エンスー旦那の左ハンMTを難なく操る妻の愛車は「きいルポちゃん」~クルマ “女子” き:Vol.5~
2019/07/18

自動車に移動手段以上の価値を見いだし、時間もお金も費やする、いわゆる「車好き」はほとんどが男性である。ゆえに大変貴重な「女性の車好き」、しかも男性顔負け(?)の偏愛ぶりを見せる女性を取材する企画。カーセンサーは車好き女子を、応援しています!
まるで「お散歩」のように走る、下道が似合う車
同じフォルクスワーゲン ルポというコンパクトカーでも、マニアックなホットハッチとして知られる「GTI」にうら若き女性が乗っているというのであれば、筆者も「うおおおっ!」と思ってしまう。
だが東京都在住の鈴木彩未さんが乗っているルポは、ごくフツーのベースグレードだという。それを聞いた限りでは「ふーん、そうなんだ」としか思わなかった。
だが「ルポと同時にご自宅にあるのがランチア テーマのターボ16 LSなんです」と聞いたとき、今度こそ正真正銘「うおおおおおおっ!」と叫んでしまった筆者は都内某所に飛び、もろもろの背景を根掘り葉掘り聞いてみることにした。
▲東京都在住の鈴木彩未さん
▲こちらが愛車の「フォルクスワーゲン ルポ(初代)」
ということで、ルポですか。いやその前に、イタリアの地味な(?)MTセダンであるランチア テーマもお持ちとは、なんともマニアックですね!

や、テーマはわたしのじゃなくてダンナの車なんですよ。わたしも運転はしますが、基本的には彼のです。

あ、そうなんですか。でもまあ左ハンMTの中型セダンを苦もなく運転されるとは、さすがは「エンスーの妻」といったところでしょうか。で、ルポが彩未さんの車であると?

はい。そしてなぜ今回この黄色いルポを買ったかといいますと……話は数年前に彼が持っていた「青いルポ」にさかのぼるんです。

……どういうことなのか、じっくりお聞かせ願いましょう。

わたしと彼(鈴木喜裕さん)が付き合いはじめた頃、彼は青いルポに乗ってたんです。普段づかい用として。
で、その青いルポでわたしたち、本当にあちこち出かけたんです。そして、本当に楽しかったんです。


ですよね。今でも十分お若いですが、さらにお若かった2人が青ルポの車内で超絶幸せな時間を積み重ねていた光景が、まったく関係ないわたしにも目に浮かぶようです。

で、そうこうしているうちにわたしは初めての車として2代目のランチア イプシロンを中古で買ったんですが……。

ちょっと待ってください! 今、「初めての車がイプシロン」って言いました?

はい。父がものすごい車好きだったので、わたしも小さい頃から「セガラリー」をやったり、父が買った雑誌を見て「ランチア デルタ、超カッコいい!!!」みたいに騒いでる子供だったんです(笑)。
で、そのからみで大人になってからもなんとなくランチアが好きで、それでイプシロンにたどり着いたんですね。

なるほどぉ……。で、イプシロンとルポに何の関係が?

イプシロンを買った後、わたしは結局彼と一緒に暮らすことになったんですが、そうすると、似たようなキャラの輸入コンパクトカー2台が家にあることになっちゃうじゃないですか?

イプシロンとルポ、違うっちゃ違いますけど、丸かぶりといえば丸かぶりですね。

はい。なので協議の結果、彼が「じゃあ僕の青ルポを処分するよ」って言ってくれたんです。それでわたしのイプちゃん(2代目イプシロン)が残ったんですが……。

残って良かったじゃないですか。そして、やさしいダンナさんじゃないですか。

そうなんですけど……でもそれ以降、実はわたしの心の中にはいつも「重いモノ」があったんです。
あんなに楽しい時間をわたしたちに与えてくれた車が、あんなにも可愛かった青ルポが、ある日突然いなくなっちゃった。
仕方ないことだと理屈ではわかってるんですが、なんというか、心にぽっかり穴が空いたような感覚が……。


わかります。わたしも子供の頃に母がいきなり死んじゃって、そしてつい先日は飼い猫がわずか1歳で急死しちゃいましたから……(涙ぐむ)。

その後、なんだかんだで結婚することになりまして、今度はわたしのイプシロンを処分して、彼のランチア テーマを残すことになったんです。
2台も車があると、なかなか貯金とかもしづらいかなぁ……なんて思いまして。

ですよね。

で、しばらくは彼のテーマ1台と、彼のお父さんの車をたまに借りることでなんとかやってきたんですが、やっぱり彼がテーマで出かけているときとか、お義父さんの車を借りられないときとかはちょっと不便なんですね。
東京といっても都下ですから、車がないと買い物に行くのもキツい感じで。

それで中古のフォルクスワーゲン ルポを買ったと?

はい。その際、まあ彼はいわゆるエンスーなんで「ルポといってもGTIのほうがいいんじゃない?」とか「ううむ、初代フィアット パンダも捨てがたいよなぁ」とかいろいろ言ってましたが、わたしとしては「普通のルポに乗りたい!」って思ったんです。


Oh……Why?

「あの青ルポよもう一度」という感じで。もちろん、うじうじと過去を振り返りたいみたいな意味じゃありません。
とにかくすごくステキなんですよ、ごく普通のフォルクスワーゲン ルポがある生活って!

ごく普通のルポの、どんなところが好きなんですか?

「トコトコ走ってくれるところ」と言ったらいいんでしょうか? 速すぎず遅すぎず、まるでお散歩してるかのようなニュアンスで走ってくれる点が大好きなんです。
例えば電車であちこち出かけるのも楽しいですが、電車って「あっ!」と思った風景が一瞬で後ろに過ぎ去っちゃうじゃないですか?
でも「きいルポちゃん(黄色のルポ)」だと、自分たちのペースでそれをじっくり堪能できる。心に焼き付けることができるんです。
彼と2人で青ルポに乗っていた頃も、そんな感じのルポの特性があったから、あんなにも楽しく感じられたんだと思います。
ルポはですね、高速道路よりも「下道が似合う車」だと思いますよ。……うん、ぜったい下道がいい。

「下道が似合う車」……いいフレーズですね。心にしみます。ところでそんな感じで車好きの鈴木彩未さんだけあって、ルポのメンテナンスなんかもご自分でやったりするんですか?

いえいえ! わたしはそういうのぜんぜんできないんです! せいぜい、仕事で忙しいダンナの代わりにランチア テーマのタイヤ交換をやるぐらいで。

……そういうのを「メンテができる」って言うんだと思いますが!

ご本人は「車に特に詳しいわけでもないし、メンテナンスとかもぜんぜんできないし」とおっしゃってますが、普通に発せられる言葉の端々に「車好きならではの香り」が漂っており、筆者も思わずごく普通にマニアックな車談義をしてしまいました。
たぶんですが、ダンナ様を含む回りの人々があまりにもディープな車好きであるため、ご本人は「わたしなんてぜんぜん……」と思ってらっしゃるのでしょうが、客観的に見て十分以上に「クルマ女子き(すき)」な鈴木彩未さんでありました。
そしてその好きっぷりは、メカやヒストリーなどに拘泥するタイプではなく、「ナチュラルに、その車がある時間全体を楽しむ」という感じのものなのでしょう。
そこも、個人的にはとってもステキだなぁと思った次第です。

自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。
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