生粋のスバリスト・マリオ高野が、27年物の初代インプレッサWRX(GC8)をフルレストア! その中身を赤裸々に公開【後編】
2021/04/14
全塗装で見違えるほど美しくなった愛車
購入から27年目にして全塗装を施し、「新車並み」の外装コンデイションを取り戻した初代インプレッサWRX。
恥ずかしながら管理が悪く、通算3度目の放置状態からの復活ということで、燃料系統やセンサー類が腐っていたなどの不具合は多々ありましたが、全塗装とともに修理を実施して、それらの問題点を解消しました。
とにかく全塗装効果で外装がピカピカになったのがうれしくてたまらず、復活後は新車で買った頃を超える溺愛ぶりです。
しかし、喜びもつかの間。乗れば乗るほどに、次から次へとトラブルが続出します。
喜んだのもつかの間、次々とやってくるトラブル
まずは、初代WRXのウイークポイントのひとつである、エンジン右側のロッカーカバーからのオイル漏れが再発。お約束の定番トラブルであるガスケットの劣化で、通算3度目ぐらいでしょうか。
EJ20エンジンはタービンが右側にあるため、エンジン右側まわりのパーツはタービンからの熱の影響を受けやすく、右側からの油脂類漏れが多発します。
ロッカーカバーからのオイル漏れは2万~3万円で直せるので、それほどの痛手ではないものの、漏れたオイルが排気管に落ちて焦げ、エンジンルームから異臭と煙が出のるがツライところでした。
今回は1日に数滴ほどポトポト漏れる程度のうちに直しましたが、放置すると漏れる量が増えて煙が盛大に出るようになり、最悪車両火災になる恐れがあるので、症状が出たら早めに直すべきポイントです。ガスケットのパーツはディーラーで普通に出ました。
続いては、エンジンルーム内からの異音です。エアコンをONにすると「野鳥のさえずり」のような音が鳴る状態に。これは、エアコンやパワステを駆動させるためのベルトやプーリー類の劣化によるもので、交換により解消。かかった費用は4万円ほどです。このパーツもディーラーで普通に出ました。
さらには、エンジンルーム下側からの「ガラガラ」系の異音が発生。これは排気管の遮熱板の劣化によるもので、この世代のEJ20の定番トラブルのひとつ。
遮熱板を交換すると解消しますが、遮熱板は入手できなくなったので、私がお世話になったスバルディーラーではひとまずボルトやワッシャーなどで異音が出にくくなるよう対策。
数ヵ月のちに異音が再発すると、もはや遮熱板は取り払って、排気管にバンテージを巻くことで熱対策を実施。車検も問題ないので、パーツが入手できない場合の対策のひとつとして紹介します。この作業もディーラーにてやってもらえました。
まぁ、この程度のトラブルは想定内でしたし、修理費用もそれほど高くはないのでよかったのですが……。続いては、費用が高くつくサスペンションに異常が出ます。
乗ってみて分かる不具合も!?
