普通充電 ▲一時期より設置台数の伸びに鈍化傾向が見られる充電設備だが、政府は2030年までに普通充電器15万基/急速充電器3万基(現在はそれぞれ約2万基/約1万基)を設置する方針。全体の伸びとしては普通充電器の方が勢いがある

さすがに無料はもう限界?

昨年から続く値上げラッシュ。4月単月で見ても品目数は前年の約4倍と、まだまだ止まらない。自動車業界では半導体不足による納期遅れなどが取り上げられて久しいが、ここにきて「ついに来たか」というのがBEV/PHEV向け「充電料金」の値上げである。

現在のBEV/PHEVへの充電設備は「急速」と「普通」の2種類。急速充電に関しては、出力を向上させた高速タイプが拡大しつつある。

その料金に関して、過去、日産が急速充電を使い放題にするZESP2(旅ホーダイ)を展開することで電気自動車ユーザーを一定数増やした。しかし、自宅で充電ができるのに、電気代がもったいないからとディーラーで急速充電を行うユーザーが増えたこともあり(日産側も正式コメントしている)、2019年12月16日より時間課金制の「ZESP3」に変更し現在に至っている。当時は反発もあったが、ZESP3はバッテリー容量や航続距離に応じた複数のプランを設定することで、ユーザーニーズにマッチしたプランとして受け入れられた。
 

急速充電器 ▲車両側の性能向上に合わせて急速充電器の出力も向上。台数は少ないが90kWhも設置され始めている。アウディ・ポルシェ・フォルクスワーゲンの3ブランドが展開する急速充電ネットワークのPCAでは、最大150kWhの高出力CHAdeMO急速充電器の設置を目指している

問題は、これまでプランによって差はあっても基本“無料”であった普通充電にメスが入ったこと。これがBEV/PHEVユーザーを中心にちょっとした話題になっていたのだ。

最初に取り上げるのは4月に“大幅”な料金改定を行ったトヨタである。

詳細は下の表を見てもらえれば一目瞭然だが、改定前は「定額プラン」を選ぶと月額1100円で普通充電は「使い放題」であった(急速は2.75円/分)。改訂前には一度プラン変更が行われたが、それでも普通充電(プランB)は無料が継続されていた。
 

新プラン ▲申し込み期間が2023年3月までの改定前プラン
新プラン ▲“大幅”な料金改定を行ったトヨタ。ユーザー向けの告知を事前に数回行うなど、サポート力の高さはさすがと言える

例えば、大型ショッピングセンターに設置されている普通充電器を使う際、「2000円以上の買い物をすれば駐車料金4時間まで無料」というケースがあったりする。トヨタ プリウスPHVの場合、先々代型プリウスは普通のみ、先代型は普通と急速充電に対応している。筆者が現在保有している先代型なら充電量0から満充電まで約2時間20分(200V/16A)なので、買い物中にほぼ充電が完了している。

しかし、2023年4月以降の新プランの場合は全車種において普通充電が1分あたり4.95円となり、従来のように満充電にする場合、4.95円×140分(2時間20分)=693円かかることになった。もちろん、これは計算上の話で常にこの充電時間がかかるわけではないが、筆者の場合、1ヵ月で3回くらいは充電していたので1500~2000円近く出費が増える計算になる。

さらに、5月17日には日産が「ZESP3」の料金改定を行うニュースが入ってきた。これまで「ZESP3」普通充電は無料だったのだが、9月1日に行われる料金改定後は4種類中3種類のプランで無料を廃止する。プランには月に600分の充電が含まれているが、サクラの場合は満充電まで8時間(480分)を要するので、プランに含まれる時間はあっと言う間に使い切ってしまう。さらに最もインパクトがあったのは「3年間の定期契約で月額1650円をオフ」にする特典の廃止だ。3年間で5万9400円お得をうたっていただけに、普通充電の無料廃止と同様に実質値上げとなってしまう。
 

日産 サクラ ▲日産 サクラは普通&急速両方の充電が可能だが、急速充電は30kWhまでにしか対応していないので、高出力の充電器と接続しても制限がかかるように設計されている

