元セレクトショップ店員が、輸入車をオシャレに着崩して販売するお店とは
2019/09/29
▲ファッションを楽しむようにセレクトショップ感覚で個性を出した車選びができる、大阪市のゼロカートラブル車は一番大きなアウターだ
大阪の住宅街の一角に立つ町工場。
その敷地には1990~2000年代の懐かしい欧州車が所狭しと並び、生まれ変わるときを待っている。
ここは普通の販売店とは違い、購入者に合わせてちょっとしたカスタマイズを施しているのだ。
ゼロカートラブルの代表、三上直記さんは中古車販売店を始める前に、某有名セレクトショップで働いていた。
その頃から根っからの車が好き。そしてマイカーにはこだわりのオリジナリティをもたせていたという。
「欧州車にあえて鉄製ホイールを履かせて乗っていました。ファッションに例えるなら、フォーマルなスーツをあえて着崩すような感覚です」
日本に輸入される欧州車は、現地の上級グレードが中心だ。三上さんは輸入車であってもかしこまって乗るのではなく、どこにでも気軽に乗っていけるスタイルを求めた。
「僕は地元の人たちがサンダル代わりに乗っているような、素のグレードの雰囲気が好き。とくにピカピカにすることもなく、文字どおり日常の足として使われている車たちです」
▲パリッとしているよりもちょっと着崩しているほうが今っぽく、車にもそういったスタイルを求めている人が増えているという車好きが高じてセレクトショップを辞め、中古車販売店を開いた三上さん。
最初は“フツーの車”を販売していたが、その横で自分好きな“着崩し系カスタム”を施した中古車を並べたところ、「なんだかいい雰囲気ですね」とそちらを選ぶお客さんが徐々に増えていった。
今ではカスタムした中古車の方がメインになっている。
「僕が手がけたのは昔ながらの言葉でいうと“ドレスダウン”というスタイルですが、どうも落とすというイメージが好きになれなくて。何かいい言葉がないかなと考えていたときに、“チープアップ”という言葉がひらめきました。あえて安っぽさを“引き上げる”。いい響きでしょう?」
三上さんには常々、ファッションと車をリンクさせたいという思いがあった。
シャツやパンツ、シューズなどを自由に選び、思い思いのオシャレを楽しんでいるのに、車になるとみんなメーカーが用意したごくごく限られた選択肢から選ぶことに疑問を抱かない。
とくに今は1980年代~90年代っぽいファッションが人気になっているのに、車はそことかけ離れたデザインが主流。
ファッション好きの人の中には、「乗る車がない」と嘆く人も少なくない。
三上さんはそんな人たちに肩の力を抜いて、ラフに乗りこなしてもらえる車を提供したいと考えている。
「僕は車を一番大きなアウターだと考えています。だからこそ洋服と同じように車でもオシャレを楽しんでほしい。ファッションでは例えば、6万円のコートより1万2800円の古着のブルゾンの方がカッコいいからと選ぶという感覚がありますが、残念ながら車にはそれがなかった。僕が手がけるチープアップした車たちは、気軽に古着感覚で選んでもらえたらうれしいですね」
▲あえて鉄製のシンプルな黒ホイールを装着し、“崩した雰囲気”を演出しているオタクの知識を生かし、安くて壊れにくい車を選択
チープアップのベースになる1990~2000年代前半の欧州車の中古車相場は今が底値。だからいろいろ手を施しても100万円前後で買うことができるのも魅力。
そのため、お店のインスタグラムを見て、初めて車を買うという20代の若者が訪れることも珍しくない。
「例えばボルボ 940を選ぶとしたら、10年くらい前までは『レザー仕様のクラシックを探している。ホイールはこんな感じのを付けたい』という具体的な要望が多かった。でも今は『いい雰囲気のボルボをください。詳しくないので細かいところは任せます』という人が増えています」
車が生活の中心ではない人も、チープアップされた雰囲気の車を求めるようになってきているようだ。
だからこそ三上さんは「ただ車を売るだけの人」ではなく、その人のスタイルにマッチした雰囲気の車を提案し、作り上げていくことを大事にしている。
▲ファンの多いボルボ 240セダン。古いモデルであっても、できるだけ故障のリスクの少ない年式やグレードをチョイスしている自ら「車オタク」を自称する三上さん。セレクトショップで磨いたセンスに加え、各モデルに対する膨大な知識も、初めて車を買う層から支持を得る大きな要因になっている。
「20年ほど経過した輸入車なので最新の車のように故障がないとまでは言い切れませんが、ボルボ 240や940は最初にウイークポイントをしっかりリフレッシュしておけばそうそう壊れません。フォルクスワーゲン パサートも2.3LのV5ならタイミングベルトではなくカムチェーンになるし、ミッションも頑丈だから普通に乗れるんですよ」
このようにベースとなる車には、なるべくリスクの少ないものをすすめる。そこに三上さんのセンスでちょっとしたオリジナリティが加わるのだから、購入者の満足度は言わずもがなだ。
お店が打ち出す世界観と自分の感性が合った人が、チープアップなスタイルを楽しむ。
ゼロカートラブルは、車のセレクトショップのような存在だ。
ユルイ雰囲気を楽しみたい人は、ぜひ三上さんのセンスに乗っかってみては?
現在発売中のカーセンサー11月号では、ゼロカートラブルのように、“個性が出せてかつフツーに乗れる車”を特集している。
自分の趣向に合った車を手に入れたオーナーや、人とかぶらない車を製作・販売するお店も多数掲載。
あなたにピッタリはまる“個性車”を、ぜひ誌面でチェックしてみてほしい。
▲まるで秘密基地のようなゼロカートラブルのオフィス
インタビュアー
高橋 満(たかはしみつる)
求人誌編集部、カーセンサー編集部を経てエディター/ライターとして1999年に独立。独立後は自動車の他、 音楽、アウトドアなどをテーマに執筆。得意としているのは人物インタビュー。著名人から一般の方まで、 心の中に深く潜り込んでその人自身も気づいていなかった本音を引き出すことを心がけている。 愛車はフィアット500C by DIESEL
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