日本カー・オブ・ザ・イヤー▲トヨタ RAV4が最高得点を獲得して、今年のベストカーに選ばれ幕を閉じた【第40回 2019-2020 日本カー・オブ・ザ・イヤー】

圧倒的な評価で「日本・カー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれたRAV4。その他の部門賞も含め、車業界の変化の兆しを感じられた、今回の「日本カー・オブ・ザ・イヤー」。その内容を振り返ってみる。

 

【日本カー・オブ・ザ・イヤー】トヨタ RAV4

トヨタ RAV4▲トヨタ RAV4が日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞! 約3年ぶりに日本市場に復活した4代目RAV4(グローバルでは5代目)は、タフな外観とそれに見合う動力性能が与えられている

RAV4はTNGAに基づいて作られたプラットフォームの完成度の高さ、ダイナミックトルクベクタリングAWDをはじめ、異なる3つの4WDシステムを用意し、高い走破性を実現している。また、使い勝手の良さも多くのユーザーに支持されていることが評価された結果と言えよう。

惜しくも第2位という結果になった、マツダ MAZDA3は官能的なデザインと、世界初の「火花点火制御圧縮着火(SPCCI)」を実現した高効率のガソリンエンジン(スカイアクアティブX)を積んだことが評価された。

 

【インポート・カー・オブ・ザ・イヤー】BMW 3シリーズ セダン

日本カー・オブ・ザ・イヤー▲BMW 3 シリーズセダンがインポート・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞! 通算7代目となるG20型3シリーズ。スポーツセダンならではの走行性能を高めつつ、新たな運転支援機能も盛り込まれている

3シリーズ セダンはスポーツセダンの代名詞とも言える走りを新型でも継承しつつ、数々の先進技術を盛り込みユーザーの所有欲を満たす。3シリーズは歴代モデルがすべてカーセンサーで注目度の高いモデルなので、今回の受賞で来年以降の中古車人気も高まるだろう。

 

【イノベーション部門賞】日産 スカイライン

日産 スカイライン▲日産 スカイラインがイノベーション部門賞を受賞! ダイレクトアダプティブステアリングや、2台前を走る車両の車間・相対速度をミリ波レーダーでモニタリングする前方衝突予測警報など、世界初の技術が搭載されている

スカイラインは3D高精度地図データを用い、滑らかなステアリング制御や道路形状を予測した速度制御、高速道路でのハンズオフドライブや車線変更などを実現したプロパイロット2.0を世界初搭載したことが評価された。

 

【エモーショナル部門賞】ジープ ラングラー

日本カー・オブ・ザ・イヤー▲ジープ ラングラーがエモーショナル部門賞を受賞! 11年ぶりにフルモデルチェンジされた4代目ラングラー。デビュー以来変わらぬ骨太なスタイリングが特徴

本来持つオフロード性能の高さをさらに向上させたうえに、オンロードにおけるパフォーマンスも大幅にアップ。また、ラングラーは購買者の平均年齢が30代とかなり若い。若い世代に、強く支持されていることがよく分かる。

 

【スモールモビリティ部門賞】日産 デイズ、三菱 eKクロス/eKワゴン

日本カー・オブ・ザ・イヤー▲日産 デイズ 三菱eKクロス/eKワゴンがスモールモビリティ部門賞を受賞! 高速道路同一車線での運転支援技術「プロパイロット」(三菱での名称はマイパイロット)を軽自動車で初搭載し、ドライバーが負担を感じる渋滞走行や長時間の巡航走行でのストレスを軽減している

日産 デイズ、三菱 eKシリーズは、軽自動車にもユーザーが求める先進技術を搭載したことが評価された。今や日本で売れる新車の4割が軽自動車という時代。そんな中で日産 デイズ、三菱 eKシリーズ、ダイハツ タント、ホンダ N-WGNという3車種がノミネートされたことは、時代を象徴するトピックと言えるだろう。

 

選考委員を直撃!
今年の「日本カー・オブ・ザ・イヤー」を総括してください!

日本カー・オブ・ザ・イヤー▲表彰式後、余韻の残る中、カーセンサーは4人の選考委員の方々を直撃し、生の声を聞いてきました!(選考委員の配点は日本カー・オブ・ザ・イヤー公式HPより)


【自動車ジャーナリスト/モータースポーツMC 今井優杏氏】

TNGAの熟成。今回のカー・オブ・ザ・イヤーを選ぶにあたり、あらためてそれを強く感じました。

私はエントリーされたトヨタ車の両方に点数を入れました。カローラ/カローラツーリングは5ナンバーから3ナンバーになり、RAV4はボディをより大型化した。

どちらも大きな変化ですが、それを恐れない車づくりをしたことで、さらに魅力が増したと思います。

かつてトヨタといえば保守的なイメージが強かったと思います。でも今は変化を恐れず、ワクワクする車づくりをしてくれる。今後のトヨタへの期待を込めて、2モデルに点を入れました。

