595 ▲大人気のアバルト 595および695ですが、日本向け新車は生産終了となり、新車での購入は難しくなりつつあります。しかし中古車であれば普通に買えるということで、アバルト 595シリーズの直近の中古車事情を紹介します

新車はさておき、その中古車はまだまだ豊富に流通している!

ステランティスジャパンは2024年6月、グローバル戦略の柱である「電動化」の推進に伴い、アバルト F595および695の日本向け生産を2024年5月に終了したことを発表しました。

これに伴ってアバルト F595と695の国内における新車販売は、正規ディーラーの取り扱い在庫がなくなり次第終了となります。

2024年11月中旬時点では、まだ新車(の在庫車)のアバルト F595と695を買うことはできます。しかし近い将来にはディーラー在庫も完売となり、あの何とも魅力的なガソリンエンジンを搭載したアバルト 595および696は、もう二度と入手できなくなってしまうのでしょう。
 

595▲現行世代の輸入車としては唯一無二といえるスパルタンさが魅力のアバルト 595/695だったが……

しかし入手できなくなるのは、あくまでも「新車」に限った話。

幸いなことにアバルトの595シリーズは非常にたくさんの「中古車」も流通しており、それらの中には高年式・低走行な物件も多数存在しています。それゆえ、我々はまだまだ普通に「アバルト 595/695ならではの魅力」を堪能し続けることが可能なのです。

では「中古のアバルト 595を狙う!」と決めた場合には、何年式のどんなグレードを、いくらぐらいの予算で狙うのが得策なのでしょうか?

モデル概要の振り返りを含め、しっかり検討してみることにしましょう。
 

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アバルト 595(2代目) & 695(初代) × 全国
 

モデル概要:強力な1.4Lターボを搭載するイタリアン ホットハッチ

アバルト 595は、日本では2009年に発売されたアバルト 500の上級モデルとして2013年1月に登場したホットハッチ。ご承知のとおり、フィアット 500をベースにアバルトが各種チューニングを施したモデルです。

そして、595の上級バージョンとして追加されたのが595 コンペティツィオーネと595 ツーリズモです。
 

595▲中核グレードである「595 コンペティツィオーネ」の前期型
595▲こちらは上質志向なグレードである「595 ツーリズモ」の前期型

パワーユニットは、アバルト 500が最高出力135psの1.4L直4ターボであるのに対し、595シリーズは同160psの1.4L直4ターボを搭載。トランスミッションは当初5速セミATのみでしたが、その後は5速MTも追加されています。
 

595▲前期型コンペティツィオーネのインパネまわり。写真のトランスミッションは5速MT

そして2016年以降は何回かのマイナーチェンジを受けながらエンジンの最高出力を180psまで上げていき、様々な限定車もリリース。それぞれが人気を博しましたが、メーカー全体としてパワーユニットの電動化を進めることに伴い、冒頭で申し上げたとおり、日本向け新車の生産は2024年5月をもって終了となりました。

なお、アバルト 695というのは、595よりも一段階強力な最高出力180psの1.4L直4ターボを搭載するホッテストモデル。当初は「たまに発売される限定車」という存在でしたが、2023年3月からはカタログモデルになりました。
 

 

中古車を絞り込むうえで知っておくべきグレードの差異は?

ここでは「695シリーズ」については省略し、流通の中心である「595シリーズ」に関してのみ検討することとします。

しかしその595シリーズの中にもいろいろなグレードが存在しており、また様々な限定車もリリースされたため、「自分が買うべきグレード」を的確に絞り込むにはある程度の予備知識が必要です。

そのため「とりあえず最低限これだけ知っておけばOK!」というニュアンスで、アバルト 595シリーズの主要なグレードについてご説明します。

■595 コンペティツィオーネ
595シリーズの中核グレードであり、公道だけでなくサーキット走行やジムカーナなどの競技も楽しむことができるスポーティな仕様と乗り味。2013年に登場した際の1.4L 直4ターボは最高出力160psでしたが、2016年2月のマイナーチェンジで同180psに。また登場から約1年後には5速MT仕様も追加されました。
 

595▲きわめてスポーツ性が高いグレードである「595 コンペティツィオーネ」

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アバルト 595(2代目) × コンペティツィオーネ × 全国

■595 ツーリズモ
スポーツ性を重視した作りとなっている595 コンペティツィオーネに対し、こちらは快適性と上質感を重視している仕様。搭載エンジンの最高出力は、当初は595 コンペティツィオーネの前期型と同じ160psでしたが、2017年2月のマイナーチェンジで165psに引き上げられています。トランスミッションは、2018年に限定発売された「ツーリズモMTリミテッド」以外はすべて5速セミATです。
 

595▲快適性も重視した「595 ツーリズモ」。写真は2017年2月以降の後期型

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■595(1.4)
カーセンサーnetでは「1.4」というグレード名表記になっている「595」は、最もベーシックなグレード。それまでは「アバルト 500」という車名だったのですが、2017年2月のマイナーチェンジで「アバルト 595」へと改名されました。1.4L直4ターボの最高出力は145psで、トランスミッションは5速MTと5速セミATの2種類が用意されています。
 

595▲最もベーシックな「595」(※カーセンサーnetでの表記は「1.4」)

