RX-8▲ロータリーエンジンの新車搭載がマツダ MX-30ロータリーEVで11年ぶりに復活! ロータリーエンジンの利点に改めて注目が集まる(写真はマツダ RX-8)

世界で唯一、ロータリーエンジンを搭載する市販車だったマツダ RX-8が生産終了してからはや11年。ロータリーエンジン搭載車は中古車市場でも人気で、今なお熱烈なファンがたくさんいる。

そのロータリーエンジンが、プラグインハイブリッド(PHEV)のマツダ MX-30ロータリーEVの発電機として復活した。

今、注目が集まるロータリーエンジンの魅力と歴史、特徴を解説する。加えて人気のRX-7、RX-8についても、中古車市場の現況を交えて解説していく。

RX-7 ▲ジェット機のような独特のエンジン音と爽快な加速感はロータリーエンジンにおける魅力のひとつ
 

ロータリーエンジンとは? 仕組みを解説

まずはロータリーエンジンの構造を解説する。ロータリーエンジンは、ローターハウジング(レシプロエンジンでいうところのシリンダーに相当)の中でローターが回転することによって、燃焼を回転に換える内燃機関だ。

おにぎりのような形状をしたローターは自転するとともに公転もしており、頂点の3カ所はいずれも回転している最中、常にシリンダー壁面と接していることがポイント。このことで燃焼室の密閉が保たれ、3つの部屋それぞれで吸気、圧縮、燃焼(膨張)、排気のサイクルを繰り返すことができる。

 ロータリーエンジンのサイクル ▲ロータリーエンジン(上)とレシプロエンジン(下)のサイクルを比較したもの。レシプロエンジンはひとつの気筒内で吸気と圧縮、膨張(燃焼)、排気の行程を順番にしか行えないのに対して、ロータリーエンジンでは複数の燃焼室で同時進行する
 ロータリー ▲エンジンの駆動力を伝えるエキセントリックシャフトはローターの自転でなく、公転によって回転する。偏心量eと創成半径Rの比率がエンジンの特性に大きく影響する

ローターの回転は中心にあるエキセントリックシャフトを通して駆動系へと伝達される。一般的なレシプロエンジンとは構成部品が全く異なり、ロータリーエンジンにはピストンとクランクシャフトをつなぐコネクティングロッドや、複雑なバルブ開閉機構がない。

また、レシプロのように往復運動を回転運動に換えるのではなく、もともと回転運動であることが様々なメリットをもたらす。

 

ロータリーエンジンのメリット

コンロッドやバルブ機構がないため、コンパクトかつ軽量に設計できるのが大きな特徴。一般的なレシプロエンジンよりも搭載位置を低くできるため、「重心の低い車」、「前後重量配分が均等に近い車」にすることができる。

また、ひとつの気筒内で3つの燃焼室が連続的に燃焼するため、小さな排気量で大きなパワーを引き出せるのもメリット。軽量コンパクトで高回転までよく回る特性は、スポーツカーと特に相性が良い。

さらにレシプロエンジンと違って往復運動しないため、振動や騒音が少ないこともメリットのひとつ。PHEVの発電用エンジンなどにも適した特性と言えるだろう。

 RX-8エンジンルーム ▲軽量コンパクトなロータリーは、車のフロントセクションを軽く設計できる。ハンドリング性能向上に有利だ
 

ロータリーエンジンのデメリット

ロータリーエンジンは低回転域では熱効率が悪く、トルクでも一般的なレシプロエンジンより劣る傾向がある。そのため低速で走る環境下では、燃費性能が良いとは言えない。

さらにバルブを持たない構造上、近年レシプロエンジンで多く採用されているような吸排気系の綿密な制御もできない。

また、ハウジングとローター頂点の気密を保つためのアペックスシール、ローター側面に取り付けられるサイドシールなどシールの数が多く、摩耗しやすいのも特徴。そのため定期的なメンテナンスが欠かせない。

ちなみに、自動車税制などにおいてロータリーエンジンの排気量は、1.5倍で換算される。これはロータリーエンジンの出力が「単室容積×ローター数×1.5」程度の排気量をもつレシプロエンジンと同等であるためだ。

なお、燃焼室の容積で考えると、ロータリーエンジンは1回転当たりレシプロエンジンの2倍、空気を吸入(排出)する。本来は排気量も2倍で換算しなければいけないところだが、実際の出力で比較すると1.5倍が妥当だった、ということだ。

