初代S660と2代目コペン世界でも稀有な存在と言えるマイクロスポーツカーの2台。S660は2021年をもって終売。コペンは2022年3月9日時点で現役だ!

初代S660 VS 2代目コペン 気になる7つのポイントで比べてみた

一度はオープン2シーターに乗ってみたい! そんな憧れを、グッと現実に引き寄せてくれるのが軽オープンだ。同時に「小さくて軽いほど楽しい」というスポーツカーの価値観にぴたりとハマっているのが初代S660と2代目コペンだ

同じ土俵に立つ、がっぷり四つのS660とコペン……ではあるものの、似たり寄ったりどころか、実は両車ともにかなりの個性派。この2台どちらかで迷っているなら、絶対に知っておきたい「違い」がある。それを押さえたうえで購入を検討してほしい。
 

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【オープン機構】巻いてしまえるロールトップと電動開閉式ルーフ

同じオープンカーでも両車は屋根を開放するための仕組みが異なる。端的に言うと、S660は完全な手作業で、コペンは電動開閉式。使い勝手はコペンの方が優っている。

S660のルーフは「ロールトップ」と呼ばれ、オープンするにはルームミラー上部と両ドア上部にある3つのロックを解除。ルーフは手で外す。ルーフ自体はガッチリとした骨格をもつファブリック製だが、クルクルと巻き取って収納可能。当然これらの手作業は、車外に降りる必要がある。

一方で、コペンは「アクティブトップ」と呼ばれる電動開閉式ルーフを採用。これはルーフのロック&解除、開閉すべてがボタンひとつで操作できる。もちろん、運転席に座ったままでOK。しかも、ルーフはハードトップなので閉めた姿はほぼクーペ。一粒で二度美味しい感がある。

S660のロールトップは軽量化と低重心においてアドバンテージがあるが、オープンを気軽に楽しめるは圧倒的にコペンだ。
 

ホンダ S660(初代)のオープン状態▲S660はタルガトップ風といって、シートの背後にロールバーが残るスタイルだ
ダイハツ コペン(2代目)のオープン状態▲コペンはトランクカバーが開いて、そこに折り畳まれたルーフが丸ごと格納される
 

【室内空間】どちらも包まれ感が強いが、車内寸法の差は明確

S660もコペンも車高が低くて、室内空間はミニマム。良く言えば、スポーツカーらしいタイトな“包まれ感”がある。そこは両車に共通する印象ではあるものの、実際に着座してみるとS660の方がややタイトに感じられる。

これは両車の室内寸法をチェックしても、データに表れている。
 

  S660 コペン
室内長 895mm 910mm
室内幅 1215mm 1250mm
室内高 1020mm 1040mm
  S660 コペン
室内長 895mm 910mm
室内幅 1215mm 1250mm
室内高 1020mm 1040mm

室内寸法で見ると、すべてにおいてS660がタイト。こじんまりとした車内を心地よいと感じるならS660、息苦しいと思うならコペンに軍配が上がる。もちろん、このあたりの印象は運転手や同乗者の体格によって左右される。実車確認をするなら、腰掛けて確認してみることをオススメしたい。
 

ホンダ S660(初代)の車内▲S660は室内寸法がデータ上狭いだけでなく、センターコンソールが高い。運転席と助手席が仕切られ、よりタイトになっている
ダイハツ コペン(2代目)の車内▲コペンはオープン時にルーフが全開放されることも相まって、スペック以上の広がりを感じられる
 

【駆動方式】軽快なMRと慣れ親しんだFF

S660とコペンの決定的な違いは、エンジンの搭載位置。それに由来して走りのキャラクターも異なる。S660は俊敏で、コペンは軽快さと安定感のバランスが良い。

S660はMR方式。いわゆる「ミドシップレイアウト」だ。着座シートの真後ろにエンジンを搭載し、後輪を駆動させている。これは、ごく一握りのスーパーカーで用いられる配置。ホンダであればNSXが採用している。

メリットはノーズが軽く、ハンドリングがナチュラル&しなやかになること。ホイールベース間にエンジンという重量物があるので、慣性重量も抑えられる。慣性重量が小さいと動き出しが速く、同時に動きの収まりも速くなるのだ。
 

ホンダ S660(初代)の走り▲S660はリアタイヤが駆動を担当。フロントタイヤは操舵だけを担うことも、ハンドリングが素直に感じられる一因だ

一方のコペンは、現在の車の多くが採用するFF方式。フロントタイヤの前にエンジンがあり、至近にあるフロントタイヤを駆動される。ノーズに重量物があり、前後の重量バランスを車検証の前軸重と後軸重でチェックするとおおむね63:37となっている。S660の公称値は45:55なので、コペンの重心がいかに前寄りかわかるだろう。

FFゆえの重量配分にS660と比べれば、コペンのハンドリングは落ち着いている。ただし、小型軽量ゆえの小気味よさが走りに刺激をもたらす。FFに慣れている多くのドライバーなら軽快さと安心感を同時に感じられるはずだ。
 

ダイハツ コペン(2代目)の走り▲コペンはフロントタイヤが操舵と駆動の両方を担う。S660ほどナチュラルではいかないが、ハンドリングは十分にスポーティだ
 

【荷室】駆動方式の違いで荷室の広さも異なる

MRとFF、駆動方式の違いは走りだけでなく、積載性にも少なからず違いを生み出す。結論から言うと、優秀なのはコペンだ。

S660のリアにはトランクルームがない。フロントボンネットを開けたところにある、小さなスペースが荷室に当たる。しかも、ここも巻き取ったロールトップを収めるのに使用するため、収納スペースは実質上ないに等しいと考えた方が無難だ。

