーの最高傑作

——今回の車は間違いないです! なんたって、松本さんが以前絶賛していた国産車ですから!

松本 国産車で僕が絶賛していたというと、これしかないね。ずばり当てましょう、ホンダ NSX タイプR! だとすれば間違いなく名車だね。

——惜しい! 松本さん、この間カーセンサーの動画ロケで乗っていたじゃないですか。

松本 おお、NSXのタイプSだね。あれは最高だったよ!

——そのNSX、約20 年前の古い個体になりますがどうでした?

松本 ホンダからお借りしたモデルだからか、コンディションはパーフェクトだったよ。NSXの実力を確認するならば本当は箱根とかがいいんだけど、前回は首都高速試乗。でも、相変わらず「素晴らしい!」の一言だね。

——具体的に言うとどんな感じなんですか?

松本 まず乗り込んで感じるのは、キャビンが球面体のようで視認性がすごく良いこと。水平方向の視認性は約320度といわれていたから、相当視認性を意識して作っていたことがうかがえる。ティアドロップ型の球面体だね。高速を走るとよく分かるんだけど、風切り音が少ないんだ。新車当時も感動したね。

 

ホンダ NSX タイプS
ホンダ NSX タイプS

——最新型だった当時も試乗されているんですね。

松本 もちろんだよ。1990年の登場時に、2台だけの特別モデルという1台を運転させてもらったよ。感動したね。これが日本が作ったスーパーカーなのか! ってね。それに、アルミ合金のモノコックボディは、その時代としては本当に凄いの一言だったよ。当時のアルミ合金の技術書には、参考資料としてNSX のマテリアルナンバーが書いてあって、僕も懸命に勉強したことを思い出すなあ。6000番台と5000番台の違いとかね。この頃は僕もある先行開発の仕事に携わっていたから、様々なマテリアルの物性に関して本腰を入れて勉強していたんだ。

——勉強!? ただ遊んでいただけじゃなかったんですね(笑)。

松本 当たり前だよ(笑)。ホンダが思い切った素材を導入したのは、日本ではアルミの信頼性が高く、購入しやすい価格で大量生産されていたからなんだ。NSXはほとんどがハンドメイドだったということもあるね。ホンダは、少ない生産台数で他のスーパーカーを凌駕する性能と、1000万円を切るディスカウントプライスを武器に勝負したんだ。当時の国産スポーツカーでは最高額ではあったんだけどね。その頃のホンダってチャレンジングなところがあって、現在でいうとノリノリのトヨタGRのような雰囲気かな。

——ホンダ、凄いですね。

松本 この個体も製造後20 年が経過しているとは思えないクオリティだね。アルミ合金って柔らかいイメージがあるかもしれないけど、スチールと違ってスプリングバックが少ないから構造物になると剛性が高いんだ。

——へぇ……。そうなんですね。

松本 スポット溶接って、鉄板同士に電極を繋ぎとてつもない圧力をかけた電気を流すことで一瞬で溶かして接着する技術なんだけど、アルミ合金のスポット溶接はスチールに比べて2.5倍ほどの電気が必要だから、設備投資も大変だったんじゃないかな。スポット溶接なら素材のアルミ合金のポテンシャルが大きく変わらないから、それが劣化しにくい要因の一つかもしれないね。

——ホンダは、どんな車を目指してNSXを作ったんでしょうか?

松本 有名な話だけど目標としたモデルはフェラーリ 328 、その後は348を手本にしたといわれているね。328も348も乗ったことがあるけど、NSXの方が乗りやすいよ。特に視認性。こだわっただけあるね。クラッチの扱い方も楽なイメージだね。インテリアはスーパーカーでありながら奇をてらわないデザインで、質感の良さを追求した雰囲気なんだよ。ステッチの雰囲気なんかは当時のフェラーリに似ているね。日産は、R35型のGT-Rを開発した時にフェラーリのステッチのピッチを学んだそうだけど、ホンダがそのテイストをNSXに採用しているところを見ると、開発当時に何台もフェラーリを購入して研究していたんじゃないかな。まさに、車名の「New Sportscar X」の意味が理解できたモデルだね。

 

ホンダ NSX タイプS

——乗り心地や走りはどうです?

松本 サスペンションセッティングの個人的な好みは荒々しいタイプRの方だけど、タイプSはもっと洗練された感じ。3.2L V型6気筒自然吸気エンジンは扱いやすく、すこぶるレスポンシブだけどまったく神経質ではない。ホンダのお家芸ともいえるVTECエンジンは、高回転へ上昇する途中でさらに空気の流入を増やす高回転型のバルブタイミングに移行させる仕組み。一瞬のトルクの谷があって、そこから一気にパワーが出るんだけど、そのときの甲高いエンジン音が最高なんだよ。箱根あたりの山の中で聞くともうしびれちゃう(笑)。シフトフィーリングも最高だしね。MTに乗れてよかったって誰もが思うんじゃないかな。一気にエクスタシーへと誘う、魔法の素養がこのエンジンにはあるんだ。

——まさに、松本さんの大好物系じゃないですか(笑)。ではタイプSは?

