Aクラスセダン ▲古着の世界では「ニュービンテージ」なるジャンルが一部のファンに注目されているらしく、そのニュービンテージという考え方は「中古車」にも応用が可能であるとのこと。果たしてニュービンテージとはいかる概念で、それに該当する中古車とはどんなモデルなのか、ご紹介いたします!

古着業界で話題のジャンル「ニュービンテージ」を中古車に当てはめてみた

中古車ならぬ古着の世界で「ニュービンテージ」なる概念というかジャンルが今、けっこうな注目を集めている。

古着の世界では、年数がある程度経っており、保存状態の良い一定価値のあるアイテムのことを「ビンテージ」と呼び、それ以外の一般的な古着は「レギュラー」と呼ばれていた。これが、主に1990~2000年代の話だ。

しかし2020年代となった今。「レギュラー」というありがたみも重みも感じられない呼ばれ方をしていた1980年代以降の普通の古着が、「……今の視点で見ると実はシブいんじゃない?」という見方をされるようになった。

その結果として、1980~2000年代ぐらいの、価値が認められているとは言い難い、だけど今見ると妙にいい感じな古着が、今や「ニュービンテージ」として注目されるに至ったのだ。

そんな古着業界におけるこの話を聞いて、ふと思った。「ニュービンテージ」を車に当てはめると、どうなるだろう?

最近だと、年代の区切りに諸説あるが、1980~1990年代(場合によっては2000年代)に製造された「ネオクラシックカー」と呼ばれる中古車の中には、すでに価値が認められ、価格が高騰しているケースが多々ある。

一方、同じぐらいの年代に作られてはいるが、いまだ価値が認められておらず(ゆえに価格が過度に高騰することはなく)、だが妙にいい感じなモデルも存在する。

それこそが、「ニュービンテージな車」ではないだろうか。

Aクラスセダン▲なんということのない1980年代から2000年代頃の車が、歳月の経過とともに「妙に魅力的」「なんだか最近しっくりくる」と感じられることがある。例えば上の写真は8代目のトヨタ カローラ。この「何の変哲もない感じ」が、今となっては逆にレアで魅力的に感じられたりもする

そこでこの記事では、「1980年代から2000年代に作られた」「お安く手に入れることができる」「今見ると妙にいい感じ」という条件に当てはまる車を「ニュービンテージな車」と勝手に認定し、今こそ地味に(?)注目したい5モデルをご紹介しよう!

 

 

ニュービンテージな車その1|トヨタ カローラ(8代目)

ちょっと似ているブランド:GAP
販売期間:1995~2000年
中古車価格帯:総額35万~160万円

トヨタカローラ▲こちらが8代目トヨタ カローラ。前期型はそっけない黒の樹脂製バンパーだった。そこが逆にシブい
 

アパレルにおける「リーズナブルだけどハイクオリティ、世界の大定番&大人気ブランド」といえば「GAP」であり、GAPのそういったキャラはそっくりそのまま、世界で最も売れている大衆車である「トヨタ カローラ」のキャラであるとも言える。

ちなみに初代カローラの登場が1966年で、GAPの創業は1969年。そして8代目カローラが発売されたのが1995年で、GAPの日本1号店がオープンしたのも1995年ということで、そこにおいても両者はなんとなく近い(……ような気がする)。

現在、古着の世界では1990年代のGAP製品が「OLD GAP」としてけっこうな人気を博しているのだが、それに相当するカローラが、ここで紹介している8代目(1995~2000年)だ。

これの前身である7代目カローラ(1991~1995年)は、カローラとしてはかなりの上級化が図られた世代で、車としての出来もかなり良かった。当時、7代目を「名作!」と評価した人は多い。

それに対してこちら8代目は、バブル崩壊後の世相を反映して質素な(良くいえばシンプルな)作りとなり、前期型では補修や交換が容易に行える「無塗装の黒いバンパー」が採用された。