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■F595
2022年7月に追加された新グレード。ワインディングロードでの俊敏性とロングツーリングでの快適性という、相反する要素を高次元で満たすという触れ込みで登場したグレードです。ツーリズモの後期型と同じ最高出力165psの1.4L直4ターボ+スポーティなエクステリアという組み合わせで、トランスミッションは5速MTのみになります。
 

595▲俊敏性と快適性、そして硬派なビジュアルを併せ持った「F595」

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以上を踏まえて、具体的なグレード選びへと進んでまいりましょう。
 

 

中古車のオススメ①|コンディション良好な高年式車を狙うなら?
→できればMTの後期型コンペティツィオーネ

「初度登録から3年以内で、なおかつ走行距離1万km台まで」という条件でアバルト 595を探そうとすると、選択肢はほぼ自動的に、スポーツ志向のグレードである「595 コンペティツィオーネ」になります。

快適志向の「ツーリズモ」も探せないことはないのですが、前述の条件に当てはまるツーリズモの中古車は希少です。
 

595▲こちらが595 コンペティツィオーネ

そして3年落ち以内で走行距離1万km台までの595 コンペティツィオーネに狙いを絞る場合、その中古車価格は総額280万~500万円というイメージになるのですが、トランスミッションの種類に応じて、価格はけっこう変わってきます。

「アバルトに乗るなら5速MTで!」と考えるのであれば、中古車価格の目安は総額320万~500万円。その中でも320万~390万円あたりのゾーンで、十分に好条件な1台が見つかるでしょう。

「5速セミATでもOK!」と考える場合の中古車価格は総額280万~440万円といったところで、その中でも280万~350万円ぐらいのゾーンで、つまり5MTより40万円ほどお安いイメージにて、3年落ち以内/走行1万km台までの中古車を見つけることができます。

どちらのトランスミッションを選択するべきかは、「人それぞれの好み次第」としか言いようがありません。しかしメンテナンスに関する不安を軽減したい場合には、若干高額にはなりますが、5速MTの方がオススメとなるでしょう。
 

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アバルト 595(2代目) × コンペティツィオーネ × 2017年2月~ × 全国
 

中古車のオススメ②|抑えめ予算で595を狙いたいなら?
→総額100万円台前半の前期型ツーリズモ

抑えめな予算で、具体的には「総額100万円台前半ぐらい」でアバルト 595を手に入れたい場合は、上質志向のグレードである「ツーリズモ」がオススメとなります。

スポーティな「コンペティツィオーネ」も狙えなくはないのですが、総額100万円台前半の物件数はやや少なめです。
 

595▲こちらが595 ツーリズモの前期型

595 ツーリズモ全体としての中古車価格は総額100万~370万円といったところですが、100万円台前半のゾーンでも、まあまあ好条件なツーリズモは多数流通しています。

もちろん総額100万円台前半で狙えるツーリズモは最高出力160psの前期型であり、2017年2月以降の後期型ツーリズモは総額180万円以上になってしまうことがほとんどです。しかし前期型と後期型の動力性能の差は微々たるものですので、そこはさほど気にする必要がありません。

動力性能うんぬんよりも「コンディションと整備履歴の良し悪し」にこだわって前期型ツーリズモをじっくり探せば、抑えめな予算であっても、きっと悪くない1台が見つかることでしょう。
 

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アバルト 595(2代目) × ツーリズモ × 総額150万円以下 × 全国
 

中古車のオススメ③|スポーツ性と快適性のいいとこ取りを狙うなら?
→総額300万円台のF595

総額320万円以上の予算が必要になってしまいますが、もしもそれを許容できるのであれば、2022年5月に追加された「F595」は大いにオススメできる選択肢です。
 

595▲コンペティツィオーネよりもしなやかな足が魅力となるF595

エンジンのピークパワーは595 コンペティツィオーネよりもやや劣りますが、低回転域から中回転域における加速の鋭さは――つまり普段づかいする際の動力性能や面白みは、F595もまったく負けていません。

また595 コンペティツィオーネは四輪のすべてを「ハイパフォーマンスコイルスプリング」と「KONI製FSDダンパー」で大いに引き締めていますが、F595はリアにKONI製FSDダンパーを備えるのみです。つまり相対的にソフトでしなやかな足であるため、限界領域うんぬんではない「普通の速度レンジ」においては、F595の方がスポーティで軽快な走りを堪能しやすいのです。
 

595▲F595のトランスミッションは5MTのみ。MTに抵抗がない人向けの選択肢ではある

そんなF595の中古車価格は総額320万~420万円というイメージですが、320万~380万円あたりのゾーンで、走行数千kmから1万km台までの物件を見つけることができます。

コンペティツィオーネと比べれば流通量が少ないことと、「AT限定免許では運転できない」というのがネックにはなります。しかしそこを問題としないのであれば、総額300万円台の低走行のF595は、新車が今後買えなくなっていく中、大注目の存在となっていくでしょう。予算に余裕がある方は、ぜひチェックしてみてください。
 

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アバルト F595(2代目) × 全国

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アバルト 595(2代目) & 695(初代) × 全国
文/伊達軍曹 写真/ステランティス
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツR EX Black Interior Selection。

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