▲フタケタ万円の輸入車というと、年式的に古かったり走行距離がぶっ飛んでいたりする場合が多いものですが、この車に関しては、走行距離2万km台までの好条件物件も余裕で100万円以下なのです! ▲フタケタ万円の輸入車というと、年式的に古かったり走行距離がぶっ飛んでいたりする場合が多いものですが、この車に関しては、走行距離2万km台までの好条件物件も余裕で100万円以下なのです!

「予算ないから地味な国産車にするか」と決めるのはまだ早い

「予算はおおむね100万円以下。それでいてなるべく走行距離が伸びてない、極力いい感じなコンディションの中古車が欲しい」という条件でユーズドカーを探すと、選べるのはどうしたって国産の実用小型車になる。わざわざ車名を挙げて恐縮だが、例えばトヨタ ヴィッツとか、ホンダ フィットとか。

それが悪いわけでは決してないが、中には「なんかこう盛り上がらねえよなぁ……」とお感じになる方もいるだろう。どうせ乗るならもうちょっと華のある何かに乗りたい、と。

しかしそういった「華のある車」、一般的にはこじゃれた輸入車というのは高額であるのが普通だ。「おおむね100万円以下」の予算でもこじゃれた輸入車を探せないことはないが、その予算で買える輸入車は「年式的に古い」「走行距離が多すぎる」「輸入車なのに存在が地味」といった欠点のいずれかを抱えているか、もしくはその三重苦すべてを背負っている場合もある。

となれば、「ま、しゃあないから国産の地味な小型車でも探すか……」とかつぶやきながら、ポチポチとカーセンサーnetなどで絞り込み検索を開始するのが一般的な姿だろう。

しかし、あきらめるのはまだ早い。ぜんぜん早い。なぜならば、世の中には「予算はおおむね100万円以下。それでいてなるべく走行距離が伸びてない、極力いい感じなコンディション」の、ちょっとこじゃれた輸入車というのも実は存在しているからだ。

その車は、初代BMW 1シリーズである。

▲04年9月から11年9月まで販売されたBMWのエントリーモデル、初代BMW 1シリーズ。後輪を駆動するいわゆるFRレイアウトで、前後重量配分もいかにもBMWらしいほぼ50:50になっている ▲04年9月から11年9月まで販売されたBMWのエントリーモデル、初代BMW 1シリーズ。後輪を駆動するいわゆるFRレイアウトで、前後重量配分もいかにもBMWらしいほぼ50:50になっている
▲本国では途中から3ドアモデルも追加されたが、日本仕様はすべて5ドア ▲本国では途中から3ドアモデルも追加されたが、日本仕様はすべて5ドア

このクラスとしては希有な「FRレイアウト」を採用

BMW 1シリーズというのは、ドイツのBMW AGが製造販売しているラインナップの中では最もコンパクトなシリーズ(※電気自動車のBMW i3についてはちょっと無視して話を進めます)。現在は第2世代の型式名F20が新車として販売されているが、ここで挙げているのは11年9月まで販売された初代1シリーズ、型式名E87だ。

04年9月に登場した初代BMW 1シリーズは、当時の3シリーズ(BMWの超売れ筋中核モデル)のシャシーを利用して作られたプレミアム・コンパクトで、Cセグメント(フォルクスワーゲン ゴルフぐらいのサイズ感を持つ車)としては異例の「FRレイアウト」を採用したことで話題となったモデルだ。

……車に詳しくない人は「FRレイアウトを採用すると何で話題になるわけ? てかFRレイアウトって何よ?」とお感じかもしれないので、ごく簡単にご説明しよう。

FRレイアウトというのは、「フロントにエンジンを置き、後輪(リア)を駆動させる方式」を表す和製英語。この方式を採用すると、詳しい理屈は割愛するが車のハンドリングがとっても上質になるのだ。「じゃ、どんな車もFRにすればいいじゃん」と思うかもしれないが、ハッキリ言えばFR車を作るには結構なコストがかかる。だもんで、今世界で売られている車の大半は(特に小型車は)、割と低コストで作れるFFレイアウト(フロントにエンジンを置き、前輪=フロントを駆動させる方式)を採用している。

そんな状況下で初代BMW 1シリーズは「コンパクトカーなのにFR!」という、破格の大型新人として登場したわけだ。それが話題にならないはずがなく、そして悪い車であるはずがないことが、なんとなくおわかりいただけると思う。

