ジープ レネゲード ▲ジープ レネゲードの上級グレードである「リミテッド」。写真はジープ府中が販売する物件(※現在は売約済み)

今のうちから注目しておきたい「近未来の名車」を探せ

こちらは7月27日発売の雑誌カーセンサーEDGE 9月号に掲載された、自動車評論家・永福ランプ(清水草一)さんの人気連載「NEXT EDGE CAR」の、担当編集者から見た「別側面」である。アナログレコードで言うB面のようなものと思っていただきたい。

なお「NEXT EDGE CAR」というのは、「今現在はまだ名車扱いされていないが、近い将来、中古車マーケットで名車または名品と呼ばれることになるだろうモデルを探そうじゃないか」というのが、そのおおむねの企画趣旨である。

今回の題材は、ジープ初のコンパクトSUVとして2015年に登場した「ジープ レネゲード」の上級グレード、「リミテッド」だ。

ご承知のとおりジープ レネゲードは、「アーバンサイズ。アドベンチャークラス」をテーマとした、全長4255mm×全幅1805mmのSUV。北米基準では紛うことなく「コンパクト」といえる寸法だが、日本の都市部で乗る分には「ミドルサイズよりやや小さいぐらい」といった感じのサイズ感となる1台である。

当初は、最高出力140psの1.4Lターボ+6速DCTとなるFFと、同175psの2.4L自然吸気+9速ATとなる4WDの2種類のパワートレインが用意されていたジープ レネゲードだが、2019年2月のマイナーチェンジでエンジンを変更。

具体的には1.4Lターボと2.4L自然吸気が廃止され、1.3L直4ターボの「マルチエア2」に一本化。そのうえでFF版は最高出力151ps、4WD版は同179psと、それぞれのセッティングを変えている。

で、今回取り上げる「ジープ レネゲード リミテッド」はFFの上級グレードで、マイナーチェンジ後の1.3Lマルチエア2を搭載したリミテッドも存在するのだが、今回の車両はマイチェン前ということで、搭載エンジンは1.4Lのマルチエアターボである。
 

ジープ レネゲード▲同じFFのレネゲードでも「オープニングエディション」のタイヤサイズは215/65R16だったが、リミテッドのそれは215/60R17となる
ジープ レネゲード▲2019年1月まで採用されていた1.4L「マルチエア」ターボエンジン。トランスミッションは6速乾式DCTで、リミテッドのJC08モード燃費は14.6km/L

「FFのジープ」という選択はアリなのか?

まぁリミテッドはレネゲードの中でも、何かと装備類が充実しているグレードではあるのだが、それ以上に論ずべきは「曲がりなりにもジープを名乗るSUVがFFでいいのか? 4WDじゃないとマズいんじゃないか?」というポイントであるはずだ。

ジープというのは、そもそも米軍の軍用車として開発された車であり、現在のメインモデルである「ジープ ラングラー アンリミテッド」も、その気になれば悪路をガンガン走破できる車だ。

そんなジープブランドの末弟であるレネゲードだけあって、コンパクトSUVとはいえ4WDの「トレイルホーク」というグレードは、まずまずの悪路走破性を有している。

もちろん、ラングラーのような超本格的な四駆機構を採用しているわけではなく、あくまで電子制御カップリングを使用するオンデマンド式の4WDであるため、ラングラーのように「道なき道を行く」みたいな使い方ができるわけではない。

しかし、路面状況に応じて5つの走行モードが選べる「セレクテレインシステム」は標準装備されているため、普通に「雪道を走る」「(釣り場などへ行く途中で)砂利道を走る」などする分には、十分以上の走破性能を披露してくれる車ではあるのだ。

だが、今回のジープ レネゲード リミテッドは、ビジュアルこそ無骨なオフローダー風ではあるものの、実際はごく普通のFF車である。もちろん最低地上高はそれなりに高く、「アプローチアングル」と「デパーチャーアングル」も大きめであることから、一般的な乗用車と比べれば悪路走行は得意といえるが、それと同時に「しかし、しょせんはFF」ともいえる車ではあるのだ。

この部分を、我々ユーザーはどう評価すべきなのだろうか?
 

ジープ レネゲード▲レザーシートが装着される「リミテッド」のインテリア
ジープ レネゲード▲米軍などが使っていた燃料容器「ジェリカン」をデザインモチーフとしたテールランプも特徴的

大部分の人にとって、SUVはFFであっても何ら問題ない

その答えは「どうでもいい」である――と、筆者は思う。

FFのジープ レネゲードが購入時の視界に入るということは、そもそも「悪路走行はあまりやらない」ということの証明でもある。ガチで悪路を走る人は、そもそもこの手の車(FFのSUV)は目に入らないものである。そういった人は最初からトレイルホークの一択であるか、もしくはその他車種の本格4WDのみを検討するものだ。

それはそれでもちろん素晴らしい買い物であるが、もしもあなたが下記の条件どれかに、もしくは複数に当てはまらないのであれば、別にわざわざ4WDを選ぶ必要はないのだ。

●豪雪地帯に住んでいる。
●スノーボードあるいはスキーこそが自分の生きがいである。
●ガチな釣り人である。
●ファミリーキャンプではなく、ハードボイルドなキャンプを愛している。
●その他、とにかく悪路を走る機会が多い。

上記のいずれかに当てはまる人には、今回の取材車両は最適とは言えないだろう。同じレネゲードでも4WDのトレイルホークを選ぶか、もしくはさらに本格的な四駆システムを備えているスズキ ジムニーなどを選んだ方がハマるに違いない。

しかし、上記の条件に当てはまる人というのは、日本に在住する人間の何割ぐらいだろうか?

正確な数字は大規模な調査をしてみないことにはわからないが、おそらくは全人口の1割、多めに見積もっても2割ぐらい――といったところであるはずだ。

もしもあなたが残りの8割から9割の人、すなわち「全走行距離の95%ぐらいは舗装路を走る人」であるならば、FFのSUVであっても特に問題はないはずなのだ。

そしてそのうえで、レネゲードならではの精悍な内外装デザインと、オフロードを感じさせるロマン成分、さらには中古車ならではの「お買い得なプライス」が、大いに光るのである。
 

文/伊達軍曹、写真/デレック槙島

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ジープ レネゲード(初代・現行型)×FFモデル×全国

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伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。