Aクラスセダン ▲新車を買うとなると安くても総額900万円以上、旧型の中古車でも後期型は500万~700万円超の世界となるメルセデス・ベンツ Eクラスですが、旧型(W213)の前期型であれば、総額200万円台前半から狙うことができます。もしも総額200万円台でW213を狙うとしたら、オススメグレードはどれになるのか? 考えてみることにしましょう

「総額200万円台の旧型Eクラス」は賢い選択か?

2016年7月に登場したW213こと旧型メルセデス・ベンツ Eクラスは、当時のメルセデスの最新デザインを取り入れたエクステリアと、Sクラス譲りの上質なインテリアが魅力となるプレミアムなセダン。そして、当時のSクラスに搭載されていたものをさらに進化させた運転支援システム「ドライブパイロット」を採用したことでも話題となりました。

そんな旧型Eクラスは、2020年9月にマイナーチェンジを受けた「後期型」を狙おうとすると、一番安い部類の中古車でも総額は軽く500万円を超えます。ちなみに高い部類の中古車は総額700万円以上です。

とはいえ、マイナーチェンジ前の「前期型」であれば総額200万円台で、しかも200万円台の前半から狙うことも可能な市況となっています。

天下のEクラスをお安く狙えるのはうれしいことですが、しかしそれって賢い選択なのでしょうか?

次章以降、モデル概要のふりかえりを含め、お手頃価格な旧型メルセデス・ベンツ Eクラスの中古車事情について考えてまいります。
 

Aクラスセダン▲プラグインハイブリッド車としてディーゼルエンジンを搭載するE350 de アバンギャルド スポーツ
 

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メルセデス・ベンツ Eクラス(旧型・5代目) × 全国
 

モデル概要:伸びやかなフォルムのプレミアムサルーン

日本では2016年7月に発売となったW213型メルセデス・ベンツ Eクラスは、メルセデスの中型サルーンが「Eクラス」と名乗るようになってから数えて5代目にあたるモデル。

ボディサイズは全長4930mm×全幅1850mm×全高1455mmで、従来型(W212型)と比べてさほど大ぶりにはなっていません。しかし全長とホイールベースが延長されたことで、室内スペースが拡大されると同時に、従来型以上に伸びやかで美しいフォルムを獲得しています。

インテリアには、セグメント初となる2つの高精細12.3インチワイドディスプレイを搭載。そしてステアリングホイールにはタッチコントロール機能を装備し、多くの操作はステアリングから手を離すことなく行えるようになっています。
 

Aクラスセダン▲こちらがW213こと旧型メルセデス・ベンツ Eクラス。写真は前期型
 
Aクラスセダン▲トランクルームの容量は標準で540L。後席を倒せばさらに拡大できる
 
Aクラスセダン▲ディスプレイパネルのサイズは12.3インチ。ドライバー正面の液晶ディスプレイの表示は「クラシック」「スポーツ」「プログレッシブ」という3種類のデザインから任意のものを選ぶことができる
 

デビュー当初の基本的なパワーユニットは、最高出力184psまたは211psの2L直4ガソリンターボと、同333psをマークする3.5L V6ガソリンツインターボ、そして新開発された2L直4ディーゼルターボ(最高出力195ps/最大トルク400N・m)の4種類。トランスミッションはいずれも9速ATです。

運転支援システムは、当時のSクラスに搭載された「ドライブパイロット」の進化版を搭載。高速道路上で半自動にてレーンチェンジを行える「アクティブレーンチェンジングアシスト」の他、歩行者などとの衝突の危険を検知した際に、ステアリングトルクを制御することでドライバーの危機回避操作を支援する「緊急回避補助システム」も採用されています。

デビュー後は2018年から2019年にかけてエンジンラインナップを刷新し、2020年9月にはやや大掛かりなマイナーチェンジを実施し、いわゆる後期型へ進化。そして現行型Eクラスが登場する2024年初頭まで販売が続けられた――というのが、旧型メルセデス・ベンツ Eクラスの大まかなモデルヒストリーです。

2020年9月に行われたマイナーチェンジの内容については、次章にて詳述します。
 

Aクラスセダン▲こちらが2020年9月以降の後期型
 
 