節約のコツは電子マネーと倍速充電

いろいろ調べてみると、充電料金を節約するコツが大きくは2つあることを発見した。

そのひとつが電子マネーの活用である。今後拡大していくかどうかは未知数だが、現在、セブン&アイ・ホールディングスが展開する「nanaco(ナナコ)」とイオンリテールが展開する「WAON(ワオン)」の2種類が決済に活用できる。また、ENEOSスタンドに併設されている急速充電器に対応しているケースもある。施設によって異なるものの、一例としてnanacoの場合、普通充電は1時間120円、2時間240円、3時間360円、つまり1分あたりの金額は2円となり、前述したトヨタの普通充電の半額以下になる。さらに設置数はかなり少ないものの、急速充電に対応しているケースもある。
 

nanaco ▲電子マネー「nanaco(画像は筆者所有のシニアnanaco)」は月会費不要、充電時間が早く終了した際には次回以降に繰り越して使うことができる

そして、もうひとつが普通充電における「倍速化」である。

普通充電器は3kW/15A(前後)が現在の主流だが、新たに普及しつつある6kW/30Aの充電器で充電するという方法だ。同じ容量の電気を充電する場合、理論上、出力が倍なので充電時間が半分になり、分単位課金ならば料金が半分になる。

そして、徐々にではあるが、6kW充電器は増えてきている。筆者の自宅近隣のイオンにある普通充電器(5基)はすでに3kWから6kWに変更を完了。買い物などの際に、バッテリー容量の大きいBEVが充電しているのを見かけるようになった。この6kW普通充電器を積極的にビジネス展開しているのが「ENECHANGE(エネチェンジ)」をはじめとする複数のエネルギーベンチャーだが、企業や施設だけでなく、集合住宅への設置なども行っているという。
 

普通充電器 ▲徐々に増えてきた200V/30Aの6kWh普通充電器。急速充電器より設置コストがはるかに安いので現在設置されている3kWhタイプからの変更も比較的容易である

トヨタはBEVは急速充電、PHEVは普通充電を重視しており、新型プリウスやハリアー、RAV4のPHEVは普通充電にしか対応していない。このように、今後のPHEVは普通充電のみを搭載する流れになっていくのではないだろうか。BEVは急速充電が必須だが、PHEVは車両で発電して充電できるので、(燃費は落ちるものの)それほどナーバスにならなくていい。

今回の充電料金に関しては契約している充電カード会社や施設によって異なり、すべてが共通ではないことは断っておくが、いずれにせよ再び電気料金が値上げされる中、「充電」が必要な電動車両のオーナーや購入検討者はシビアに情報をキャッチアップしておく必要があるだろう。
 

プリウス(旧型)充電口 ▲旧型プリウスPHV(ZVW50系)には普通充電の他、メーカーオプションでV2H(外部給電機構)付き急速充電機構が7万7000円で設定されていた
“トヨタ ▲旧型プリウスPHVのリチウムイオンバッテリーの容量は8.8kWh。普通充電なら2時間20分で満充電できるが、倍速充電には対応していない
トヨタ プリウス ▲こちらは新型トヨタ プリウスPHEV。トヨタはBEVの市場拡大に対しての急速充電スタンド普及率を考慮し、新型では急速充電を非搭載とし、V2Hへの対応も見送ったと説明している
文/高山正寛、写真/萩原文博、高山正寛、トヨタ、日産自動車
“高山正寛

カーコメンテーター、ITSエヴァンジェリスト

高山正寛

カーセンサー創刊直後から新車とカーAV記事を担当。途中5年間エンターテインメント業界に身を置いた後、1999年に独立。ITS Evangelist(カーナビ伝道師)の肩書で純正・市販・スマホアプリなどを日々テストし普及活動を行う。新車・中古車のバイヤーズ系と組織、人材面からのマーケティングを専門家と連携して行っている。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。認定CDRアナリスト&CDRテクニシャン。愛車はトヨタ プリウスPHV(ZVW52)とフィアット 500C