エブリイ釣り場への移動やタックルを積み込む車は、もはや釣具だ。釣りを極める者はいかにして車を選び、どのように使っているのか? トップアングラーに釣車へのこだわりを聞いてきた

カスタムショップとともに究極の釣車を追求

幼い頃から釣りを楽しみ、20年ほど前からサラリーマンをしつつ釣具メーカーのテスターをするようになった山田さんが挑むのはエギングだ。

エギングとは古来からイカ釣りで使われている“餌木”を進化させたルアーを使ってイカを狙う釣りで、北海道から沖縄まで、全国の海を舞台に活動している。

山田さんは48歳で勤めていた会社を辞めて釣り一本で勝負するようになった。我々素人の感覚だと勇気ある決断に思えるが、「365日釣りのことだけを考えられるようになったので、精神的に楽になりました。自由な時間が増えたからエギング以外の釣りを楽しむ余裕もできたしね」と笑う。

エブリイ▲山田さんがプロデュースしたエギ「ダイワ エメラルダスピーク」。天候や時間帯で使い分けてイカを誘う

完全なプロアングラーに転向したことで、釣りとの関わり方も大きく変わった。

例えばサラリーマン時代は週末しか釣りに時間を割けず、遠征では身軽な荷物で飛行機などを使っていた。しかし、会社を辞めてからは時間に縛られなくなり、車にたくさんの道具を積んで数週間にわたりポイントを移動しながら様々な釣りを楽しめるようになった。

釣りとの関わり方が変われば、当然のように車に求める性能も変わってくる。現在、最も大切にしていることは積載性。そして車のサイズと4WDであることにもこだわる。

エブリイ

「エギングでは岸から獲物を狙うやり方と、ボートから狙うやり方があります。僕は岸からがメインで、主な釣り場は磯になります。磯にアプローチする道は細くぬかるんでいることが多く、2WDの普通車だととてもじゃないが入っていけないのですよ。そうなると磯のかなり手前に車を止めて、そこからたくさんの荷物を抱えてポイントまで歩かなければなりません。これでは効率が悪くて釣りに支障が出てしまいます」

4WDの軽バンなら細い道でもちゅうちょなく進めるし、ぬかるみだって気にならない。リフトアップしてあれば底を擦る心配もほとんどない。山で釣りをするときも普通の車じゃ入っていけないような林道だってガンガン進んでいける。もちろん、軽バンなら積載性も折り紙付きだ。山田さんにとって無敵の存在だという。

エブリイ

先ほど会社員時代は飛行機で遠征に出かけていたと書いた。この時期は山田さんにとって釣りと車の関係は薄く、乗っていたのはスポーツモデルが多かった。

「元々車で走ることが好きなので、ホンダ シビックタイプRやアウディ TT RSなどに乗っていました。当時は車で通勤していたので、自宅と会社の往復の時間が楽しみでね。もちろん、釣りもその車に無理やり荷物を積んで行っていました。でも、釣り中心の生活にスイッチしてからは車選びの考え方も大きく変わりましたね」

スポンサーのロゴが貼られたクールカーキパールメタリックのエブリイは、フロントのアンダーガードやサイドステップ、マッドテレーンタイヤでアクティブな印象が高められている。前後のバンパーも変更され、アプローチアングルとデパーチャーアングルを高めている。軽自動車の黄色いナンバープレートはいい具合にグリーンのボディの差し色になっていると感じた。

このエブリイは山田さんのYouTubeチャンネルでも紹介されているため、釣りファンの間ではすっかりお馴染みの車になっていて、移動中に声をかけられることも少なくないそうだ。

エブリイ▲ベッドで上下に2分された荷室。収納スペースもしっかり確保されている

荷室を見せてもらうと、エギング以外の道具も含め、たくさんの荷物が整然と並ぶ。荷室を上下2段に分割しているベッドは高さ調整が可能になっている。

「僕はプラスラインというエブリイやエブリイのカスタムブランドのデモンストレーターを務めていて、実際に車をハードに使い、その意見をフィードバックすることで製品開発に役立ててもらっています。例えばフロアのボードも以前はもっと薄いものを使っていましたが、実際に荷物の出し入れをするとゆがんで荷物の出し入れがしにくくなることがわかったので、厚みのある製品を開発しました」