前期型と後期型の差異::決定的な違いはないが、デザインと運転支援システムは後期型が優勢

総額200万円台前半から狙うこともできる「前期型」と、安めのものでも総額500万円を超える「後期型」は何が異なるのか? 以下、ポイントごとに整理してみましょう。

●ボディサイズ
売れ筋グレードである「E200 アバンギャルド スポーツ」同士で比べた場合、以下のとおり、後期型の全長は10mm短くなっています。しかしこれは基本構造が変更されたわけではなく、マイナーチェンジ時にフロントバンパーまわりのデザインが少し変わったゆえの違いです。したがってボディサイズは「前期型も後期型も同じ」ということになります。
 

Aクラスセダン▲前期型E200 アバンギャルド スポーツは全長4950mm×全幅1850mm×全高1455mmで、ホイールベース2940mm
 
Aクラスセダン▲同じくE200 アバンギャルド スポーツの後期型は全長4940mm×全幅1850mm×全高1455mm、ホイールベース2940mm
 

●エクステリア
もちろんデザインについての感じ方は人それぞれですが、ここは「明らかに後期型が有利」といえるポイントでしょう。

後期型では、ヘッドランプの造形は現行世代のメルセデスに近い「やや切れ上がった形状」に変わり、ラジエターグリルも下部が広い台形に。そしてバンパー下部の側方に配置された2本のフィンも、デザインを現代的に見せるうえで利いています。またリアエンドも横長の2分割型リアコンビランプが採用されたことで、全体のワイド感とダイナミック感、そして「今っぽさ」が強調されました。

これに対して前期型のエクステリアは、決して悪くはないのですが、やはり「1世代前のデザインだなぁ」と感じさせるものはあります。
 

Aクラスセダン▲前期型のビジュアル。単体で見る限りでは、特に古さは感じないが
 
Aクラスセダン▲こちらは後期型。こうして並べてみると、やはり後期型の「今っぽさ」が際立つ
 

●インテリア~先進安全装備
後期型はカーナビや運転支援システムの設定がすべて手元で完結できるようになり、ハンズオフの検知もトルク感応式センサーからリムの静電容量式センサーに変更。またインフォテインメントシステムは、ドライバーのジェスチャーを読み取ることで各種ライトを点灯させたり、Vサインをかざすことでアンビエントライトの設定画面など、プリセットされたお気に入りメニューを表示できるようになりました。

さらにAR (拡張現実) を使ったナビゲーションシステムでは、車両の前面に広がる実際の景色をナビ画面の一部に映し出し、直感的にどの道路に進むべきかを示す機能を追加。また運転支援システムに関しては、後期型はEクラスとしては初めて、停車時にドアを開けようとした際に後方から迫る障害物の存在を知らせる警告機能が追加されています。

以上のとおり、「より便利」なのは間違いなく後期型なわけですが、前期型のインフォテインメントや運転支援システムも、内容的には普通に十分です。さらに「ジェスチャーでいろいろなことができる」というのはまぁ便利ではありますが、同時に「別になくてもいい」とも言える部分かもしれません。
 

Aクラスセダン▲こちらが前期型の運転席まわり
 
Aクラスセダン▲こちらは後期型。アクティブステアリングアシストを使用している際のハンズオン検知方法は、トルク式から静電容量式に変更された
 

●パワートユニット
マイナーチェンジ時、日本仕様のディーゼルターボエンジンは変更を受けませんでしたが、ガソリンターボエンジンは、前期型と後期型で大きく異なります。というか、正確には2020年9月のマイナーチェンジ時ではなく、その前の2018年から2019年にかけて、旧型Eクラスのパワーユニットは下記のとおりの変更を受けました。

【E200】
初期は最高出力184psの2L直4ターボ
→2019年3月以降は1.5L直4+マイルドハイブリッドシステム

【E250】
初期は最高出力211sの2L直4ターボ
→2019年3月以降は最高出力258psに。車名もE250から「E300」に変更

【E400】
初期は最高出力333sの3.5L V6ツインターボ
→2018年8月以降は最高出力367psの3L V6ツインターボに。車名もE400から「E450」に変更

パワーユニットに関しても「後期型の方が何かとイイ」のは間違いないでしょうが、同時に「前期型でも特に問題はない」とは言えるはずです。

それでは次章、以上を踏まえて「前期型のオススメグレード」を具体的に考えてまいります。

 

