60万円で買ったイタリア車を原チャリのように使う。フィアット 500で手に入れた気楽な世界
2026/06/23

【連載:どんなクルマと、どんな時間を。】
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
500円玉貯金で買ったフィアット 500
車には、不思議なことに使い込まれることで魅力を増すモデルもある。フィアット 500はまさにそれだろう。
戦後のヨーロッパで多くの人々の“足”として親しまれた初代ヌオーヴァ 500の精神を現代に受け継ぐこの小さなイタリア車は、多少はゴージャスになったものの、やはり街角がよく似合う。
生活の中に自然と溶け込み、気負わず付き合ってこそ本来の魅力が見えてくる。

そんなフィアット 500を相棒にしているのが、ゴルフ雑誌の編集者として働くかたわら、休日は少年サッカーのコーチとしてグラウンドに立つ山田さんだ。
背筋を伸ばし、大きな声で子供たちに指示を送る姿とのギャップが親しみやすさを増している。
500を手に入れたきっかけは、サッカースクールへの移動手段が必要になったことだった。もともと大きな車は好みではなく、できれば小さくて愛嬌のある1台が欲しかったという。
そんな折、先輩と移動中に立ち寄った中古車店で偶然出会ったのが、このフィアット 500だった。

「先輩に『これ買いなよ』と背中を押され、そのまま勢いで買っちゃった(笑)。車に詳しいわけではないので、見た目にほれた感じです。僕はもともとポルシェ 911みたいなカタチの車が好きだったんですけど、それと少し近いテイストを感じるなと思って」
購入したのは2011年式。価格は諸費用込みで約60万円だった。しかも資金は長年コツコツと続けていた500円玉貯金。500円玉をためてフィアット500を購入したというのも何ともほほ笑ましい話である。
じつは奥さまには内緒で購入したそうだが、結果的には大きな問題にはならなかったようだ。むしろ周囲からの評判は上々。サッカースクールの子供たちからも人気を集めている。
何にも気を使わない500との日常
購入から約6年。その間の走行距離は約2万km。主な用途はサッカーの指導や日常の移動だ。少し大きなファミリーカーも別に所有しているが、1人で出かけるときは圧倒的にこちらの出番が多い。
理由はシンプルだ。気を使わなくていいからである。

全長はわずか3.5m強。狭い住宅街でも扱いやすく、駐車場選びにも神経を使わない。小回り性能は抜群で、思い立ったらすぐに乗り出せる気軽さがある。
さらに驚かされるのが燃費の良さ。山田さんによれば、給油した時期を忘れてしまうほどだという。原付バイクのような感覚で維持できることも、この車の大きな魅力になっている。

一方で、フィアット 500が採用するシングルクラッチ式AT「デュアロジック」は変速時のショックが大きいことで知られるが、山田さんは、そのクセさえも楽しんでいるという。
「たしかに加速時にガタガタ、カクカクしますが、それがかえって運転している実感があるんですよね。踏めば意外と元気にダッシュしてくれるし、ちょい乗りでもすごく面白い」

「取材のために珍しく洗車してきました」と話す山田さんだが、よく見ると、ボディには無数の小傷があり、ヘッドライトは少し黄ばみ気味。
明るい色のインテリアには汚れやこすれが刻まれ、ドアミラーには補修用の養生テープまで貼られている。それでも、不思議とみすぼらしい印象はない。
むしろイタリアの路地裏に何気なく止まっていそうな生活感があり、この車本来のキャラクターにぴたりと重なって見える。


リセールバリューなど気にしない。ローンも組まない。自分が楽しむためのオモチャとして買い、思い切り使う。
取材当日も、いつ雨が降り出してもおかしくない空模様だったが、窓を開けたまま平然と駐車していた。
とかく肩肘張って乗りがちな輸入車と、ここまで自然体に付き合う姿勢は山田さんならではの立派な「スタイル」といえるだろう。

▼検索条件
フィアット 500(チンクエチェント)(3代目)
山田さんのマイカーレビュー
フィアット 500(チンクエチェント)(3代目)
●年間走行距離/約2500km
●購入額:約60万円
●マイカーの好きなところ/気軽に乗れる、楽に乗れるところ
●マイカーの愛すべきダメなところ/高速道路を走るにはちょっと遅い
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/ふらっとどこかに出かけられる“足”が欲しい人

ライター
佐藤旅宇
オートバイ専門誌と自転車専門誌の編集記者を経て2010年よりフリーライターとして独立。様々なジャンルの広告&メディアで節操なく活動中。現在の愛車はフォルクスワーゲン クロスUP!と日産 ラルゴの他、バイク(HONDA)とたくさんの自転車。
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