松本 タイプSはベースモデルよりもセッティングが凛としている印象かな。さらに攻め込みたくなるハンドリングで、今のスーパーカーは低速域から超高速域まで一気に速度が出てしまうんだけど、タイプSは低速域から超高速域までストレスフリーで乗れる。街中の走行でも楽しく、ワインディングでは確実に路面を捉えるからステアリングに集中できる。それでいて轍があっても神経質になることはない。こんなスーパーカーは現在には存在しないよ。まさしく、“日本の隙のある文化”が作った最高傑作のスポーツカー。名車以外の何者でもないのがNSXであり、タイプSはそれを極めたハンドリングマシン。ホンダ車には今でもそのDNAが流れていると信じたいね。いつの時代でも、乗れば感動するモデルこそがダイナミックレンジな名車なんだと思うな。これ以上の感動を与えてくれる国産スーパースポーツカーがあったら教えてほしいくらいだよ。

 

ホンダ NSX タイプS

1990年に登場した、ホンダ初のスーパースポーツ。量産車世界初となるオールアルミボディを採用し、高回転型3L NAエンジンをリアミッドに搭載した。誰もが運転しやすい操縦性など、ヒューマン・オリエンテッドをコンセプトに開発されている。1997年にはエンジンを3.2Lに変更、2001年のマイナーチェンジでリトラクタブルヘッドライトが廃止された。

ホンダ NSX タイプS
ホンダ NSX タイプS

※カーセンサーEDGE 2025年1月号(2024年11月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています

▼検索条件

ホンダ NSX、NSX-R× 全国
文/松本英雄、写真/岡村昌宏

【試乗車 諸元・スペック表】
●3.2 タイプS

型式 ABA-NA2 最小回転半径 5.8m
駆動方式 MR 全長×全幅×全高 4.43m×1.81m×1.16m
ドア数 2 ホイールベース 2.53m
ミッション 6MT 前トレッド/後トレッド 1.51m/1.54m
AI-SHIFT - 室内(全長×全幅×全高) 0.92m×1.46m×0.98m
4WS - 車両重量 1320kg
シート列数 1 最大積載量 -kg
乗車定員 2名 車両総重量 -kg
ミッション位置 フロア 最低地上高 0.13m
マニュアルモード -    
標準色

セブリングシルバーメタリック、シルバーストーン・メタリック、ベルリナブラック、ニューフォーミュラレッド、グランプリホワイト、ニューインディイエロー・パール

オプション色

プラチナホワイト・パール、モンツァレッド・パール、ニューイモラオレンジ・パール、ロングビーチブルー・パール

掲載コメント

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型式 ABA-NA2
駆動方式 MR
ドア数 2
ミッション 6MT
AI-SHIFT -
4WS -
標準色 セブリングシルバーメタリック、シルバーストーン・メタリック、ベルリナブラック、ニューフォーミュラレッド、グランプリホワイト、ニューインディイエロー・パール
オプション色 プラチナホワイト・パール、モンツァレッド・パール、ニューイモラオレンジ・パール、ロングビーチブルー・パール
シート列数 1
乗車定員 2名
ミッション
位置
フロア
マニュアル
モード
-
最小回転半径 5.8m
全長×全幅×
全高
4.43m×1.81m×1.16m
ホイール
ベース
2.53m
前トレッド/
後トレッド
1.51m/1.54m
室内(全長×全幅×全高) 0.92m×1.46m×0.98m
車両重量 1320kg
最大積載量 -kg
車両総重量 1845kg
最低地上高 0.13m
掲載用コメント -
エンジン型式 C32B 環境対策エンジン -
種類 V型6気筒DOHC 使用燃料 ハイオク
過給器 - 燃料タンク容量 70リットル
可変気筒装置 - 燃費(10.15モード) 9km/L
総排気量 3179cc 燃費(WLTCモード) -
燃費基準達成 -
最高出力 280ps 最大トルク/回転数
n・m(kg・m)/rpm
304(31)/5300
エンジン型式 C32B
種類 V型6気筒DOHC
過給器 -
可変気筒装置 -
総排気量 3179cc
最高出力 280ps
最大トルク/
回転数n・m(kg・m)/rpm
304(31)/5300
環境対策エンジン -
使用燃料 ハイオク
燃料タンク容量 70リットル
燃費(10.15モード) 9km/L
燃費(WLTCモード) -km/L
燃費基準達成 -

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