中古車のオススメ①:定番は総額200万円半ば以上の「E200 アバンギャルド スポーツ」

2025年1月上旬現在、旧型メルセデス・ベンツ Eクラス全体の中古車流通量は約320台で、そのうち前期型は、総額190万~470万円付近で約220台が流通しています。その約220台のうち、今回のテーマである「総額200万円台」という予算感に合致する物件の数は約110台と、まずまず豊富です。

その中でのオススメというか注目すべきグレードは、流通量が最も豊富で取捨選択がしやすい「E200 アバンギャルド スポーツ」でしょう。
 

Aクラスセダン▲「アバンギャルド スポーツ」は、AMGスタイリングパッケージや19インチホイールなど、スポーティなビジュアルと装備が特徴となるパッケージ
 

前期型のE200系は、これまで述べてきたとおり最高出力184psの2L直4ガソリンターボエンジンを搭載する系統で、その中でも「アバンギャルド スポーツ」は、AMGスタイリングパッケージ(フロントスポイラーおよびサイド&リアスカート)や19インチAMG5ツインスポークアルミホイール等々のスポーティな装備が標準となる、端的にいってしまえば「カッコいいグレード」です。

こちらは2025年1月上旬現在、総額200万円台で約40台が流通しています。そのうち総額200万円台前半の物件は走行距離がかなり多めだったりもするのですが、「総額200万円台半ば以上」を目安にしたうえで、さらに内外装コンディションや整備履歴のチェックを重ねれば、まずまず素敵な1台が手に入るはずです。

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メルセデス・ベンツ Eクラス(旧型・5代目) × E200 アバンギャルド スポーツ ×全国

E200 アバンギャルド スポーツと比べると流通量が少なめにはなってしまうのですが、よりパワフルな2L直4ガソリンターボを搭載した「E250 アバンギャルド スポーツ」と、トルクフルな2L直4ディーゼルターボを搭載した「E220d アバンギャルド スポーツ」も、同じく総額200万円台半ば以上で検討可能です。E200でも不足はないはずですが、「よりパワフルな方がいい!」とお考えの場合は、数はやや少ないのですが、そちらもチェックしてみてください。
 

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メルセデス・ベンツ Eクラス(旧型・5代目) × E250 アバンギャルド スポーツ ×全国

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メルセデス・ベンツ Eクラス(旧型・5代目) × E200d アバンギャルド スポーツ ディーゼルターボ ×全国
 

>中古車のオススメ②:ゆったりめに乗りたいなら「E200 アバンギャルド」

前章でオススメとして挙げた「E200 アバンギャルド スポーツ」は、確かにカッコいいビジュアルです。それゆえ、買えば気分もアガることでしょう。

19インチが標準となるタイヤ&ホイールは、まあまあけっこうな硬さを乗員に感じさせます。もちろん乗り心地の感じ方には個人差がありますので「19インチ上等!」という人もいらっしゃるでしょう。

しかし、「自分は、せっかくメルセデスに乗るのであれば、乗り味も見た目も『スポーティ!』というよりは『落ち着いた大人のニュアンス』を好む」という人だっているはずです。

もしもそう考えるのであれば、オススメは17インチ5スポークアルミホイールが標準となる「E200 アバンギャルド」です。
 

Aクラスセダン▲「アバンギャルド」にはAMGスタイリングパッケージは装着されず、ホイール径も19インチではなく17インチとなる
 

こちらであれば、いかにもメルセデスらしい落ち着いた乗り味と、やや地味かもしれませんが、落ち着いたニュアンスのビジュアルに浸ることができます。大きなお世話かもしれませんが、個人的にはこちらの方がオススメです。。

「E200アバンギャルド」の総額200万円台における流通量は、同アバンギャルド スポーツほど多くはないのですが、それでも15台ほどが総額200万円台で流通しています。その中から内外装コンディションと整備履歴に優れる1台を見つければ、きっと素敵な「Eクラス生活」が送れることでしょう。

ただ、残念ながら「ディーゼルターボエンジンを積む200万円台のアバンギャルド」は少なめであるため、選択肢はガソリンターボが中心にはなるのですが。>
 

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メルセデス・ベンツ Eクラス(旧型・5代目) × E200 アバンギャルド ×全国

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メルセデス・ベンツ Eクラス(旧型・5代目) × 全国
文/伊達軍曹 写真/メルセデス・ベンツ、篠原晃一
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツR EX Black Interior Selection。

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