実際に毎日乗るようになると、ダンパーの劣化が急激に進んでいるのが分かりました。
その時点でのサスペンションの仕様は、アイバッハ製のローダウンスプリングと、オーリンズ製の減衰力調整式ダンパーで、いずれも2008年に装着してから13年も経過。
2014年頃までは劣化が気なることはなかったものの、4年の放置を経てから急に激しく走り出したことで、恐らくダンパーの劣化が一気に進んでしまったのでしょう。
寿命を迎えたことを伝える症状としては、まず走行中の異音。特に左のリア側は内部のオイルが漏れるほど劣化していたので、街乗りでも動くたびにドスッ、ドスッとした感じの異音が出るようになりました。
一般的には、ダンパーが劣化すると減衰力がなくなってフワフワしたような挙動が出るものですが、逆にダンパーが固まって動いていないような感覚で、あまりにもひどいガチガチぶり。
特に高速巡航では、ちょっとした段差を通過するだけで尾てい骨が割れそうなほど大きな衝撃が伝わるようになり、直ちにダンパーを交換する必要に迫られます。
これを機に、最新のサスペンションキットを装着するプランを検討するも、その前にダメ元でディーラーに確認したところ、初代WRXの初期型のダンパーがまだ新品で手に入るということが分かりました。
しかし、コイルスプリングの方はフロントのみしかなく、リア用は入手できませんでしたので、前後ともKYB製の強化スプリングを別途購入。
バネレートは少し高いものの、車高は純正と同じなので、長らく続いたローダウン状態からノーマル車高に戻ります。
これが思ったよりも良い感じ! 今時の車と比較すると随分車高が高く見えますが、初代WRX本来の姿に戻ったようで、とてもすがすがしいのです。
圧巻なのは乗り心地の良さ! 走り出した瞬間から、路面からの入力が夢のようにマイルドなものとなり、トロけました。さらにアライメントを調整すると「甘美」と言えるレベルまで走りの質が向上します。
サスペンションストローク量が増した感覚も心地よく、純正ダンパーと純正車高の素晴らしさに大感激です。サスペンションのリフレッシュは約28万円かかりましたが、満足度はすこぶる高いので、激安だったと言ってもいいでしょう。
費用はかかったけれど、手間がかかるほど愛おしい!
続いては、ブレーキ系統の大刷新です。6年前にサーキット走行をした際、ブレーキの片利きが原因でコースアウトしたことも、あまり乗らなくなった理由のひとつになっていました。左フロントのキャリパーが固着しかかっていたのが原因です。キィーキィー系のブレーキの引きずり音も出ていました。
オーバーホールすれば解消しますが、ブレーキの制動力については昔から不満を抱いていたこともあり、レストアモチベーションの高さの勢いで、対向4ポットキャリパーなどの強化品を装着。
16インチのアルミホイールはそのまま履きたいので、16インチホイール対応の対向4ポットキャリパーを用意しているアクレというブレーキパーツメーカーの製品で一式揃えました。
キャリパーやローター、パッドやブレーキホースなど一式で40万円ほどになりましたが、対向4ポットキャリパーでブレーキを強化するのは20年ほど前からの念願でした。また、制動力、ビジュアルとも期待以上の満足感が得られたので、高いとは思いません。
サスペンションとブレーキを一新、かつ強化したことで、車全体のポテンシャルがすさまじくアップした感じです。
その後も、ステアリングギアボックスや冷却水経路のホースが寿命を迎えるなど、要修理箇所の出現はなかなか途絶えず……(笑)。
結局、今回のレストアでは総額で200万円近い費用がかかりましたが、そのかいもあって、サーキットで全開走行を不安なく楽しめるまでに仕上がりました。
通算3度もの放置期間があった27年目の老骨車としては、われながら見事な復活ぶりだと自賛しております。
色は以前と同じブラックマイカながら、最新の塗装を施したせいか、新車時よりも色ツヤが良い印象さえあり、全塗装の威力のデカさを実感。
全塗装だけで約50万円かかりましたが、その額以上の値打ちがあると断言できます!
2021年4月現在、私の愛車初代インプレッサWRXは、購入から27年を経て「今が全盛期!」と胸を張れる状態です。
多少古い車でも、地道に直せば新車時以上の輝きを放つことができる! 今回のレストアでその事実を実感したのでありました。
▼検索条件
スバル インプレッサ(初代)×WRX系グレード×全国ライター
マリオ高野
1973年大阪生まれ。スバル ヴィヴィオを買ったことにより運転の楽しさに目覚め、インプレッサWRXも立て続けに新車で購入(弱冠ハタチ)。新車セールスマン、車両回送員、ダイハツ期間工、自動車雑誌の編集部などを経てフリーライターとなる。27年目のWRXと、GJ3型インプレッサG4 1.6i(5速MT)の2台が愛車の生粋のスバリスト。
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