2位のMAZDA3も、高得点でしたね。日本車がここまで高いレベルで競い合うのはとてもうれしいことです。その中で3位に入りインポート・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した3シリーズには手堅さを感じました。

【今井氏の配点】
●トヨタ RAV4 10点
●BMW 3シリーズセダン 6点
●ジープ ラングラー 4点
●トヨタ カローラ/カローラツーリング 3点
●マツダ MAZDA3 2点

【モータージャーナリスト 小沢コージ氏】

毎年思いますが、カー・オブ・ザ・イヤーはおもしろいですよ。カー・オブ・ザ・イヤーは奥さん選びをするようなもので、自分の投票と違うと「なんでそこを選ぶの?」と思ったり。裏を返せばカー・オブ・ザ・イヤーという“最大公約数”を選ぶのがいかに難しいかと言えます。

今回RAV4が受賞したのは、トヨタの総合力のたまものでしょう。トヨタのハイブリッドが新世代に入って、燃費もパワーも品質も良くなって、さらに若い人に売れた。そこが評価につながったのだと感じます。

2位のMAZDA3に足りなかったものがあるとすれば、台数でしょうね。発売直後は販売台数が伸び悩んでしまった。スカイアクティブXが最初にドンと出てそれが売れていたら、結果は変わっていたと思います。

【小沢氏の配点】
●マツダ MAZDA3 10点
●トヨタRAV4 7点
●ホンダ N-WGN/N-WGN Custom 4点
●BMW 3シリーズセダン 2点
●ジープ ラングラー 2点

【モータージャーナリスト/AJAJ会員 島崎七生人氏】

RAV4はトータルバランスが良く、ユーザーがSUVに求めるものをうまく取り入れたモデルだと思います。チーフエンジニアの佐伯禎一さんは昔から一貫して“お客様ありき”で物事を考える人。RAV4はまさにそれを具現化したモデルと言えるでしょう。

MAZDA3はとても素晴らしい車ですが、現時点ではまだすべてが出揃っていない。BMW 3シリーズは“スポーツセダンらしい安定の出来”というにはまだほんの数パーセント足りないものがあると僕は感じました。どちらも今後に期待したいモデルです。

個人的には軽自動車が3台ノミネートされたことが大きなトピックでした。今、軽自動車は車としてかなりレベルアップしています。今後、今以上に完成度の高い軽自動車が登場することに期待したいですね。

【島崎氏の配点】
●トヨタRAV4 10点
●BMW 3シリーズセダン 7点
●マツダ MAZDA3 5点
●日産 デイズ 三菱 eKクロス/eKワゴン 2点
●ジープ ラングラー 1点

【モータージャーナリスト/AJAJ会員 島下泰久氏】

今年は日本車が6台に輸入車が3台。そして軽自動車が3台と、すごくバラエティに富んだ内容だったと感じています。それだけに10台の中から1台を選ぶというのはとても難しかったですね。おそらく他の選考委員も同じ気持ちだったのではないでしょうか。だからこそ部門賞がとてもいい感じで機能したと思います。

RAV4とMAZDA3の争いは最終的にかなりの点差が開きましたが、両車はコンセプトからまったく違い、それでいてどちらも海外のマーケットで人気の高いモデルです。そんな2台がカー・オブ・ザ・イヤーを争ったというのは、世界に向けて「日本の車は元気だぞ!」とアピールできたと思います。

カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したRAV4は、実はとてもおもしろい車です。初代がデビューした1994年当時、まわりはいかにもクロカンという感じのゴツいモデルばかり。そんな中に都会的で乗用車ライクなライトクロカンとして登場した。そして現行型はまわりが乗用車っぽいものばかりになった中であえて“ワイルド系”を打ち出しています。

実はRAV4は本流とは裏の道を歩く、SUVの中でもパンクな存在なんですよ。でもそれがマーケットで受け入れられ、時代を代表する車として選ばれた。まさに最近のトヨタのおもしろさを象徴している車ではないでしょうか。

【島下氏の配点】
●トヨタ RAV4 10点
●マツダ MAZDA3 9点
●トヨタ カローラ/カローラツーリング 4点
●ホンダ N-WGN/N-WGN Custom 1点
●BMW 3シリーズセダン 1点

文/高橋 満(BRIDGE MAN)、写真/篠原晃一、日本カー・オブ・ザ・イヤー
高橋満(たかはしみつる)

自動車ライター

高橋満(BRIDGE MAN)

求人誌編集部、カーセンサー編集部を経てエディター/ライターとして1999年に独立。独立後は自動車の他、 音楽、アウトドアなどをテーマに執筆。得意としているのは人物インタビュー。著名人から一般の方まで、 心の中に深く潜り込んでその人自身も気づいていなかった本音を引き出すことを心がけている。 愛車はフィアット500C by DIESEL