アウディA6がマイナーチェンジ 【試乗by西川淳】
カテゴリー: アウディの試乗レポート
2009/03/26
新エンジンはダウンサイジングでもパワフル
アウディブランドの中核となるA6/A6アバントは、いわゆる欧州Eセグメントに属するモデルで、M・ベンツEクラスやBMW5シリーズが直接のライバルである。国産車で言えば、トヨタクラウンや日産フーガあたりのクラスだと思えばいい。アッパーミドルサイズの高級車、ということで、日本市場における人気ではライバルたちに一歩譲るものの、欧州市場ではセグメントトップの支持を誇っている。そんなA6が1月に定例のマイナーチェンジを受けた。スタイリングの小変更と新しいV6エンジン搭載が主なニュースである。
まず外観では、フロントとリアの表情が変わった。フロントマスクでは、LEDのポジションライトをちりばめたヘッドライトと、迫力を増したシングルフレームグリル、そして両サイドの立派なエアベント(グリル)が新しい。リアは特にセダンの雰囲気が変わった。新しいA4と同系統のデザインとなって、フルLEDのリアランプが与えられている。トランクリッドも少しつまみ上げられた。空力を意識したデザインだ。
スタイリングに比べて、インテリアの変更点は少なめ。スイッチ類をクロームの新デザインとしたほか、インフォメーションディスプレイの解像度を上げて見やすくしたこと、そしてリアシートヘッドレストの形状を変更し視界を良好にしたこと、あたりが目立つ程度。もっとも、それだけもともとのインテリアの完成度が高く、ユーザーからの不満も少なかったということだと思われる。確かに、全体的に見れば決して新鮮味を失ってはおらず、現時点でも同クラスにおいて、高級な部類に属する内装だと思う。少なくとも、直接のライバルたちよりは上手だ。
内外装の変更点以外では、新エンジン搭載に注目しておきたい。3L直噴スーパーチャージャーの3.0TFSIエンジンである。このエンジン、最大トルクは4.2LのV8並みながら、環境スペックでは従来の3.2LのV6以下を誇るというもの。最新のVW&アウディにおけるダウンサイジングコンセプトに基づいている。この新エンジンに組み合わされるのは、最新式のクワトロシステム(通常時に前40:後60の前後非対称なトルク配分とした)と、6速ティプトロニックオートマチックトランスミッションである。
V8自然吸気エンジン並みのトルクを誇るとアウディが言うだけあって、なかなか力強い加速を見せる。スーパーチャージャーがごく自然に利いているので、期待したほどの迫力こそないものの、確かに俊足だ。追い越し加速時における胸をすく気持ちよさも、そこらへんの凡庸なV6エンジンにはないもの。直噴エンジンに特有だが、低回転域でのエンジンフィールが少々がさつ。もう少し洗練さが欲しい。回してしまえばスムーズで反応も良く、なるほどアッパークラスのサルーン&ワゴンにお似合いで、ここはスーパーチャージャーを選んで正解だった。これだけのパフォーマンスを得て、なおかつ燃費も優秀ということであれば文句はない。
アウディの得意科目である高速クルージング性能にも磨きがかかっている。80km/h前後の国内高速常用域で、直進状態におけるステアリングフィールにやや甘さが出るのが玉にきずだけれども、それを超える領域ではまさに路面に吸い付くようなスタビリティの高さを見せた。これで、一般道における乗り味に、最新A4のようなシャープで懐の深い切れ味が加わると天下一品のサルーン&ワゴンになると思うのだが…。そこは次世代モデルに期待ということだろう。
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