フォルクスワーゲン ゴルフ GTI▲ハッチバックを代表するゴルフのハイパフォーマンスモデル。ベースモデル同様に内外装のブラッシュアップやインフォテインメントシステムを改良。2Lターボエンジンの出力向上をはじめ、走行性能もアップデートされている

真摯にユーザーに向き合ったアップデート

1974年のデビュー以来、今年で50年という節目を迎えたフォルクスワーゲン ゴルフの現行モデルは、2020年に登場した“ゴルフ8(VIII)”。今春、改良されてデビューしたその最新版はちまたではゴルフ8.5と呼ばれている。その長い歴史の中で、モデルライフ中盤の改良型が「.5」を付けて呼ばれたことはなかったはず。それはとりも直さず、寄せられる期待の大きさを表している。単なるフェイスリフトじゃないよね? という……。

ゴルフ8は先代のゴルフ7から基本骨格を継承しながら、デザインやインフォテインメントなどの部分を中心に大幅なアップデートを遂げていたが、市場では厳しい反応もあった。見た目には親しみやすさが薄れ、大胆に進化させたつもりの操作系はかえって使いにくくなり、これらをして「らしくない」と評されてしまったのである。

今回のアップデートでは、主にそうした不満が集中した部分に手が入れられている。ブランドとして、真摯にユーザーに向き合った結果がゴルフ8.5というわけだ。
 

フォルクスワーゲン ゴルフ GTI▲GTI専用のリアバンパーやディフューザー、サイドスカート、リアスポイラーなどを装着
フォルクスワーゲン ゴルフ GTI▲視認性を向上させた12.9インチタッチディスプレイを装着。インフォテインメントシステムはMIB4と呼ばれる最新版が採用された

フォルクスワーゲンの本拠地ドイツ ウォルフスブルク周辺で試乗したのは、ホットモデルのゴルフ GTIである。新しいGTIはエンジンに手が入れられ、直列4気筒2Lターボの最高出力が、従来比20ps増の265psに高められている。一方で、6速MTの設定こそなくなってしまったが、しっかり実力を高めてきたあたりはパイオニアとしてのプライドというところだろうか。

先代との相違点で、すぐに分かるのはヘッドライト。LEDマトリックスヘッドライトの最新版は、よりシャープでスッキリとしたデザインとされて、往年のゴルフらしい表情を取り戻している。

さらにそのフロントマスクは、センターに置かれたVWブランドロゴマークにイルミネーションが仕込まれた。最初にそれを聞いたときには心配したが、実車を見ると決してギラギラしすぎることはなく、質高くそしてアップトゥーデートな雰囲気を演出する仕上がりとなっていた。

新旧の差が一目瞭然なのがインテリア。ダッシュボード中央のタッチスクリーンが最大12.9インチに拡大されている。これは単に画面を拡大しただけでなく操作ロジックを整理したもので、奇をてらったところはないが、それはつまり誰でも容易にアクセスできるということ。画面表示の精細さも含めて、ようやく求められるレベルに達したかなと感じさせた。

室温とボリュームの調整に用いるタッチスライダーは継承された。こちらも照明が内蔵されるなど、使い勝手はしっかりと向上を果たしている。
 

フォルクスワーゲン ゴルフ GTI ▲コンフォートからスポーツまで段階的に減衰力の調整が可能な、アダプティブシャシーコントロール(DCC)がオプションで用意されている

走りの印象は、ピークパワーが明らかに増したというより、全域で力感が底上げされたという感覚。お馴染み7速DSGの切れ味鋭い変速と相まって、どこからでもアクセルを踏み込めば、すぐさま欲しいだけの力が得られる。

もちろん、回せば迫力の吹け上がりを楽しめる。今やのけ反るほどのパワーを、しっかり路面に伝えるトラクション性能も嬉しい。

フットワークの良さにも改めて感心させられた。ゴルフ8になってフロントに電子制御油圧式デファレンシャルロックが標準となり、ブレーキ制御のLSDであるXDS、そしてそれらを統合制御するビークルダイナミクスマネージャーが採用されたシャシーは微舵域から正確にレスポンスし、そのまま大舵角までしっかりとした追従性を示す。

ノーマルモードでは快適性まで鑑みあえて控えめとされたダイレクト感が、スポーツに切り替えた途端、まるでレーシングカートのような前輪との直結感を示すようになり、思わず頬が緩んだ。車任せでサラッと曲がっていくのではなく、自らが操っているという感覚を色濃く残す走りは、さすが元祖ホットハッチの血筋である。

速度域の高いドイツの一般道中心の試乗で、改めてその高い実力を見直すことになった。新しいゴルフ GTIは、変わらない部分と進化した要素のブレンドが絶妙な、まさに今の時代のホットハッチとして文句のない仕上がりとなっている。

気づけばヨーロッパでは、こうした車はほとんど姿を消してしまった。ゴルフ8.5の登場を契機に、改めてGTIの存在、見直してもいいのでは?
 

フォルクスワーゲン ゴルフ GTI ▲新デザインの19インチアルミホイールを装着する
フォルクスワーゲン ゴルフ GTI ▲ヘッドライトのデザインを変更、イルミネーション付きのエンブレムが採用された。ブラックのハニカムエアインテークやX字型のLEDフォグランプは踏襲されている
フォルクスワーゲン ゴルフ GTI ▲GTIのアイコンでもあるチェック柄のファブリックシートに加え、レザーシートも選べる(写真)
文/島下泰久 写真/フォルクスワーゲン

改良前のフォルクスワーゲン ゴルフ GTIの中古車市場は?

フォルクスワーゲン ゴルフ GTI

日本では2022年1月に発売を開始した、8世代目ゴルフのハイパフォーマンスモデル。先進運転支援システムやデジタルメータークラスターのデジタルコックピットプロなど、ベースモデル同様にデジタル化が進んでいる。evo3からevo4へと1世代進化した2Lエンジンは、最高出力245ps/最大トルク370N・mと先代比で15ps/20N・m向上している。

2024年10月上旬時点で、中古車市場には35台程度が流通。支払総額の価格帯は350万~500万円となる。
 

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文/編集部、写真/フォルクスワーゲン グループ ジャパン