結果としてS660で荷物を安定して置けるのは助手席となる。人は乗れなくなるが「S660は走りに特化している」と捉えれば、納得がいくだろう。
 

ホンダ S660(初代)の荷室▲S660のフロントボンネットフードを開けると、横長のスペースが設けられている。ロールトップを綺麗に巻けば、ここにすっぽりと収納できる

コペンはリアにトランクルームを備え、9インチサイズ(口径が約23cm)のゴルフバッグを積める。丸々2セットは無理にしても、クラブを選べば大人2人が揃ってゴルフの練習場に出かけられるケースもある。

ただ、気をつけたいのはオープン時にはトランクスペースはルーフの格納場所になること。つまり、荷物を積むとクローズ限定となるのだ。オープン時は大幅にスペースが削られるが、ハンドバッグ程度は積むことができる。
 

ダイハツ コペン(2代目)の荷室▲コペンのトランクルームはボディサイズから想像する以上に広い。斜めにすれば一般的なサイズのゴルフバッグも収まる上

S660はリアにエンジンを搭載しているためにトランクルームを設けることが現実的ではない。対するコペンはフロントにエンジンやミッションをコンパクトに配置。この駆動方式の違いが積載性に大きく影響しているのだ。
 

 

【安全装備】先進安全装備の有無が最大の違い

S660とコペンの安全装備で決定的なのは、S660のみが「セーフティ・サポートカーS〈ベーシック〉」に該当すること。つまり、S660は「自動衝突軽減ブレーキ」と「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」を備えている。

具体的に言うと、S660は「シティーブレーキアクティブシステム」を一部グレード除き標準装備。時速約30km以下で作動する「低速域衝突軽減ブレーキ」と「誤発進抑制機能」を組み合わせたシステムとなっている。
 

ホンダ S660(初代)の自動衝突軽減ブレーキ▲S660のシティブレーキアクティブシステムは、衝突の可能性を検知するとインジケーターと音で危険を知らせ、緊急ブレーキを作動させる。停止後は約2秒間ブレーキを保持する

一方、コペンはVSCやTRCといったコーナリングでの横滑り防止装置を備えるものの、オプションでも先進安全装備が選べない。しかも、S660はエアバッグがフロントに加えてサイドにも備わっているが、コペンはフロントのみ。この点から安心度が高いのはS660と言える。
 

ダイハツ コペン(2代目)のVSC▲コペンはエンジンの出力とブレーキをコントロールして、滑りやすい路面などで車両の姿勢を安定させる
 

【カスタマイズ】気軽に換装できるシステムで明暗が分かれる

趣味性が高い車には走る喜びに加えて、カスタマイズする喜びを期待する人は少なくない。両車ともに純正パーツやアフターマーケットのパーツが豊富だが、カスタマイズの自由度はコペンが頭抜けている。

その要因はコペンが採用する「ドレスフォーメーション」にある。これは、ボディの形状を構成するアウターパネルを自在に付け替えられる仕組み。「ローブ」「エクスプレイ」「セロ」「GRスポーツ」という4つのスタイルが用意され、購入後でもパネル交換によって別のスタイルに模様替えできる。

ドレスフォーメーションで大きな換装が可能で、それゆえにアフターパーツも充実。S660もエクステリア、インテリアともに多種多様なパーツが揃っているが、カスタマイズの気軽さはコペンに一足及ばないのが現実だ
 

ホンダ S660(初代)の足回り▲こちらコンプリートカーのモデューロXの足回り。S660はエアロパーツやホイール、サスペンションキットなど、純正およびアフターマーケットのパーツが充実している
ダイハツ コペン(2代目)の各スタイル▲コペンはドレスフォーメーションで着せ替えが可能。左からセロ、ローブ、GRスポーツ、エクスプレイ
 

【中古車】人気ゆえ両車とも中古車相場は高値をキープ

現時点ではコペンの方が手を伸ばしやすい。まずは両車の新車時価格、カーセンサー掲載物件の中古車平均価格と掲載物件数を見比べてみよう(2022年3月8日現在)。

■S660
新車時価格:198万~315万円
中古車平均価格:219万円
中古車掲載台数:736台

■コペン
新車時価格:178万~244万円
中古車平均価格:163万円
中古車掲載台数:549台

安全装備の違いなどにより、S660の新車価格帯はコペンより約20万~70万円ほど高い。それが中古車価格に反映されている。

加えて、S660は2021年3月に生産終了を発表。残りの生産分がすぐさま完売になる人気を見せ、絶版となった今でもS660の中古車価格は高値をキープしている。2021年11月の追加生産分も抽選販売したことを考慮すると、当面この傾向は続きそうだ。
 

ホンダ S660(初代)▲S660は2015年にデビューして7年間にわたって生産。オープン2シーターというニッチなジャンルながら物件数は豊富

コペンもS660ほどではないとはいえ、人気ゆえ高値を維持。そうは言っても、前述のとおり、新車価格のアドバンテージを生かし、S660よりお手頃となっている。ただし、S660は新車では手に入らないので、程度の良い中古車を狙うなら、物件数が豊富な今はチャンスかもしれない。
 

ダイハツ コペン(2代目)▲2代目コペンは2014年にデビュー。最初期のモデルでも中古車平均価格が152.6万円という人気ぶりだ

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文/綱島剛(DOCUMENT)、写真/ホンダ、ダイハツ、尾形和美