WRX S4 ▲その車名で検索すると「買って後悔」というサジェストが出てくる場合が多いスポーツセダン、スバル WRX S4。いったい何をどう“後悔”するのか? というか、そもそもWRX S4を購入すると本当に後悔するのだろうか? 自身もスバル車に乗っている中古車評論家がズバリ解説します!

WRX S4は「後悔する車」なのか?

初代は最高出力300psの強烈な2L水平対向4気筒ターボエンジンを搭載し、2代目はカタログ上の最高出力こそ275psに若干トーンダウンしたものの、実質的には初代同様またはそれ以上に強力な2.4L水平対向4気筒ターボエンジンを搭載する、スバル WRX S4。

同門のスパルタンモデルである「WRX STI」と違い、S4の方は「スポーティな車だけど、快適に乗ることもできそう」ということで、気になっている人は多いかと思う。

だがスバル WRX S4のことが気になった結果として、ネットにてその車名で検索をかけてみると、間髪入れずに表示されるのが以下のサジェスト(提案)だ。

「WRX S4 買って後悔」

このネガティブなサジェストにより「……買っても大丈夫なのか?」「ていうかS4、やめといた方がいいのか?」などと、不安に感じてらっしゃる人も多いかもしれない。

新旧通算2代のスバル WRX S4とは、果たして本当に「買って後悔する車」なのか? それとも「そんなことはない車」なのだろうか?

……スバルWRX S4に関する“本当のところ”を、現役のスバル車ユーザーである筆者が、誰にも忖度することなくご報告申し上げよう。
 

WRX S4▲これを買うと本当に“後悔”するのか? 写真は初代WRX S4の後期型
 

モデル概要:強力ターボエンジン+CVTのスポーツセダン

まずは「スバル WRX S4とはそもそもどんな車か?」ということを――すでによくご存じの方も多いとは思うが――あらためて簡単にご紹介する。

スバル WRXシリーズは往年の「インプレッサWRX」が進化していった果てに誕生した、計2系統のスポーツセダン。

そのうちの「WRX STI」は伝統のEJ20型ターボエンジンに6MTを組み合わせた硬派スポーツセダンで、今回取り上げる「WRX S4」は、レヴォーグと共通のFA型ターボエンジンにオートマチック・トランスミッション(CVT)を組み合わせた、いわば「スポーティなセダン」だ。
 

WRX S4▲こちらが初代スバル WRX S4。写真は「アプライドA」と呼ばれる最初期モデル
WRX S4▲初代WRX S4 アプライドAの運転席まわり

初代WRX S4が登場したのは2014年8月。ボディサイズは全長4595mm×全幅1795mm×全高1475mmで、歴代WRXと同じく水平対向ターボエンジンと4WDシステムを組み合わせた「シンメトリカルAWD」レイアウトを採用。

搭載エンジンは当時のレヴォーグにも搭載したFA20型2L水平対向4気筒直噴ターボで、最高出力300ps/最大トルク400N・mを発生。トランスミッションは高トルク対応のCVT「スポーツリニアトロニック」を採用し、通常の無段変速に加えて8段のステップ変速モードも設定されている。

以降、スバル得意の年次改良を繰り返しながら販売された初代WRX S4だったが、2021年11月には2代目(現行型)へのフルモデルチェンジが行われた。
 

WRX S4▲2021年の暮れ近くに登場した2代目スバル WRX S4
WRX S4▲12.3インチサイズのフル液晶メーターや、縦型11.6インチのセンターインフォメーションディスプレイが目を引く2代目WRX S4のコックピット
 

車体骨格は「フルインナーフレーム構造のスバルグローバルプラットフォーム」に生まれ変わり、ボディサイズも全長4670mm×全幅1825mm×全高1465mmに少々拡大。

そしてパワーユニットは2.4Lの水平対向4気筒直噴ターボに刷新され、最高出力275ps/最大トルク375N・mをマーク。またトランスミッションは初代と同じくCVTではあるものの、デュアルクラッチ式ATに勝るとも劣らぬ変速スピードが自慢の「スバルパフォーマンストランスミッション」に改められている。

その他、2代目WRX S4では「アイサイト」も最新世代のものが全車に標準装備され、渋滞時のハンズオフ走行などが可能な「アイサイトX」も用意された――というのが、初代および2代目スバル WRX S4の超ざっくりとした概要である。

それでは次章以降、「WRX S4は買うと後悔する車なのか?」という噂話の真贋を検証していく。
 

 

【初代】アプライドによっては後悔する可能性もある

WRX S4▲初代WRX S4は買って後悔する車なのか!?

●「買って後悔」はホント?