そのあたりが影響したのか、8代目トヨタ カローラはこれまでまったくもって名作扱いされてこなかった。だが、ほぼすべての新車がゴテゴテ&キラキラしたニュアンスになってしまった今、「シンプルの極み」を志向した8代目カローラこそが「逆にシブいかも?」と感じられるのだ。

 

Aクラスセダン▲レトロというほど古くはないが、「では今風か?」と問われれば否と答えるしかない、なんとも絶妙な塩梅といえる8代目カローラの運転席まわり

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ニュービンテージな車その2|ボルボ 850エステート(初代)

ちょっと似ているブランド:Polo ラルフ ローレン
販売期間:1993~1997年
中古車価格帯:総額65万~320万円

850エステート▲1993年に(当時は)新世代のボルボとして登場したボルボ 850エステート
 

それまではFRレイアウト(後輪駆動)の「土っぽい香りがする車」を作っていたスウェーデンのボルボが、新たにFF(前輪駆動)のプラットフォームを用いて開発したステーションワゴン。

比較的マス層をターゲットとしたモデルであるにもかかわらず、気品とスポーティなイメージおよび機能を兼ね備えているという意味で、アメリカン・トラディショナルの代表的存在である「ラルフ ローレン」の普及定番ラインである「Polo ラルフ ローレン」に近い1台といえる。

それまでの土っぽいボルボから大変身した850エステートは1990年代の日本でも大ヒットを記録したが、その後いつの間にか忘れられた存在に。しかし、この直線基調でありながらも微妙な曲面を交えた造形は、2020年代の車では出せない味わい。しっかりと整備された個体であれば、今となってはややプリミティブでダイレクトな走行フィールと、「他の人とカブらない」という希少性を堪能できるはず。

 

850エステート▲四角四面なニュアンスと微妙な曲面の融合が「90年代」を感じさせる

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ニュービンテージな車その3|ホンダ クロスロード(2代目)

ちょっと似ているブランド:mont・bell(モンベル)
販売期間:2007~2010年
中古車価格帯:総額45万~210万円

クロスロード▲こちらがホンダ クロスロード。コンパクトな7人乗りSUVだ
 

全長4.3m弱の小ぶりなボディに3列シートを組み合わせた7人乗りのコンパクトSUVとして、2007年に登場。ホンダが「スカルプチャル・タフ・フォルム」と呼んだクロスロードのデザインは、基本的にはスクエア基調でありながら、張り出したフェンダーアーチや切り落としたようなフロントランプ部分によって「ただの箱ではないぜ」といったニュアンスの主張を行った。

そのシンプルだが斬新なデザインゆえに「これは売れるんじゃないか?」とも思われたが、実際の売れ行きはパッとせず、発売から約3年後の2010年8月には早くも生産終了となってしまった。

しかし、その「派手さはない代わりに、流行り廃りにも影響されない」というニュアンスのフォルムとディテールは今なおけっこう魅力的であるというか、むしろ今だからこそ、このシンプルさが際立つはず。実際、最近は一部で微妙に人気を得ている模様だ。

「安心の国産製品」という部分と「クロスオーバーSUVとして十分な性能を持ち合わせている」「流行り廃りに左右されない力強いデザインである」という点において、これに近いファッションブランドは「mont・bell」だろうか。なんとなく「フランスの老舗アウトドアブランド」みたいなイメージもあるmont・bellだが、大阪で辰野 勇さんという人が創業したジャパニーズブランドである。

 

クロスロード▲なんともオーセンティックなニュアンスが強い、クロスロードのシンプルなサイドビュー。単純にカッコいいと思うのだが、新車時はなぜあまり売れなかったのか? 今となっては不思議だ

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ニュービンテージな車その4|日産 ラシーン(初代)

