日本の軽自動車の行く末は【東京スマート軽ライフ】
2016/12/27
自動車ライター、塩見智さんが軽自動車に約1ヵ月間乗り、東京での軽ライフをリポートする「東京スマート軽ライフ」。高級車が溢れる東京での軽ライフを赤裸々につづっていく。今回は6台の東京スマート軽ライフの総括(後編)をお届けする。

軽自動車の税制に物申す
9ヵ月間、軽自動車に乗ってわかったことは、東京で使うとなると気遅れする部分がまったくないとは言えないものの、最新モデルであれば十分に4人までの家族のためのファーストカーとしての役割を果たすことができるということだ。ただ、そうであればこそ軽自動車の税制については言いたいことがある。軽自動車税が1万800円で、リッターカーの自動車税が2万9500円というのは、以前より差が縮まったとはいえ、依然として差がありすぎではないか。ターボエンジンを搭載する軽自動車には、自然吸気のリッターカーと同等かそれ以上のパワーが備わっている。そうなるとリッターカーに対するディスアドバンテージはサイズの小ささと定員の少なさのみ。否、サイズは東京をはじめ小さいことに価値がある場合もあるので、小ささ=ハンディキャップとは限らないはずだ。
加えて、価格がリッターカーに比べて必ずしも安いとは言えない。車両価格150万円を超える軽自動車はざらにあるし、150万円未満のリッターカーも少なくない。動力性能が変わらず、価格も安いとは限らないのに、軽自動車というだけで一律1万800円で済むのは不公平ではないだろうか。税負担は各人の能力に比例して課せられるべきというのが租税の大原則だ。リッターカーよりも高価な軽自動車が、軽自動車だからという理由で税制優遇を受けるのはおかしくはないだろうか。
かつての軽自動車は登録車に対して、いろいろな性能が劣っていたから税制優遇にも説得力があった。国民が幅広く自動車の恩恵に預かることができるための措置と言えた。けれど、今はもう軽自動車だからという理由で優遇されるのはおかしい。S660の上級グレードは218万円だ。にも関わらず、115万200円のダイハツ・ブーンより税金が安いのはおかしいと思う。排気量によって課税額が決められるのも、過給機付きエンジンが全盛の今となってはおかしい。もっとシンプルに価格によって税額が決まることこそ公平なのではないか。


軽自動車は日本が誇るプロダクトだ
プロダクトとしての軽自動車をディスるつもりはないどころか、他国に紹介したいくらいだ。日本同様に平均速度が遅い国であれば、どこへ輸出しても勝負になるはずだ。衝突軽減ブレーキなども備わり、安全性能も登録車に劣らない。だからこそ高速道路の最高速度も同じなのだ。規格でサイズを制限されたことによって、軽自動車メーカーのパッケージング能力は著しく磨かれた。日本の軽自動車が世界の軽自動車になれば、税制優遇されずとも商品として成立すると思う。アジア各国をはじめ、今後成長する地域の国民車として活躍する姿を見たい。東京スマート軽ライフなのに軽自動車の行く末を案じ、期待もする結論になってしまった。2020年のオリンピックを見に世界中から東京へやってくる人たちに、日本の軽自動車を見て、乗って、好きになって帰ってもらいたい。
【筆者プロフィール】
1972年、岡山県生まれ。自動車雑誌編集部を経て、フリーランスの自動車ライターへ。軽自動車好き。SUV好き。「カーセンサーnet」をはじめ、「GQ Japan」「GOETHE」「webCG」「carview!」「ゴルフダイジェストオンライン」などにて執筆中。
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