トヨタ オリジン▲トヨタの国内生産累計1億台(!)記念事業の一環として発売されたのがオリジン。初代クラウンをモチーフにした気品あるモデルです

国内生産累計1億台を記念し初代クラウンのイメージを再現

最新のシャープなデザインよりも、レトロな雰囲気の車をユルく楽しみたい。こう考える人はいつの時代も一定数います。

今だと、旧車ブームを支えているファンや、中古車販売店が手がける、ビンテージ感を強調したカスタム車を好む人が増えています。

例えば光岡自動車は、ベース車両をレトロなスタイリングにしたモデルを製造しています。また、1980年代~90年代にかけてブームになった、パオやフィガロなど、日産のパイクカーは、現在でも多くのファンがいて、専門店も存在します。

そして、トヨタもかつて、クラシックな雰囲気を前面に打ち出したパイクカーを発売したことがあります。それが2000年7月に発表されたオリジンです。

そんなオリジンの気になる現在の中古車事情をお届けしますが、その前に、そもそもどんなモデルだったのか、振り返ってみましょう。

トヨタ オリジン▲ライトまわりやグリルなど、初代トヨペットクラウンの雰囲気を、現代風に蘇らせています

オリジンは、トヨタの国内自動車生産累計1億台達成を記念して製造されたモデルで、1955年に登場した、初代トヨペットクラウンをモチーフにデザインされました。

ベースとなったのは、1998年にデビューした小さな高級車、プログレ。そのため、全高は初代クラウンより70mmほど低くなりました。しかし、彫りの深い丸型ライトや高級感のある装飾が施されたグリルなど、当時のクラウンを見事に再現されています。

リアスタイルも、サイドにまで回り込んだリアガラスや縦長のテールランプで、初代クラウンが日本の道を走っていた、古き良き昭和の雰囲気を蘇らせました。

驚きなのはサイドビュー。トヨペットクラウンはリアドアが観音開きになっているのが特徴。オリジンはそれを再現し、一般的なヒンジ式であるプログレのリアドアを、観音開きにしているのです。

トヨタ オリジン▲リアドアは左右とも観音開きに。特別な雰囲気が漂います

これを、何万台もの販売が見込めるモデルでやっているならわかりますが、オリジンは、わずか1000台の限定車。累計1億台達成の記念事業ということもあり、普通ではありえないコストをかけて作っていることがうかがえます。

しかも、わずか1000台の限定生産ですから、専用の生産ラインを作ることはできません。そこでオリジンは、センチュリーの生産ラインで熟練の職人が手作業で組み上げていったといいます。

トヨタ オリジン▲伝統的な手法の縦パターンのデザインと玉縁を施した質感の高い意匠の高級本革シートを採用

オリジンの新車時価格は700万円。価格だけ見るとかなり高めの設定ですが、中身を知ると実は超バーゲンプライスであると言えるでしょう。

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見た目はレトロでも中身は当時の最先端

クラシカルな雰囲気のオリジンですが、中身は当時の最新モデルを使っているだけに、性能は当時の高級車に搭載されるものが惜しみなく使われています。

トヨタ オリジン▲搭載エンジンはプログレのNC300に搭載された3L 直6DOHC。トランスミッションは4ATになります

高剛性ボディと、四輪ダブルウィッシュボーンサスペンションを組み合わせて、滑らかな乗り味を実現。ボディ内部には吸音材を効果的に配置したことで、高い静粛性も確保されています。

現代の先進安全装備はさすがに搭載されていませんが、車両安定制御システム(VSC)、トラクションコントロール、ブレーキアシストなど、当時の最新システムが搭載されました。エアバッグは前席の他、サイドエアバッグ、カーテンシールドエアバッグが付いています。

他にも、先行車との車間距離をレーダーで計測し、適切な車間をキープしながら走行するレーダークルーズコントロール、カーナビからの情報を使って前方のコーナーを認識してシフトダウンを行う、ナビ協調シフト制御も搭載されました。

トヨタ オリジン▲ステアリングは本木目と本革を組み合わせたものに。ナビのモニターは7インチワイドディスプレイでポップアップ式になります

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デビューから20年経っても走行5万km以下の中古車が見つかる

2010年11月2日現在、オリジンは11台の中古車が流通しています。中古車の価格帯は250万~480万円。車両本体価格が700万円とはいえ、デビューから20年経っていることを考えると、わずか1000台しか流通していない車特有のプレミア相場になっていると言えます。

ただ、車の性格的にガンガン走るタイプの人が乗っていなかったのでしょう。最安値付近こそ、多少距離がかさんだ中古車があるものの、車両本体価格350万円以上だと走行5万km未満の中古車がほとんどです。

トヨタ オリジン▲オリジンの中古車は全体的に走行距離が少なめ。内外装の状態も良好なものが多くなります

流通している中古車は、ていねいに乗られてきたものが多く、掲載されている写真を見ても、すごくきれいな状態であることが伝わってくる中古車が多くありました。

また、累計1億台記念車で熟練職人により、ハンドメイドでていねいに作られていること、信頼感のあるプログレがベースであることを考えれば、ある程度距離を走っているものでも、心配する必要はないでしょう。

1000台限定のオリジンですが、デビューから20年経過していることもあり、現存している台数は減っているはず。今後ますます減っていくことが予想されるので、急激に値落ちすることは考えにくい状態。

デビューしたときに憧れた人、このスタイルがツボに入った人は、早めに購入した方がいいですよ!

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文/高橋満(BRIDGE MAN) 写真/トヨタ

高橋満(たかはしみつる)

自動車ライター

高橋満(BRIDGE MAN)

求人誌編集部、カーセンサー編集部を経てエディター/ライターとして1999年に独立。独立後は自動車の他、音楽、アウトドアなどをテーマに執筆。得意としているのは人物インタビュー。著名人から一般の方まで、心の中に深く潜り込んでその人自身も気づいていなかった本音を引き出すことを心がけている。愛車はフィアット500C by DIESEL