ちょっと似ているブランド:エディー・バウアー
販売期間:1994~2000年
中古車価格帯:総額35万~230万円

ラシーン▲ゴリゴリのオフローダーではない、シンプルな脱力系(?)としての味わいが強い日産 ラシーン
 

アメリカのシアトルでエディー・バウアー氏が1920年に創業したブランド「エディー・バウアー」。それは、ご承知のとおり野外での必要性に基づく機能的なアウターなどを得意とするアウトドアウエアのブランドだが、「アウトドアウエアと普段着の間を取ったようなブランド」であるとも言える。逆にそこが、エディー・バウアーの持ち味なのだ。

エディー・バウアーのそういったノリを有しているニュービンテージな車は、1994年に発売されたコンパクトSUV「日産 ラシーン」が近いだろう。

当時の日産 サニーをベースにSUV風のワゴンタイプボディを載せたモデルで、決して本格的なオフローダーというわけではない。だが「アウトドアという非日常」を強く予感させる造形と、スクエアなフォルムゆえの「見切りの良さ」と「歳月の影響をあまり受けない造形」「日常づかいにおけるストレスのなさ」は、ある意味永遠に魅力的。実際、今なおこれをしっかりレストア(補修)した中古車の人気は高く、シンプルなデザインと「現実の中での非日常感」を大切にしたい人々から大いに愛されている。

とはいえその中古車価格帯は、まだ「ベラボーに高い」というほどではない。今のうちに手に入れておくべき「アウトドア車と普段づかい車の間を取ったようなSUV」と言えるだろう。

 

ラシーン▲ステアリングやメーターあたりの90’sなテイストと、チェック柄のシートが素敵

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ニュービンテージな車その5|ダイハツ ネイキッド(初代)

ちょっと似ているブランド:ALPHA INDUSTRIES(アルファインダストリーズ)
販売期間:1999~2003年
中古車価格帯:総額15万~125万円

ネイキッド▲あえて「鉄板むき出し」のエクステリアで登場したダイハツ ネイキッド
 

ネイキッド(NAKED=全裸という意味の英語)という車名が表すとおり、「むき出しの素材感」が最大の特徴となる1999年発売の軽乗用車。

そのバンパーとフロントグリルはあえて外側から丸見えのボルトで留められており、なおかつ簡単に取り外すことも可能。 ドアパネルもあえて平板で直線的なものを使っているため、まさに「鉄板」という感じであり、ドアのヒンジ(ちょうつがい)があえて外側に丸出し状態で付けられているのも最高だった。

とはいえ、一部の好事家は「最高だ!」と感じたものの一般的にはあまり売れず、2002年1月にマイナーチェンジを実施しても販売は振るわなかったため、2004年4月にあえなく販売終了となってしまった。

しかし、ネイキッドの「ネイキッドな魅力」は時代の波に押し流される類のものではないため、2023年で見てもかなりシブい。どノーマルで乗っても、好みのニュアンスにカスタマイズしても、どちらの方向でも激シブで劇的に硬派だ。

そのシブさは、1959年にアメリカのテネシー州ノックスビルで創業された「ALPHA INDUSTRIES(アルファインダストリーズ)」のシブさに近いかも。ALPHA INDUSTRIESはご承知のとおり、米国防省の依頼に基づいてミルスペック(軍規格)のウエアを多数制作したブランド。最も有名なのはフライトジャケットの超名作「MA-1」だろうか。

ダイハツ ネイキッドの作りが“ネイキッド”なのは、もちろんファッション性を重視した結果ではあるが、同時に「シンプルにすることで、部品の補修や交換を容易にする」という狙いもあった。そのあたりのミルスペック……ではないが「実戦的である」という部分と、民間向けにも積極的に販売しているところが、ダイハツ ネイキッドがALPHA INDUSTRIESを想起させる理由のひとつだ。

 

ネイキッド▲カラーにもよるが、インテリアのデザインテイストもどことなくミリタリーっぽい
 

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ダイハツ ネイキッド(初代) × 全国
文/伊達軍曹 写真/日産、トヨタ、ボルボ、ホンダ、ダイハツ
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。