フォルクスワーゲン ゴルフ ▲フォルクスワーゲングループジャパンが国土交通省に届け出た7速DSGに関する大規模リコール案件。大枚を払って自腹で修理した人は怒りに燃えていることだろう。だが「これから買う人」にとってみれば、申し訳ないがチャンスと言えるのかもしれない……。写真は現行型フォルクスワーゲン ゴルフ

明らかに安いが、オススメはできなかったDSG搭載車

フォルクスワーゲグループジャパンは8月21日、変速機「7速DSG」に関連する30車種計17万6068台の大規模リコールを国土交通省に届け出た。

今回のリコールが発表される以前に、自腹で数十万円かけて7速DSGを直したという人もいるだろう。またDSGの不具合が原因で、泣く泣く愛車を手放したという人もいるかもしれない。

そういった方々の心痛や怒りに対しては「ホント大変でしたよね、悔しいですよね。……心よりお見舞い申し上げます」と申し上げたい。

だが同時に、恐縮しつつも次のことに気づいてしまった。

「もしかして今この瞬間、中古のフォルクスワーゲンってけっこうな買い時が到来したのではないか?」と。

ここ最近のゴルフ7(現行フォルクスワーゲン ゴルフ)やポロ5(先代フォルクスワーゲン ポロ)の中古車は、ことプライスの点だけで言えば明らかに「オススメ」と言える状況だった。

なにせゴルフ7で言えば走行少なめの物件を総額100万円程度から狙うことができ、ポロ5に至っては総額50万円前後から低走行物件を探すことができたのだ。そのクオリティから考えれば「めちゃめちゃお買い得」としか言いようがない。

だが物事はすべて、光があれば影もある。そして当然ながらこの爆安っぷりにも理由があった。

DSGと呼ばれるツインクラッチ式トランスミッションの信頼性がいまひとつだったのだ。

フォルクスワーゲン 7速DSG▲1.2~1.4Lエンジンを採用するフォルクスワーゲン各車に搭載される「7速DSG」のシフトレバー付近。もちろん問題があったのはレバーではなく、DSG内部のメカトロニクスに関係する部品だが

すべてのDSGがぶっ壊れまくったわけでは決してなく、特に「湿式6速DSG」という上級グレードに採用されたDSGは割と問題なかった。だが「乾式7速DSG」という小排気量モデルに採用されたトランスミッションで、不具合報告が相次いでいたのだ。

不具合の内容は「ジャダー(激しい振動)が出る」とか「走行不能になる」といったもの。で、それは新車の保証期間内であればディーラーにて無償の修理が行えたのだが、保証期間が終了した個体に関しては有償となる場合が多かった。そしてその費用は「数十万円レベル」であったのだ。

前述のとおり、すべてのDSG搭載車がそのようにぶち壊れたわけではない。だがそういった結構なリスクをはらんでいる中古車を「安いから」というだけで安易にオススメすることはできない。

そのため「100万円以下で買えるオススメ輸入車特集!」みたいな企画においては常にゴルフやポロ、あるいは他のDSGを採用するフォルクスワーゲン車は残念ながら除外さぜるを得なかったのだ。個人的には。

フォルクスワーゲン ゴルフ7▲ちなみにこちらがゴルフ7こと現行型フォルクスワーゲン ゴルフ。TSIトレンドラインとTSIコンフォートラインは1.2L、TSIハイラインは1.4Lのターボ付きエンジンを搭載している
フォルクスワーゲン ポロ5▲こちらはポロ5こと先代フォルクスワーゲン ポロの後期型。ゴルフよりも若干小ぶりなコンパクトハッチバックで、2018年2月まで販売されていた。中心グレードのエンジンは1.2Lのターボ付き

対象全車両の製造ロットを確認。該当する場合は対策品に交換

しかし8月21日、フォルクスワーゲングループジャパンはやっと重い腰を上げた。

7速DSGに不具合があることを認め、2008年4月28日~2016年3月14日に輸入されたポロやゴルフなど計30車種17万6068台のリコールを国土交通省に届け出たのだ。

