アルピーヌ・ルノー A110▲軽自動車からスーパーカーまでジャンルを問わず大好物だと公言する演出家のテリー伊藤さんが、輸入中古車ショップをめぐり気になる車について語りつくすカーセンサーエッジの人気企画「実車見聞録」。誌面では語りつくせなかった濃い話をお届けします!

A110にスキー板を積んでゲレンデに行く。これが人生の勝者です!

~語り:テリー伊藤~

毎度お馴染み、東京・等々力にあるコレツィオーネで、ものすごい車を発見しました。アルピーヌ・ルノー A110です。

僕にとって、ディーノと並ぶアイドル。いや、ディーノより何倍も好きなモデルです

ラリー・モンテカルロでA110が黄色いライトを点灯して雪の中を疾走しているシーンを何度見たことか。

2018年に日本導入されたアルピーヌ A110もいいですよね。両方をガレージに並べられたら最高です

アルピーヌ・ルノー A110
アルピーヌ・ルノー A110▲RRの駆動方式が生んだ美しいボディライン。僕にとって永遠のアイドルです!

僕の世代は16歳で車の免許を取れたこともあり、現在の高校生よりも車に対する憧れは強かったと思います。

ちょうど富士スピードウェイがオープンして、トヨタ 7と日産 R380の戦いが新聞の一面になっていた時代ですからね。休み時間は教室の後ろに集まり、車の話ばかりしていた。その中でも、A110は別格でした

大学生になると今度はスキーです。自分の車のルーフにKNEISSLやSCOTTの板を積んで志賀高原や苗場に行くのがステータスでした

アルピーヌ・ルノー A110▲黄色いフォグランプをつけて雪の中を疾走する姿に憧れました

現在ではスキーやスノーボード、サーフボードは車内に積みたいと考える人が多いですよね。その方が板をサビなどから守ることができる。ミニバンやSUVに人気が集まる理由のひとつにもなっています。

でも、当時はスポーツカーにルーフキャリアを付けて外積みするのがカッコ良かったんですよ。きっと自分の板を他の人に自慢したいという気持ちもあったのだと思います。

そして、どんな車を選べばゲレンデのリゾートホテルに映えるか。これが車選びの基準でもあったのです。

アルピーヌ・ルノー A110▲この車は1971年式で1560ccエンジンを積んだ1600S

テリー伊藤ならこう乗る!

A110は昔から中古車相場が高いことで知られています。もちろん現在でも高値で取引されていますが、ディーノやトヨタ 2000GTが5000万円以上することを考えると、逆にお値打ちだと思います

高いけれど、まだ手に入れられなくはない相場をキープしていることを考えると、フランス車って夢がありますね。

僕は車を投機対象にすることには賛同しかねますが、それでもこんなに楽しい車を手に入れて、数年間楽しんだ後に手放したら、買ったときより高くなっている可能性があるのであれば悪くない話ですよ。

タンス預金よりもよっぽど賢いお金の使い方だと思います

アルピーヌ・ルノー A110
アルピーヌ・ルノー A110▲コックピットは驚くほどタイト。体の大きな人だと乗り込むことすら苦労します

A110の運転席に座ってみると、あまりの狭さに驚きます。体を入れるのも一苦労。そして足元も狭く、今時の幅広シューズだとアクセルとブレーキを両方踏んでしまう危険があるほど。

でもこの“楽”の真逆にあるところがロマンチックです

洋服もファストファッションは機能的で楽ですが、それだけじゃ人生はつまらない。

タイトなスーツ、革のパンツ、10cm以上のハイヒールなど、苦労を隠してでもカッコよさを追求するのがよかったりする。A110はそれと同じです。

アルピーヌ・ルノー A110▲乗り手を選ぶ車だからこそ、所有する喜びも大きい。それを強く感じました

A110を運転するために、わざわざ幅の狭いドライビングシューズを用意する。そして、運転するときはシューズを履き替えコックピットに乗り込む。この“儀式”があるからこそ、A110には価値があるのだと思います。

いつも低価格帯の、それこそ30万円で買える中古車をおもしろがって探している僕ですが、A110だけはガレージハウスで車を眺めながら、その美しさを堪能したいですね。

隣にはミッション系大学を卒業した奥さんがいて、家の中でも靴を履いている。そんな絵に描いたような幸せな暮らしをしてみたい。

アルピーヌ・ルノー A110
アルピーヌ・ルノー A110▲1970年代のラリーシーンをほうふつさせるステッカーが、若い頃に見た勇姿を思い出させます

ボディに貼られたステッカーも素敵ですね。モンテカルロを走る姿がよみがえります。やりすぎと感じる人もいるでしょうが、買う人は高いお金を出すのですから、やりすぎなくらいがちょうどいい。

このステッカーはコスプレです。これを見るだけで僕の気持ちは一気に60代後半に戻れます。その意味で、古い車はタイムマシンのようなものですね

見ているだけで精力剤を10本くらい飲んだ気分になる。そんな車、めったにお目にかかれませんよ! 今回もいい車に出会えました!

アルピーヌ・ルノー A110▲車は動かしてこそ価値があると思っていますが、これだけはガレージに飾っておきたいですね

アルピーヌ・ルノー A110

ルノーのチューンナップ車両を手がけていたアルピーヌ社が、自社製の鋼管バックボーンフレームにルノー R8のコンポーネントを組み込んでFRP製ボディをかぶせる形で生み出されたA110。誕生の経緯はラリーで勝つため。エンジンを後輪車軸後方に配置しRR方式により圧倒的な軽量化と駆動輪への強烈なトラクションを実現。A110はフランス国内のラリーに出場した後、1968年にラリー・モンテカルロに参戦。1973年からスタートした世界ラリー選手権(WRC)では、初代マニュファクチャラーズ選手権を獲得した。

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アルピーヌ・ルノー A110(初代)×全国
文/高橋満(BRIDGE MAN) 写真/デレック槇島

テリー伊藤

演出家

テリー伊藤

1949年12月27日生まれ。東京都中央区築地出身。これまで数々のテレビ番組やCMの演出を手掛ける。現在『爆報!THE フライデー』(TBS系/毎週金曜19:00~)、『サンデー・ジャポン』(TBS系/毎週日曜9:54~)に出演中。新著『老後論~この期に及んでまだ幸せになりたいか?』(竹書房)が発売中。You Tubeチャンネル『テリー伊藤のお笑いバックドロップ』を開設!