BMW M1【EDGE/~名車への道~】
カテゴリー: クルマ
タグ: BMW / クーペ / EDGEが効いている / VINTAGE EDGE / 名車への道
2016/09/06

BMWの歴史の中でも異彩を放つミッドシップモデル
EDGE:さて松本さん、この企画が始まってからずっと探していた車が、ようやく見つかりました。M1です。
松本:素晴らしい! 徳大寺巨匠と一緒にやっていた頃から取り上げたかったモデルだからね。
EDGE:しかもすごく状態の良さそうな個体みたいですよ。
松本:売り物として流通することが少ないからね、M1は。そもそも生産台数が450台だし、現在では珍重されているけど、一時期はその価値が低く見られていたからね。6気筒モデルなのに同時期に発売されたフェラーリ 308の倍近い値段だった車なのに。
EDGE:言われてみればいろいろと不思議な存在ですよね、M1は。あ、こちらのお店ですね。
松本:確かに車の状態も素晴らしいね。しかし、今見るとやっぱり小柄だよね。
EDGE:しかも低いですね……。
松本:なんたって全高が1140mmだからね。でも、極限まで低く設定はしているけど、しっかりと実用の範囲で作られているんだよ。これがBMWらしいよね。通常の使用に耐えてこそBMWが提供するスーパースポーツカーである、そういう意思が伝わってくるよ。
EDGE:M1ってランボルギーニとの関係が有名ですよね?
松本:そうだね。BMWは1970年代から積極的にレースに出場して、かなりの成績を収めていたんだけど、FRのクーペではポルシェのハイパワーとパッケージングに太刀打ちできなかったんだ。そこでミッドシップのハイパフォーマンスモデルを作ろうと思った。一気に高級スポーツカーメーカーしての実績を上げたかったんだろうね。
EDGE:当時、BMW 3.0CSLにターボを搭載したモデルがレースで活躍してましたよね。あれでは対抗するのは難しかったんですか?
松本:3.0CSLターボはレースで700馬力以上を発生していたそうだけど、動力系のトラブルが絶えなかったらしいんだよね。量産車をベースにしたFRモデルだからね。前から後ろにパワーを伝えるわけだから、相当補強も必要だったんだ。エンジンとアクスルを一緒にして強度を向上できる911やフェラーリなどのミッドシップ方式と比べるとその点で大きく不利だった。
EDGE:なるほど。それでミッドシップを選んだと。
松本:そうだね。それで実績のあるランボルギーニと組んでM1を作り出そうとしたんだ。シャシーは現在ではとても有名なジャンパオロ・ダラーラが担当して、ボディはイタルデザイン。しかし実際にイタリアですべてを生産することはできなかったんだよ。結局、以前よりBMWのボディを架装していたコーチビルダーのバウアー社に依頼してようやく量産車として世に送り出せたんだ。
EDGE:戦後は順風満帆のBMWにもいろいろあったんですね。ところでハイパワーのスーパースポーツカーにしてはエンジンが直列6気筒ってなんかしょぼい感じもしますが……。
松本:まぁ確かにジウジアーロのデザインにはもっとエキサイティングなエンジンが似合っただろうね。開発当初はV型10気筒を搭載するはずだったんだけど、初めにも言ったとおり、BMWは耐久性をとても重要視したんだ。神経質なエンジンではスーパースポーツカーといえども世の中にBMWとして送ることはできなかったんだろうね。そこで定評ある「M88」という量産のエンジンを使ったレーシングエンジンを採用したんだよ。M1のみに搭載しスペシャルエンジンは燃料噴射装置に「クーゲルフィッシャー」という圧力の非常に高い噴射システムを採用しているんだ。現在ではボッシュ社に買収されちゃったんだけど、機械式のインジェクションでは最高峰だった。圧縮比を高くしたレース仕様でNAなんだけど470馬力を発生させてた。信頼性もレーシングエンジンとしてはめちゃくちゃ高くて、1981年のル・マンではかなりの数のM1がエントリーしてたし、レーシングエンジンとしても80年代後半まで第一線で活躍してたんだよ。
EDGE:実は凄い車だったんですね。
松本:そういったレースでの実績はあまり知られてないけど、M1のポテンシャルが非常に高いことはコンストラクターのエンジニアには十分にわかっていたんだろうね。
EDGE:松本さんが乗っていたBMWの1Mも、この車があったからM1って名乗れなかったんですよね?(笑)
松本:そうだね(笑)。でも名前は近くてもM1は市販車とは思えないほどのポテンシャルを持った車だったわけだよ。価値が見直されているのも、当然の車だよ。





【関連リンク】
※カーセンサーEDGE 2016年8月号(2016年6月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています
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