 ロータリーのデメリット ▲レシプロエンジン(右)では1回の燃焼行程で出力軸が2回転するのに対して、ロータリーエンジンでは1回転となる。つまり排気量は気筒容積の2倍とするのが本来
 

ロータリーエンジンの主な故障原因と対処法

ロータリーエンジンは壊れやすい……といううわさがよく聞かれる。故障の原因は様々だが、実際にはメンテナンス不足によることも多いだろう。

ロータリーエンジンは「燃焼室がハウジング全周にわたって移動する」という特徴がある。そのため高温になりやすく、冷却にはレシプロエンジン以上に気を使う必要がある。また構造上、燃焼室にエンジンオイルが入り込みやすく、減りやすいという特徴もあるため、ラジエター液やエンジンオイルの頻繁な点検、補充、交換が不可欠だ。

そして前述のアペックスシールは摩耗しやすい部品のひとつ。極端に摩耗すると燃焼室の密閉が保たれなくなり、圧縮漏れ、エンジンオイル切れを起こしやすくなってしまう。少なくとも走行距離10万km程度でのエンジンオーバーホールによる交換が必要だろう。

アペックスシール ▲アペックスシールは燃焼室の気密を保つ重要な部品だ
 

マツダにおけるロータリーエンジンの変遷

かつては世界中の様々なメーカーが開発を行ったロータリーエンジンだったが、現状、新車、中古車として購入可能なモデルはほぼマツダ車のみと考えてよい。

そもそもロータリーエンジンを発明したのはドイツの技術者であるフェリックス・ヴァンケルだった。その技術を用いて実用化したのが、西ドイツ(当時)のNSU(後にアウディに吸収合併)という会社だ。NSUは1960年代に自社のロータリーエンジン車を製造、マツダとも技術提携した。

しかし、NSUから提供されたエンジンはあまりにも未完成で、とてもそのまま量産できるものではなかった。中でもハウジング内部とローターの摩擦によりチャターマークという波状摩耗が発生する現象は致命的な問題で、マツダは多大な労力とコストを使って独自にアペックスシールの開発を行った。
 

コスモスポーツ ▲コスモスポーツには、491cc×2ローターの10A型エンジンが搭載された

数々の難題を克服したマツダはついに1967年、国産車で初めてロータリーエンジンを搭載したコスモスポーツを発売。その後、ファミリア、カペラ、サバンナなどへと採用車種を拡大していく。

当初、ロータリーエンジンの開発に積極的かに見えたシトロエン、メルセデス・ベンツなどのメーカーは問題を克服できずに撤退。1970年代以降、ロータリーエンジンを搭載する量産車を発売したのは世界中でマツダのみとなった。

その後も技術開発は継続されたが、レシプロエンジンの性能向上とともにロータリーエンジンの必然性は弱まり、1996年以降は同社のスポーツモデル、RX-7のみに搭載されることとなった。駆動力を担うエンジンとしては、2003年に発売されたRX-8が最後のロータリーエンジン搭載車種となる。

RX-8の生産終了以降、ロータリーエンジン搭載車の製造を完全にストップしていたマツダだが、今年9月に発表されたMX-30ロータリーEVで約11年ぶりに復活させた。

MX-30ロータリーEV ▲ロータリーエンジン搭載のPHEVモデル、MX-30ロータリーEV

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マツダ MX-30ロータリーEV(初代)
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マツダがMX-30でロータリーエンジンを採用した理由

駆動用ではなく、発電(充電)用のみのエンジンだが、時を経てロータリーを採用した理由とは何だったのだろう?

MX-30ロータリーEV開発主査の上藤和佳子氏によると、その目的はあくまで省スペース化のためだったという。もともとMX-30はレシプロエンジンを搭載するモデルと、モーターを搭載するモデルが先行して発売していた。PHEV化するには、フロントにモーターとエンジンの両方を搭載しなければならない。5ナンバー枠のコンパクトなボディにこれらを収めるには、ロータリーが唯一の選択肢だったということだ。

MX-30ロータリーEVに搭載するにあたり、マツダはロータリーエンジンを新規開発。世界初の直噴化に成功するなど、新たな技術が数多く採用された。

ファンとしては駆動用エンジンとして復活してほしかった……というのが本音だろうが、実際のところ、低振動・低騒音というロータリーの特性はPHEVの発電用エンジンとして非常によくマッチしている。