エブリイ▲山田さんがプロデュースしたフロアボード

長時間におよぶ釣行や長距離移動も多いため、車内泊用のカスタムも施している。

「車中泊をしながら釣りを楽しむ人なら荷室全面をベッドにした方が快適。でも、僕のように数週間単位で旅をする使い方だと助手席がリクライニングできることが重要だと感じたので、助手席後ろにはベッドがないタイプを使っています」

エブリイ▲助手席をリクライニングして休憩できるように、後席左側はベッドを設置していない

フェリーも活用すれば長距離移動も苦にならない

ベース車両にハイルーフ仕様を選んだのも大きなポイント。室内高があるので室内上部にロッドを並べても居住性が妨げられないという。

最新のエブリイはハイルーフ仕様のみになっているが、2021年8月までは標準ルーフ仕様もラインナップされていた。釣り重視の車選びをするなら、山田さんのこの意見も参考になるだろう。

エブリイ▲荷室長が長いのでロッドもたたまずにしまえる。これも軽バンならではのメリットだ

釣車としてのもうひとつのこだわり。それは乗用タイプのエブリイワゴンではなく、商用バンをベース車両にしていることだという。

「エブリイワゴンだと電動スライドドアなどの快適装備で車両重量が重くなり、これだけの荷物を積むとかなり燃費が悪くなってしまいます。釣りのことを考えたら車重が軽いバンの方がいい。しかも、これは新車で設定がなくなったターボ車なので、パワー的にも十分。僕のスタイルにはベストな選択ですね」

エブリイ▲外気温表示があるのも、屋外で戦う釣り人にとってはありがたい仕様だ

ただ、これだけの荷物を満載にした軽バンで長距離移動するのはそれなりに大変そうな気もする。そのあたりはどう考えているのだろうか。

「今は釣りに専念していて時間的な余裕もあるので、長距離移動の際はフェリーも活用しています。例えばあ鹿児島県までフェリーで車を運んで、そこから下道を使ってポイントまで移動したりするので、そこまでつらいと感じたことはありません。でも一度、このエブリイで鹿児島県から北海道まで、釣りをしながら1ヵ月くらいかけて旅をしました。移動はかなり大変でしたが、点々としながら釣りをして、その地域の美味しいものを食べる。会社員では絶対に経験ができない楽しい時間でした」

エブリイ▲ダイワからリリースされているタクティカルサイバッグも、山田さんのプロデュースだ

山田さんのスタイルと照らし合わせると非の打ちどころがないエブリイだが、あえてマイナスポイントを挙げるとしたらどんな部分なのか。それを尋ねると、山田さんは笑いながら弱点を教えてくれた。

「僕は走り好きだから軽バンでもMTで乗りたい。でも、この車は撮影でスタッフが運転することもあります。今はAT限定免許しか持っていない子も多いので、釣り用の車をMTにすることができず、AGS仕様にしています。そこが不満かな(笑)」

確かにMTを選べば移動の時間も、高回転まで引っ張りながら走りを楽しむことができそうだ。だが、撮影クルーなどとともに作品を作り上げていくうえで、そこは妥協せざるを得ないだろう。

いつか仕事のことを気にせず本当に自由に釣りを楽しめる時間が持てるようになったら、積載性から走りまで、山田さんにとっての完璧な車を選べるようになるはずだ。

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エブリイ
文/高橋満、編集部 写真/阿部昌也
高橋満(たかはしみつる)

自動車ライター

高橋満(BRIDGE MAN)

求人誌編集部、カーセンサー編集部を経てエディター/ライターとして1999年に独立。独立後は自動車の他、音楽、アウトドアなどをテーマに執筆。得意としているのは人物インタビュー。著名人から一般の方まで、心の中に深く潜り込んでその人自身も気づいていなかった本音を引き出すことを心がけている。愛車はフィアット500C by DIESEL