オートモビルカウンシル2018レポート輸入車編、そして「車以外」の展示品コーナーや出店にも要注目だ
カテゴリー: レース&イベント
タグ: トヨタ / メルセデス・ベンツ / アウトビアンキ / 190クラス / アルピーヌ / EDGEが効いている / オートモービルカウンシル / 自動車関連のイベント / 伊達軍曹
2018/08/19
▲「希少すぎるビンテージカー」だけでなく、ある時期まで普通に走っていたモデルの展示(と即売)も行われるのがオートモビルカウンシルの魅力。写真手前は1972年式BMW 2002A。「ターボ」ではない点が逆にシブい「ショーカーなのにあえて磨かない」という新発想
日本の自動車ヘリテージをあらためて整理し、それを世界に向けて発信する。そしてビンテージカーマーケットの裾野を広げることで、次世代へその文化を継承していく……という意図のもと、8月3日から5日にかけて幕張メッセので開催された『AUTOMOBILE COUNCIL(オートモビルカウンシル)2018』。
前編でご紹介した注目の国産ヘリテージカー軍団に続き、ここでは輸入車のそれをご紹介しよう。
ヘリテージカーの「新しい見せ方」という部分で注目したのが、愛知県名古屋市の販売店「LES MAINS S.P.R.L.」が出展した1974年式アルピーヌ ルノー A110 1300VCだ。
アルピーヌA110といえば、今年6月にアルピーヌ・ジャポンから発売された「新型のA110」が話題を集めているが、こちらは1963年から1977年にかけて販売された初代A110。RRレイアウトによる強力なトラクションと圧倒的に軽い車重で当時のラリー界を席巻。1973年にはWRC(世界ラリー選手権)の初代マニュファクチャラーズ・チャンピオンを獲得している。
で、LES MAINS S.P.R.L.が出展したこちらのA110は「あえて泥だらけ」なのだ。
▲ある意味、ひときわ目を引いた1974年式アルピーヌ ルノー A110 1300VC
▲ショーカーの王道は「ピカピカに磨き込むこと」あるいは「キレイに再塗装すること」だが、このアルピーヌA110はホームセンターで購入した砂と水によって、あえて泥だらけにされている。なるほど!
「ピカピカに磨いたり、キレイに再塗装するだけじゃ面白くないですからね。ちょっとくたびれてる当時の塗装のままで、そして当時の本当の使われ方をイメージさせる泥だらけのボディの方が、逆にカッコいいじゃないですか」
そう語るのは同社社長の平手博樹氏。ボディの泥は展示直前に付着させたものだが、アルミホイールの黒ずみは「あえて数年間磨かずに育て上げた(笑)」という年代モノ。
この逆転の発想は素晴らしく、また「ボディの再塗装はしていない」という部分が、ヘリテージカーとしての価値をむしろ上げているようにも思えた。
希少スポーツモデルもいいが「普通の車」にも実は見どころが
普段なかなか見る機会のない希少輸入車が、それこそ山ほど展示されていた今回のオートモビルカウンシル。そのなかでも個人的に目を引いたのは、群馬県の「Auto Roman」が出展したメルセデス・ベンツ190E 2.5-16 Evolution II。
ご承知のとおり1990年、当時のDTM(ドイツツーリングカー選手権)で勝利するために生まれた究極のベースモデル(公認取得用の市販モデル)である。
▲手前が1990年式メルセデス・ベンツ190E 2.5-16 Evolution II。奥側にある同型車に見える個体は、ドイツのチューナー「Oettinger(エッティンガー)」が手がけたターボバージョン
だがこういった超絶スポーツモデルだけでなく、一見すると大衆的なモデルであっても実は見どころたくさんなのが、オートモビルカウンシルに出展される輸入車の面白い点だ。
例えばこちらのワールドヴィンテージカーズ(広島県)が出展した1964年式アウトビアンキ ビアンキーナ。これは、イタリアのアウトビアンキが1957年から1970年まで製造販売していたコンパクトカーだ。
▲こちらがアウトビアンキ ビアンキーナ。往年のフィアット500のアウトビアンキバージョンだ
▲なんともシンプルなインパネまわりの意匠。最新世代のジャパニーズ軽自動車も、こういったセンスを参考にして内装デザインをすれば良いのにと、個人的には思う
ベースとなっているのは同時期のフィアット500(ヌオーヴァ500)で、エンジンやシャーシなどはフィアット500のものをそのまま使用している。が、内装と外装はメッキパーツなどでグレードアップされており、現在の「フィアットに対するランチア」のような、ビアンキーナはフィアット500よりも「少々高級」という位置づけだった。
今や現存するビアンキーナのユーズドカーはかなり希少。1960年代のイタリア人が送っていた「ごく普通の、でもちょっとだけ上級志向な生活」を垣間見ることができる、貴重な文化遺産のひとつだと言えるだろう。
車以外の「周辺展示」もぜひ注目を
▲1960年代に作られた各メーカー各モデルのカタログ。スポーツカーではなく大衆実用車のカタログだけに、当時の一般的な市民が何を思い、何を夢見ていたのか……みたいな部分が見えてくる他にも多数の注目すべき輸入車が展示されていたオートモビルカウンシル2018だが、きりがないのでこのへんでやめておく。そして最後に付け加えたいのが、「もしも次回カウンシルに行くのであれば、車以外の周辺展示にもぜひ注目してほしい」ということだ。
貴重なヘリテージカーの展示を見るのもももちろん面白いわけだが、その周辺にある車以外の展示品コーナーや様々な種類の「出店」も、こういったオートショーにおける(地味ではあるが)かなり楽しめるポイントのひとつだからだ。
例えば今回で言うと、「トヨタ博物館 meets AUTOMOBILE COUNCIL」をテーマに掲げたトヨタブース裏手のガラスケース内に展示されていた、トヨタに限らない各メーカーの、往年の大衆実用車のカタログ類を集めた展示。往時をリアルタイムで知る人間にとってはひたすら懐かしいものであり、そうでない人間が見ても数々の発見があるだろう、かなり興味深い展示であった。
▲このイベントに出店するため、フランスから計4日間のみという日程で弾丸来日したビンテージポスター商「Atelier Affiches Anciennes」のブース
「出店」のなかで出色だったのが、フランスからオートモビルカウンシルのために4日間だけ日本にやってきて、往年のレア物ポスターの展示即売を行った「Atelier Affiches Anciennes」だ。
往年のフランス車のポスターのカラーコピーを販売している業者は世の中にたくさんあるが、こちらのアトリエが販売しているのはコピーではなくすべて当時のオリジナル。それを丁寧に修復したうえで、一種の美術品として販売しているのだ。
そのなかでも1960年代のシトロエンGSの希少ポスターは、当時の好事家のガレージに飾られていたものだということで、オイルの染みが数箇所に残っていた。それを嫌だと感じる人もいるかもしれないが、筆者としては逆に歴史を感じる「素晴らしき染み」に感じられた。
▲「かなりのレア物ですよ」というシトロエンGSのポスター。1960年代に、とあるフランス人のガレージ内に貼られていたものであるため、ところどころにオイルの染みが。だがそこが逆にカッコいい
以上のとおり様々な見どころがあったオートモビルカウンシル2018。次回開催は2019年4月とのこと。展示車や展示物を眺めているだけでも楽しいが、それをもとに、様々な思索をめぐらせてみるという楽しみ方もできる。
自動車と現代大衆文化史に興味のある方にはぜひ次回、ぶらりと行ってみることを強くオススメしたい。
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