低回転域でトルクが細く、高回転域に強いという特性も、エンジン回転数、負荷を自在に制御できる発電用エンジンなら問題にならない。ロータリーエンジンの新たな可能性が開かれたといえる。

 MX-30 ▲コンパクトなエンジンルーム内にモーターとエンジンの両方を収めるため、MX-30にはロータリーが採用された。エンジンは駆動系とつながっておらず、発電に徹する
 

中古車で買えるロータリーエンジン搭載車①|マツダ RX-7

 RX-7 ▲ローワイドなシルエットと有機的なフォルム、リトラクタブルヘッドライトなど、RX-7はスポーツカーらしい要素をすべて備えた車だ

ここからは、現在の中古車として購入できる主なロータリーエンジン搭載車を紹介する。生産終了から20年を経ても絶大な人気を誇るスポーツモデルが、マツダのRX-7(FD3S型)だ。

RX-7(FD3S型)は先代のサバンナRX-7(FC3S型)に代わるモデルとして1991年に登場。デビュー当初は販売店系列の名前である「アンフィニ RX-7」として発売された(1996年に「マツダ RX-7」へと変更)。

654cc×2ローターの13B型エンジンはシーケンシャルツインターボ化され、最高出力188kW(255ps)/6500rpmにまで高められた(後期モデルのMT車では280psにまでパワーアップ) 。

ボディ剛性の高さや四輪ダブルウィッシュボーン式サスペンション採用による接地性の高さ、車両重量1240~1330kgという軽さ、そしてロータリーエンジンの強烈な加速フィーリングは、現代のスポーツカーにも決して見劣りしない魅力だ。

新車当時の価格は289.8万~421.7万円だったが、現在の中古車市場における平均価格は457.6万円。流通台数は100台前後だ。新車では似ているようなモデルさえない希少性が、RX-7の価値をいっそう高めている。

年式や走行距離を考えると価格はかなり高めの水準だが、中には2000年式・走行距離9.1万kmの「タイプRB」で総額307.4万円といった物件も見つかる。なお、走行距離が10万km以上の物件を狙うときはアペックスシールの劣化によるエンジンの圧縮不良が起きていないか、しっかり確認しよう。

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マツダ RX-7(FD3S型)
 

中古車で買えるロータリーエンジン搭載車②|マツダ RX-8

 RX-8 ▲フリースタイルドアの採用で、乗降性とスタイリング、ボディ剛性を見事に両立した

RX-7の後を継ぐモデルとして、同車の生産終了と同年の2003年に登場したのがRX-8だ。RX-7との最も大きな違いは、後席の居住性を高めつつ、4ドア化された点。

スポーティなスタイリングを保つために、後部ドアを観音開き式とする「フリースタイルドア」が採用された。ピラーをボディ側でなく後部ドア内に内蔵するなど、開口部を大きくしつつ、ボディ剛性を稼ぐ工夫も見られる。余談だが、この「フリースタイルドア」はMX-30にも採用されている。

エンジンについてはRX-7と同じ13B型だが、排気ポートをローターハウジング内周ではなく、側面とするサイド排気ポートを初採用。さらに自然吸気としながら、従来のターボチャージャー搭載エンジンと同等の動力性能を実現した。スポーティな走りと乗りやすさ、家族でも乗れる快適性が両立された希有なモデルだ。

中古車市場での流通量はRX-7よりも圧倒的に多い450台前後。中古車平均価格も95.3万円とリーズナブルだ。年式では2003~2009年に生産された物件が多いものの、生産終了間際の年式も少なくない。

走行距離5万km以下の物件に絞って検索しても、約70台が見つかる。一例を挙げると、2003年式・走行距離3.8万kmの「タイプE」で総額45.2万円。ロータリーフィーリングを堪能できる最後のモデル、しかも日常使いもスポーティな走りも楽しめるモデルが、この価格で手に入るのはオトクだろう。

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マツダ RX-8(初代)

※記事内の情報は2023年11月1日時点のものです。
 

文/田端邦彦 写真/篠原晃一、マツダ
田端邦彦(たばたくにひこ)

自動車ライター

田端邦彦

自動車専門誌で編集長を経験後、住宅、コミュニティ、ライフスタイル、サイエンスなど様々なジャンルでライターとして活動。車が大好きだけどメカオタクにあらず。車と生活の楽しいカンケーを日々探求している。プライベートでは公園で、オフィスで、自宅でキャンプしちゃうプロジェクトの運営にも参加。