搭載エンジンは1.6L/2Lの直列4気筒DOHCと、3Lの直列6気筒DOHC。それぞれのエンジンが、いかにもBMWらしくシュンシュンと高回転域までひたすらスムーズに吹け上がり、そして前述のFRレイアウト採用により(もちろんそれだけが理由ではないが)、ひたすらスポーティかつスウィートなハンドリングが堪能できるという、なかなか素晴らしい車だったのだ。

▲電気自動車のi3を除けば「BMW一家の末弟」というサイズ感の初代1シリーズだが、その小気味良い走りは間違いなくBMWそのもの。コンディションの良い中古車であれば、その魅力を存分に堪能できるはず ▲電気自動車のi3を除けば「BMW一家の末弟」というサイズ感の初代1シリーズだが、その小気味良い走りは間違いなくBMWそのもの。コンディションの良い中古車であれば、その魅力を存分に堪能できるはず

狙えるのは主に116iだが、値段を考えればコスパは十分以上!

で、そんなステキなプレミアム・コンパクトである初代BMW 1シリーズの低走行物件が今、車両価格100万円以下で余裕で探せるのだ。

具体的には「車両100万円以下で、なおかつ走行3万km以下(そして修復歴もなし)」という初代1シリーズは2月8日現在で55台が流通しており、その中でも中心は「07~09年式で車両価格60万~90万円ぐらい」という物件。ちなみにだが、この条件で狙える国産の低走行系中古車は、冒頭で申し上げたトヨタ ヴィッツとかホンダ フィットとか、あるいは三菱 eKワゴンあたり。……いずれも悪くないステキな車だが、それらと比べると、同予算で狙える初代BMW 1シリーズがいかに華がある存在かが、なんとなくおわかりいただけるかと思う。

ということで初代BMW 1シリーズは、ある種の人にとっては無敵の選択肢であるゆえ、ぜひぜひ前向きにご購入を検討されたい……とシメたいところだが、実際はそうもいかない。正直、ネガな部分もなくはないからである。

ネガな部分とは、「この条件で狙える初代1シリーズは主に最廉価グレードの116iになってしまう」ということだ。

▲直列4気筒は1.6Lと2Lがあり、そのほか強烈な3Lの直列6気筒もある初代1シリーズだが、「100万円以下で、なおかつ低走行で」という条件に当てはまるのは最廉価グレードである1.6Lの116iが中心 ▲直列4気筒は1.6Lと2Lがあり、その他に強烈な3Lの直列6気筒もある初代1シリーズだが、「100万円以下で、なおかつ低走行で」という条件に当てはまるのは最廉価グレードである1.6Lの116iが中心

116iというのは1.6Lエンジンを搭載する最も安価なグレードであり、その最高出力は115psでしかない(※10年5月からは改良により122ps)。で、ハッキリ言って速くはない。強烈な3L仕様を選ぶかどうかはさておき、できれば2Lの118iまたは120iを選んだ方が何かと満足はできるだろう。ちなみに100万円以下の低走行系初代1シリーズの主力は116iだが、2Lの118iと120iも少数ながら流通しているので、うまいことそれらと巡り会えた人は、そちらを選んだ方がベターな可能性は高いだろう。

しかしアレだ、このあたりは感覚の違いにより個人差がデカい部分なのだが、筆者としては「やや非力な116iのアクセルをガンガン踏んで活発に走るのも、それはそれでオツじゃないか」と思っている。そして遅いといっても、ストレスで死にたくなるほど遅いわけではぜんぜんないので、「いつ何時もひたすらぶっ飛ばしてないと気が済まない!」という人でさえなければ、116iでも割と普通に十分なはずなのだ。

ということで熟考のうえ、そして可能であれば試乗もして、ぜひ前向きにご検討ください。敬礼。

 

▲グレードやオプションにより細部に違いはあるが、初代BMW 1シリーズのインテリアはおおむねこのような感じ。同時期の3シリーズとほぼ同様のニュアンスの、機能美あふれる世界観だ ▲グレードやオプションにより細部に違いはあるが、初代BMW 1シリーズのインテリアはおおむねこのような感じ。同時期の3シリーズとほぼ同様のニュアンスの、機能美あふれる世界観だ
text/伊達軍曹
photo/BMW