【海外試乗】新型 ポルシェ 911 S/T|ギアチェンジが楽しい! 軽量&パワフルな“ワインディング仕様”
カテゴリー: ポルシェの試乗レポート
2023/11/04
▲軽量化されたボディにハイパフォーマンスモデルの911 GT3 RSと同じエンジンを搭載した、911のデビュー60周年を記念した限定モデル。サーキットではなく公道での軽快な走りにフォーカスした仕立てとなっているドライビングプレジャーを追求した限定ピュアスポーツ
その生まれ年にちなんで1963台が限定生産されることになった911 S/T。ポルシェ911の60周年記念、つまりは祝還暦モデルである。
“911 ST”は初代911、ナローの時代にレース用ベースモデルとして生まれた911 Sのスペシャル版だった。ごく少数しか生産されず、正式にSTと名乗ったわけではないため、幻の911と呼ばれている。かの有名なナナサンカレラRSが登場する以前に活躍した。
その伝説を受け継ぐべく992型ベースで現代に蘇った911 S/Tは、ドライビングファンに徹した特別なモデルとして企画された。ニュルブルクリンクのラップタイムよりドライビングプレジャーをより追求したモデル。そのために最高のエンジンと可能な限りのダイエットを追求している。991型時代の911 Rと同じようなコンセプトだが、こちらはいっそう念入りだ。
エンジンはなんと911 GT3 RSと同じ525psの4L 水平対向6気筒自然吸気エンジンだ。これに軽量クラッチとシングルマスフライホイールをセットしたクロスレシオ6速MTを組み合わせた。そこにGT3ツーリングパッケージ仕様のボディをかぶせている。ナローのSTもまたリアスポイラーなどの派手な空力デバイスをもたなかったからだ。
現代に蘇ったSTではCFRP(カーボン繊維強化樹脂)を多用する。ボンネット、ルーフ、フロントフェンダー、ドア、ロールケージ(オプション)、リアスタビ、シアパネル(リアアクスルの補強エレメント)などをCFRPとした。結果、S/TはGT3ツーリングパッケージ仕様に比べて40kg軽い1380kgに収まった。もちろん992型世代では今のところ最も軽い。991型の911 Rが1370kgだったから、パワーウェイトレシオで上回ることになる。
▲エアロダイナミクスはサーキットではなく公道向けに最適化。展開式リアスポイラーなどを備える海辺のビーチハウスで濃紺のヘリテージパッケージを受け取った。窓枠のクロームやゴールドのロゴがクラシック。インテリアはブランレザーで、スポーツなのにシックという組み合わせがたまらない。
エンジンをかけ、重めのクラッチを踏み込んだ。大きなエンジンを積む車だからまずはアイドルミートでスタートさせようと軽い気持ちで左足を上げると、いきなりエンストした。フライホイールが軽いので少し回転を上げてつないだ方が良さそうだ。
海岸線から小さな村をぬけて山間部へと分け入る。ナビで広域をチェックすれば、山岳都市をつなぐワインディングをたっぷり走れそうだ。ただし、四駆のパンダばかり見かけることからして相当に狭い道が続きそうだ。
低中速域を多用する一般道での乗り心地が素晴らしい。アシがよく動き不快なショックをほとんど感じない。まもなく林道のように狭いワインディングロードに入った。サスペンションをスポーツにセットする。GT3のようなフラットでハードな乗り心地を予想したのに、ほとんど変わらないから拍子抜けした。少しハードになったか、と思うのみ。GT3のように硬い板の上に座っているような感覚は皆無だ。
ひとたび走り出してしまえば、重いペダルも軽いフライホイールもシフト操作を楽しむために必要な要素であったと納得する。シフトストロークがGT3用よりも10mm短く、自動ブリッピングも上手だから、マニュアルでのダウンシフトが2ペダルのようにスパスパ決まった。楽しい!
ギアチェンジが楽しいとは言うものの、狭い峠道ではほとんど2速(120km/hくらいまで)で事足りてしまう。5000回転あたりからフラット6の咆哮がコックピットを満たし、ドライバーのやる気をがぜんわき起こす。2速6000~7000回転あたりをキープしていても、エンジンはまるで苦にするそぶりすら見せない。時折8000回転まで回しても平気だ。一方で1000回転ちょいでも粘り強く反応する。フレキシブルなエンジンだ。
▲メーターなどにはポルシェカラーのグリーンがアクセントとして用いられる
▲ミッションは6速MTのみを採用。ハイパフォーマンスモデルのGT3よりクロスレシオな設定我を忘れ、夢中になってワインディングロードを攻め続けた。最も楽しいと思えたのはヘアピンのようなタイトベントを連続してクリアするような瞬間だ。付いていないはずの後輪操舵が利いているのかと思うほどノーズはぐいぐいと内を向いてくれる。出口で右足を踏み込めば後輪がなんの不安もなく強大な力で路面を蹴り飛ばす。前輪も後輪も自分の思いのまま。そんな911をマニュアルギアボックスで楽しめて面白くないわけがない。
ダカールやGT3 RSに比べて新車価格でちょうど+1000万円。その真の価値はこの911 S/Tを思う存分、走らせた者にしか理解できないかもしれない。
▲ボンネットなどにCFRPを採用するだけでなく、軽量ガラスの採用や断熱材の削減なども行われている
▲エンジンフードには60周年を記念したバッジとエンブレムが備わる
▲フルバケットシートを標準装備。布製シートセンターはクラシックコニャックにブラックのピンストライプをあしらった伝統のデザインが用いられた
▲軽量化のため後席は省かれており、オプションでロールケージを装着できる
▲ボディサイドにスターティングナンバーも取り付けられる、ヘリテージデザインパッケージをオプションとして用意
自動車評論家
西川淳
大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。
ポルシェ 911(992型)の中古車市場は?

1963年の初代登場から60年を迎えた、ポルシェを代表するRRのスポーツカー。近年は走行性能だけでなく快適性も向上しており、ボディサイズの拡大と相まってGTカーとしての優れた資質を見せる。8世代目となる現行の992型は2019年に登場している。ベーシックモデルからレーシングモデルまでバリエーションは豊富だ。
2023年10月後半時点で、中古車市場には170台程度が流通。価格帯は1500万~5000万円となっている。発売から4年ほど経っているが、どのグレードも新車時とそれほど変わらない価格を維持。高い人気に加え、昨今の半導体不足による新車供給の遅れの影響も相まって高値安定という状況が続いている。
▼検索条件
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