遺憾ながら、これはある意味本当だ。もちろん「すべての初代WRX S4購入者が後悔している」というわけでは決してなく、むしろ「大満足してます!」というユーザーの方が圧倒的に多いことは、最初に声を大にして言っておきたい。

ただ一部には「想像していたのとちょっと違う……」というニュアンスで、初代スバル WRX S4を買ったことを後悔しているユーザーも存在している可能性はきわめて高いのだ。

一部のユーザーが後悔するポイントは「乗り心地の悪さ(硬さ)」だ。
 

WRX S4▲一般道では足がかなり硬いと感じられる初代WRX S4。写真は、中でも特に硬めだった最初期モデル

2017年7月3日以降の大幅改良型(アプライドD)およびそれ以降の改良型の乗り味は、比較的しなやかだ。しかしそれ以前の世代の乗り心地は、人によっては「拷問のようだ」とも評することもあるぐらい硬めである。

この問題をどう評価すべきかは後述するが、大幅改良前の世代(アプライドA~C)を購入したユーザーの一部は、確かに「買わなきゃ良かった……」と思っている場合もあるだろう。

●初代WRX S4を買ってもいい人とは?

「硬めな乗り心地が好きな人」であれば、初代WRX S4を購入しても何ら問題はない。

乗り心地というのは、開発エンジニアではない我々ユーザーにとっては非常にファジーな問題であり、その感じ方は人それぞれだ。ある人が「まるで拷問のような乗り心地だ!」と評するまったく同じ車を、別の人が「そう? 自分はこのぐらいがちょうどいいんだけど?」的に評価することなど日常茶飯事である。

それゆえ初代WRX S4の乗り心地問題についても、「絶対にこうだ!」という唯一の答えを出すことはできない。しかし、「昔から硬めな足回りの方が好きなんです」という人であれば、初代WRX S4の前期型であっても特に問題なしと感じられるだろう。
 

WRX S4▲ハードな足が好みの人であれば前期型でも特に問題はない。また写真の後期型(写真はSTI Sport)であれば、硬めの足が苦手な人であっても、ある程度快適に乗ることができるはずだ

●やめておいた方がいい人とは?

「ソフトな乗り心地」を好む人は、率直にいって初代WRX S4は買わない方がいいだろう。特に大幅改良前の前期型(アプライドA~C|2014年8月25日~2017年5月23日)は、やめておいた方がいい。

また「CVT」というトランスミッションに対する考え方や感じ方も、乗り心地と同様に人それぞれなわけだが、「とにかく急激な加減速を公道でも常に行いたい!」と考えている血気盛んなドライバーは、初代WRX S4のCVT(スポーツリニアトロニック)に不満を覚える可能性がある。そういった人はS4ではなく6MTのWRX STIか、もしくはまったく別の車を買った方がいいだろう。

逆に言うと、そういった運転(急激な加減速を伴う血気盛んな運転)はしない人であれば、初代のスポーツリニアトロニックにもほとんど不満は覚えないはずだ。
 

WRX S4▲ジェントルに運転している際にはほとんど気にならない初代WRX S4のCVTだが、急激にアクセルペダルを踏み込むと、エンジン回転だけが上がって速度が一瞬ついてこない――という現象は発生する。そのような踏み方を日常的に行っている人には、確かに不向きな車かもしれない

●初代WRX S4の選び方は?

「自分は硬めの足回りが三度の飯より好きなのだ!」という人は、どの世代を購入しても良いと思う。だがそうではない平均的な感性の人であれば、足回りが格段にしなやかになったアプライドD(2017年5月24日~)またはそれ以降の世代を買うに越したことはない。

少なくともアプライドB(2015年6月30日~)以降を選ぶべきで、最初期のアプライドAはかなり硬いので推奨しない。
 

▼検索条件

スバル WRX(初代) × S4×2015年6月~2017年5月生産モデル×全国

またアプライドDは足回りだけでなくフロントマスクもちょっとカッコよくなり、内装の質感も向上し、さらにはアイサイトも「ツーリングアシスト」に進化するなどしているので、やはり断然オススメなのだ。
 

WRX S4▲こちらが2017年5月24日以降のアプライドD。乗り心地が改善されただけでなく、LEDヘッドランプやフロントグリル、フロントバンパーなどのデザインを変更したことで、ビジュアルもグッと良くなっている

▼検索条件

スバル WRX(初代) × S4×2017年6月以降生産モデル×全国

なお、年次改良別の中古車価格の目安は下記のとおりであるので参考にしてほしい。

・アプライドA(2014年8月25日~)|総額110万~270万円
・アプライドB(2015年6月30日~)|総額150万~300万円
・アプライドC(2016年5月11日~)|総額150万~300万円
・アプライドD以降(2017年5月24日~)|総額200万~450万円

 

▼検索条件

スバル WRX(初代) × S4×全国
 

【2代目】MT車信者でなければ、決して後悔する車ではない!

WRX S4▲2代目WRX S4は買って後悔する車なのか!?

●「買って後悔」はホント?

