手にするものはすべてがアート。自然を愛するアーティストは世界で1台だけのメルセデス・ベンツ Gクラスに乗る
2021/05/30

車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
人と同じではつまらない。車そのものをキャンバスに、理想を描く
カタヤマケンジさん。職業は「アーティスト」。アーティストの中でも画家と呼ばれる人々は、布製のキャンバスや、それに類するものに絵を載せていく。
だが、カタヤマさんにとってはサーフボードや時計のバンド、衣服など、身の回りのすべてが「キャンバス」になる。そこに下描きなしの大胆なペインティングを加えていくのが、カタヤマさんのスタイルだ。
2019年11月に中古車として購入されたブラックの2006年式メルセデス・ベンツ G55 L AMGは、買って早々に「マットホワイト」へと全塗装された。
そして、ゆくゆくはその美しいマットホワイトの上に、取材日にカタヤマさんが着ていたジャケットに描かれているような、蛍光カラーのペインティングがされる予定である。
▲既存のジャケットをそのまま着るのでは面白くない―と、感性のままにカスタマイズを施す油絵画家だった祖父のもとで育ったカタヤマケンジ少年は、絵筆を握るとともに、小学6年生頃から「ファッション」にも強い興味をいだき、結局はファッションデザイン系の学校に進学。
卒業後は、いわゆる一般的なファッションデザインやスタイリストなどの仕事をしつつも、「いつかファッションとアートとを融合させたい」と思い描いていた。
そんなカタヤマ青年が30代になった頃、ずっと昔から身近にあったスポーツ「サーフィン」のボードに、蛍光塗料によるオリジナルのペインティングをするようになった。
そして、それを見た仲間のサーファーから「それいいね! オレのボードにも描いてよ!」と言われるようになり、「まかせとけ!」とばかりにカタヤマさんは無償で描くようになった。
仲間たちからお金を取るつもりはなかったが、施工(?)数が多くなるにつれ「いやケンジくん、さすがにお金払わせてよ!」と言われ始めた。ある意味仕方なく「1本1万円」でボードのペインティングを請け負うことに。
▲センスが光るアートなサーフボード。海でボードを見かけて「素敵ですね」と声を掛けられることもあるとか
▲真っ白い車体にカラフルなボードが映える。ちらりと見える室内もすべてオリジナルで装飾しているこのようなことを繰り返していたら、気がつくと、JEEPやFIAT、GUCCIなどともコラボする「身の回りのモノすべてをアートに変える芸術家、カタヤマケンジ」になっていたのだ。
「このGクラスを買う前は普通のFFやFRの車で毎週のように雪山へ行ってたのですが、やっぱりFRやFFでは登れない場所とかもあったんですよね」
だんだんと「そろそろ四駆に乗ってみてもいいのかもしれないな……」と気持ちが傾きだし、「もしも四駆に乗るならやっぱGクラスだろ。それで、Gクラスで“アートする”のも楽しいんじゃないか?」と思い至った。その後は、前述のとおり一昨年の11月、中古のメルセデス・ベンツ G55 L AMGを購入したのだ。

自然を愛する気持ちと同じように車の変化も受け入れる
「SDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)の観点から言っても、買うなら絶対に新車じゃなくてリサイクル品、つまり中古車だろ?という思いもありましたね」
カタヤマさんの作品は、海や山などの自然からインスピレーションを受けて作られる場合が多い。
高校生の頃から続けているサーフィンも含め、自然が放つ膨大なエネルギーを身体で受け止め、そのエネルギーをアート作品へと昇華させているのだ。そのため、SDGs的な物の考え方は人一倍大切にしているという。
そうして、「手に触れるモノすべてをアートに変える男」ことカタヤマケンジさんのもとにめでたく納車された中古のGクラスは、これまた前述のとおり、すぐさま「マットホワイト」に全身が塗装された。まさに、蛍光塗料をぶちまけるための「純白のキャンバス」の出来上がりである。

「まずは全身マットホワイトの状態で普通にガンガン乗って、全体が汚れてくるのを待つつもりです。汚れや劣化というのも“アート”の一部分ですからね。で、いい感じに汚れてきたら、いよいよ僕の大好きな蛍光塗料の出番になります」
果たしてどのような柄をGクラスのボディに描くべきか――というのはいろいろ考えたというが、最終的には「未定。そのときの気分で、自由に描くことにしよう」と決めたという。
ということで現在、全身のマットホワイトが「いい感じに汚れてくる」のを待っている最中なわけだが、誤算も2つあった。
ひとつは、仕事やサーフィン、スノーボードなどでガンガン使っても、汚れや劣化がなかなか発生しないということ。
そしてもうひとつが、「全身マットホワイトのGクラス」の周囲からの評判が思いのほか高く、実は自分でも「これはこれでかなりイイな……」と思っている――ということ。
▲プロに依頼し、120万円かけてオールペイントした車体。どこから見ても“黒”がないようこだわりぬいたというそのため、「もうしばらくは……。具体的には、納車から丸2年となる今年の11月までは、このままの状態で乗るつもりです。そしてその後、たぶんどこかの浜辺で――当然ですが地面は汚さないようにして――Gクラスというキャンバスに“絵”を描くことになると思います」
1シーズンに20回以上、都内から新潟県など雪のある場所へスノーボードに出かけるために、中古車として購入された2006年式Gクラスの走行距離は、すでに16万kmを超えている。
その相棒を見つめ、カタヤマさんは「僕がずっと乗って、最終的には乗りつぶすつもりですよ!」と明るく笑う。
▲サーフボードを収納するために天井に吊るしたチェーンもオリジナルとはいえ、どうなんだろう?
今年11月以降に生まれる「メルセデス・ベンツ G55 L AMG painted by カタヤマケンジ」は、カタヤマさんが乗りつぶす前に、どこかの好事家から「ぜひ私に売ってくれ!」というような話が出てくるのではないか――と、筆者には思えてならないのだが。
▲こだわりは細部に。カタヤマさんの手にかかれば眼鏡も素敵なアート作品だ
カタヤマ ケンジさんのマイカーレビュー
メルセデス・ベンツ ゲレンデヴァーゲン(G55 AMG)
●購入金額/約700万円(MATT WHITE オールペイント代金120万円)
●年間走行距離/約15000km
●マイカーの好きなところ/BLACKの車体をキャンバスにするため、マットホワイトにオールペンイトを施したところ。おそらく世界ではLOUIS VUITTONのバージルアブローデザインの2台だけではと思っています。
●マイカーの愛すべきダメなところ/狭いところ。ピストバイクや大きい絵などが入らず個展などではレンタカーを使います。
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/サーファーやスノーボーダー。四駆なので砂道、雪道構わず走れます!

自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ。
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