報告された不具合の内容は、7速DSGの「メカトロニクス」と呼ばれる部分のアッパーハウジングに不適切な箇所があり、そこの耐久性が不足しているものがある。そして疲労の蓄積によってそこに亀裂が入り、最悪の場合はアッパーハウジング内の油圧が低下して走行不能になるおそれがある――というものだ。

そして約束された改善措置は、リコール対象となる全車両のアッパーハウジングの製造ロットを確認し、該当する場合はアッパーハウジングを対策品に交換するというもの。

……この対策が施されれば、1.2Lや1.4Lのゴルフやポロに採用されている乾式7速DSGであっても、おそらくはまったく心配なくなる。

あえて「おそらく」と言ったのは、「その対策で大丈夫だって信じていいの?」という部分がいまひとつ未知数であるからだ。

しかし、大フォルクスワーゲンが巨額の費用をかけてリコールをするのだから、「やってみたけどダメでした。なのでもう1回リコールしま~す」などというマヌケな真似はしないはず……と推測するのが合理的であろう。つまり「たぶん大丈夫!」ということだ。

フォルクスワーゲン ゴルフ7▲「対策品に換えましたが、やっぱりダメでした」なんてことはないと信じたい……。写真はゴルフ7

DSG問題は解決し、「お値打ちプライス」だけが残った

現在、中古車販売店の店頭や倉庫にある対象車のリコール作業が、いつ行われるのかはわからない。つまり、その車両を販売する前にとっととディーラーに入庫させてリコール作業を受けるのか? それとも、買う人が現れて契約が締結された後に、納車整備の一環としてリコール作業を受けるのか?

あるいは「ご納車後にお客様ご自身で正規ディーラーに連絡し、リコール作業を受けてくださいね」なんていうケースも、もしかしたら「現状渡し」みたいなパターンにおいてはあるのかもしれない。

そこについてはわからないが、とにかく結論としては「DSG問題は(たぶん)解決した」ということである。

そしてもうひとつの結論として、「しかし今、超格安プライスが付けられたままのゴルフ7やポロ5が多数、市場に存在している」というのがある。

それらの具体的なプライスは、前述のとおりゴルフ7(現行型ゴルフ)の走行2万~3万km台の物件で総額100万円前後から。そしてポロ5(先代ポロ)の同じく走行2万~3万km台の物件で総額50万円ぐらいからというイメージ。

繰り返しになるが、本来のクオリティから考えればめちゃめちゃお買い得である。

フォルクスワーゲン ゴルフ▲コレ(現行型ゴルフ)の低走行物件が、総額90万円とか100万円ぐらいから
フォルクスワーゲン ポロ▲そしてコレ(先代ポロ後期型)の低走行物件が、総額50万円ぐらいから……!

今後、もしかしたらリコールを受けてアッパーハウジングが対策品に交換された7速DSG搭載の中古車は「相場が微妙に上がる」なんてこともあるかもしれないが、まあそこはわからない。何かを安っぽく煽るつもりはない。

だがとにかく今この瞬間、DSG問題のため不当なまでに安くなっていた高年式フォルクスワーゲン ゴルフおよびポロなどの中古車は、けっこうな注目に値するはずなのだ。

冒頭付近で申し上げたとおり、すでに自腹でDSGを修理した人や、DSGが原因でフォルクスワーゲン車を手放した人々の心痛や怒りは察するに余りある。また同タイプのトランスミッションを採用しているアウディ各車はどうするつもりなのよ? という疑問もなくはない。

だがそれでも、「これから買う人」に対してはこう申し上げるほかないのだ。

「100万円以下ぐらいの手頃な予算で高年式輸入車に乗りたいと思っていた人は、この機会に現行型ゴルフまたは先代ポロの中古車に注目してみてはどうでしょう?」と。

文/伊達軍曹、写真/フォルクスワーゲン

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伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。