これは、筆者の体感に基づくならば「本当ではない」と考える。2代目スバル WRX S4は、そのスペックやキャラクター、デザインなどを事前にカタログなどで学習した人が、そのうえで「欲しい!」と思って購入したならば十中八九、後悔などしない車だ。

初代WRX S4に関しては、特にその前期型(アプライドA~C)は硬めの乗り味が問題視されるケースはあり、またCVTの「CVTっぽさ」に関しても、一部のユーザーは「ううむ……」と感じる可能性はある。

だが、フルインナーフレーム構造のスバルグローバルプラットフォームを採用した2代目WRX S4の乗り味は、決して「拷問のような硬さだ!」という類のものではない。
 

WRX S4▲さすがに「ソフトな乗り心地」ということはないが、十分以上に「しなやか」なのが、2代目スバル WRX S4という車だ

電子制御ダンパーを装着する「STI Sport R」というグレードでは、ドライブモードセレクトをSport+にするとさすがにけっこう硬めになるが、それ以外のモードであれば普通にしなやか。そして電子制御ダンパーではない「GT-H」の乗り心地は、STI Sport RのNormalモードにおおむね相当する。つまり「硬くて閉口する」というような乗り心地ではないということだ。

また、初代では一部のユーザーは不満に思う可能性もあるCVT(スポーツリニアトロニック)だったが、2代目で採用された「スバルパフォーマンストランスミッション(SPT)」を不満に感じる人はほとんどいないはずだ。

ComfortまたはNormalモードでゆったり走る際には「普通に出来のいいAT」という感じであり、そこからアクセルペダルを深く踏み込むか、もしくはSportまたはSport+モードにそれば「最新世代の8速ATと同様か、それ以上」といったニュアンスで作動してくれる。
 

WRX S4▲STI Sport Rに搭載されるZF製電子制御ダンパー。Comfortモードでは文字どおりきわめてコンフォートな乗り味となるが、ドライブモードセレクトをSport+モードにすると「まさにスポーツセダン!」といった乗り味に激変する
WRX S4▲「S♯」もしくはマニュアルモードではDCTを上回る変速スピードとなるスバルパフォーマンストランスミッション(SPT)

強いて言うならば「なんだかんだでイマイチな実燃費」に対して、一部のユーザーは「後悔してます……」となる可能性はある。だが2代目WRX S4のネガティブなポイントとは、せいぜいそこぐらいしかないのだ。

まとめると以下のとおりになる。

●2代目WRX S4を買ってもいい人とは?

基本的には「スポーティに気持ちよく走れる4ドアセダン」を求めるすべての人が、この車を購入してOKであると思われる。その中でも特に「低燃費であることはさほど重要視しない」という人であれば、この車の潜在ユーザーになる資格は十分である。

●やめておいた方がいい人とは?

今の時代「MT車=運転が楽しい/AT車=運転が退屈」と、単純に変速機の種別だけで物事を考えるのはナンセンスであり、そもそもAT車嫌いの人はWRX S4の購入を検討していないとは思うが、念のため言っておくと「MT車信仰」が強すぎる人は、いくらSPTの出来が良いとはいえ、やめておいた方がいいだろう。

また、「スポーティな車であっても低燃費じゃなきゃ!」と思っている人にも、この車は向かない。そういった人は2代目WRX S4ではなく、何らかのハイブリッド車などを買うべきかと思われる。

WRX S4▲「MT車以外は車じゃない!」的に思っている人には何を言っても無駄かと思うが、もしもそこまでは思っていないのであれば、MT車好きな人にもぜひSPT(スバルパフォーマンストランスミッション)を体感していただきたいと思う。きっと納得していただけるはずだ

●2代目WRX S4の選び方は?

では、上記をご覧になったうえで「買ってもいい」と思った人は、どのように2代目WRX S4を選ぶべきだろうか?

まだ新しい車だけあって、よっぽど手荒く扱われた個体でない限り、いわゆる「物件選び」的な部分での難しさは何もない。ディーラーで定期点検を受けてきた内外装がキレイな個体の中から、予算や好みに応じて選べばいいだけの話だ。

問題となるのは「そもそも中古車の流通量が少ない」ということと、「まだけっこう高い」ということぐらいだろう。

2023年8月下旬現在、2代目スバル WRX S4の中古車流通量はわずか22台。価格も総額410万~590万円と、新車を買う場合とさほどの大差はないため、「これならいっそ新車を注文した方が……」と思うこともある。

とはいえ当然ながら「新車より少し安い」というのは確かであり、また「新車と違ってほぼ即納である」という美点もあるため、あえて中古車を狙う意味がないわけではない。

そして現在流通している中古車はほとんどが「STI Sport R EX」なので、グレード選びで悩むこともない(というか、悩みようがない)。

総額450万円前後で、走行0.5万kmぐらいのWRX S4 STI Sport R EXを“即納”で手に入れるのは、なかなか悪くない話ではあるだろう。
 

▼検索条件

スバル WRX S4(2代目・現行型) × 全国
文/伊達軍曹 写真/スバル、尾形和美、篠原晃一
※記事内の情報は2023年8月29日時点のものです。

伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。